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2010年12月04日19:49

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八大龍王伝説 【109 王城イーゲル・ファンタムにて(後)】


いつもお読みいただいています皆さま、ありがとうございます^^

ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國以外の第3の國としてミケルクスド國の話なので、また今回も新たに4人の人物が初登場します 

とりあえず、さらっと読んでいただくことをお勧めします^^

それでは、八大龍王伝説をはじめます


【109 王城イーゲル・ファンタムにて(後)】


〔本編〕
ヴェルト大陸の西の小国−ミケルクスド國の王城イーゲル・ファンタムの玉座の部屋での八人の者による軍議が続く

玉座に座っていたラムシェル王はおもむろにその玉座から立ち上がった

「ボールハイン!」

「はっ!」

ラムシェルの言葉に、ボールハインという男が答えた

「元ジュリス王国領で今動かし得る最大兵力はどのくらいだ?」

「はっ!昨年の戦いで我らの兵は壊滅に近い打撃を受けました 従って五千が精一杯です」

ボールハインはがっしりとした体つきをしており、右の頬に大きな傷を持ち、髪は亜麻色を短く刈り込んでいた

もともとは、今は滅びたジュリス王国の将軍で、バクラの戦いの時には自国の防衛にあたっていた

その後(バクラでのソルトルムンク聖王国側の大敗の後)、ミケルクスド國とバルナート帝國連合軍の攻撃を受け、去年の八月ジュリス王国は滅びた

ボールハインは最後まで抵抗したが、(先に捕らわれた)ジュリスの王を害さないとの約束で降伏した

今、ジュリスの王はジュリス王国領に一部の領土と一生困らないほどの財を施され、余生を楽しんでいた

ボールハインは、他の将軍、例えばバクラの戦いで破れたブスム、ゴスムの兄弟のように怪力の持ち主ではなかった

しかし智、勇、仁などといった全体的なバランスがとれた武将で、ジュリス国内でも非常に人気があった

ミケルクスド國のラムシェル王も、その人柄をよしとして、自分の陣営に加えたのである

この時、ボールハインは三十五歳の男盛りであった

「そうか五千か!」

ラムシェル王は少し思案顔になり、

「よし、銀騎兵(シルバーナイト)と天馬飛兵(ペガサスナイト)を二千ずつ四千用意しろ!心配するな ジュリスの守りはガイエルの兵からグリフォンナイトとソードマンを合わせて五千回す!その六千がジュリスの守りで、守備隊の長は、ボールハイン!お前にたのむぞ!」

「はっ!」

ボールハインが頭を下げると、ラムシェルは次にガイエルの方を向いて言った

「ガイエル!」

「はっ!」

「お前には本国(ミケルクスド國)の守りにあたってもらう 防衛の兵は一万、ジュリス王国領に回した五千の代わりにライヒターの兵を五千回す たのむぞガイエル!」

「はっ!」

ガイエルはそう返事したものの内心は苦々しかった

自分の精鋭五千をジュリス王国のボールハインに回され、仲の悪いライヒターの兵が五千人補充されたからである

「よし後顧の憂いのなくなったところで聖王国をどうするかだが…」

そう言いながらラムシェル王の策は大方決まっていた

「ところで、バルナート帝國のロードハルト帝王からの援軍は?」

「はい!お答えします」

ラムシェルの問いに、一人の少女が答えた

少女とはいえ、鎧を着込んだ女将軍である

名をフィーネと言う

「かの帝王は、聖王国との間に“たとえ他国内の争乱であってもお互いに援軍といった軍事的な援軍行動等は禁ずる”という条件を含んだ休戦条約を結んだため、公式には援軍は出せません

