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2010年09月19日09:56

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八大龍王伝説 【094 朱雀騎士団(二) 〜スキンムル城〜】


いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます

それでは早速、八大龍王伝