しかしそれでも非公式に海路を使って二千の兵を送るとのことです それも全て金騎兵(ゴールドナイト)、最終段階(トップランク)の騎兵です」

「さすがはロードハルト帝王、今回の勝利の鍵を握るのは騎兵ということをよくご存じだ! よしその二千は、フィーネ!お前の軍に組み入れろ」

「はっ」

フィーネが答える

フィーネは身長百五十五センチメートルで、赤い髪で瞳がブルーの少女であった

「続いてフィーナ!」

「はっ」

ラムシェル王の呼びかけに、フィーネと呼ばれた少女と瓜二つの少女が応えた

フィーナとフィーネは双子の姉妹である

やはりフィーナも百五十五センチメートルの身長に、赤毛であったが、瞳は茶色であった

この二人の父親が茶色の瞳、母親がブルーの瞳だったため、瞳の色の違う双子が生まれたのである

姿形がそっくりな二人を見分けるには、この瞳の色で見分けるのが唯一の方法であった

フィーナが姉でフィーネが妹である

「フィーナ!お前には、こちらにおわすアルグメント殿のセルマー城を攻めてもらう もちろんこれは聖王国軍を引き寄せるために擬態なのだが!」

ラムシェル王のこの言葉にフィーナは横にいた男に視線を向けた

男は、中肉中背の特にこれといった特徴もない男であった

「知らない者もいると思うので説明するが…」

ラムシェル王が続けた

「この方は我がミケルクスド國とソルトルムンク聖王国の国境付近に位置するセルマー地域を治める地方領主のアルグメント殿だ!アルグメント殿は今回の我が國遠征の総指揮をとるマクスール将軍の叔父にあたる

セルマーの領土は、今は我がミケルクスド國の領土となっている アルグメント殿には、今回の聖王国の遠征に当たり、我が方(ミケルクスド國)を裏切ってもらう

もちろん偽りの裏切りだが、それによりマクスール軍は、セルマー城を経由するため、デラクエ山脈を越えるルートをとるであろう そのルートを聖王国軍がとれば九分九厘、我らの勝ちである」

ラムシェル王はここで一呼吸おきハリマに尋ねた

「ハリマ!いよいよ囚人部隊(ゲファンゲネ・ゾルダート)を使う時が来た 準備の方は抜かりないか」

「はっ!既に準備期間の調整は終わりました これからは部隊の選定及び訓練を行う最終段階に入ります」

「よし!我らの勝ちは確定したぞ!我が建国神、徳叉迦(トクシャカ)龍王の怒りの鉄槌がソルトルムンク聖王国の頭上に落ちるのもそう先のことではない!」

このラムシェルの言葉に、この場にいる七人誰もが勝利を疑いはしなかった

この天才ともいえる王を有しているミケルクスド國 西の小国とこの國を侮ったソルトルムンク聖王国にとってそれは大いなる誤算であった



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王)

(人名)
アルグメント(セルマー地方の領主 マクスール将軍の叔父)

ガイエル(ラムシェル王の家臣)

ゴスム(ジュリス王国の将軍 ブスムの弟 バクラの戦いで死亡)

ハリマ(ラムシェル王の家臣 ラムシェルの右脳と呼ばれる人物)

フィーナ(ラムシェル王の家臣 フィーネの姉 瞳の色が茶色)

フィーネ(ラムシェル王の家臣 フィーナの妹 瞳の色がブルー)

ブスム(ジュリス王国の将軍 ゴスムの兄 バクラの戦いで死亡)

ボールハイン(ラムシェル王の家臣 元ジュリス王国の将軍)

マクスール(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)

ライヒター(ラムシェル王の家臣 ラムシェルの右腕と呼ばれる人物)

ラムシェル(ミケルクスド國の王 四賢帝の一人)

ロードハルト帝王(バルナート帝國の帝王 四賢帝の一人)

(国名)
ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

ミケルクスド國(西の小国 第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國 飛竜の産地)

ジュリス王国(北西の小国 第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國 馬(ホース)の産地 今は滅亡している)

(地名)
イーゲル・ファンタム(ミケルクスド國の首都であり王城)

セルマー地域・セルマー城(ソルトルムンク聖王国とミケルクスド國の国境付近の地域とその地域の城)

デラクエ山脈(ソルトルムンク聖王国の西方の山脈)

バクラ(ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の国境にある町)

(兵種名)
最終段階(兵の習熟度の称号の一つ 一番上のランク この称号を与える権限は國の王のみが持つ トップランクとも言う)

グリフォンナイト(第三段階の鷲獅子(グリフォン)に騎乗する飛兵 鷲獅子飛兵とも言う)

ゴールドナイト(最終段階のゴールドホースに騎乗する重装備の騎兵 金騎兵とも言う)

シルバーナイト(第三段階のシルバーホースに騎乗する重装備の騎兵 銀騎兵とも言う)

ソードマン(第三段階の技量に秀でた剣兵)

ペガサスナイト(第三段階の天馬(ペガサス)に騎乗する飛兵 天馬飛兵とも言う)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い) 帝國軍ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活

同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが戦い、ハクビが敗北する

同年一二月一〇日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の間で半年間の休戦条約が締結される

龍王暦一〇五一年一月一日 聖王国と帝國が休戦期間に入る(同年六月三〇日まで)

同年同月一〇日 ハクビがゴンク帝國に密かに向かう
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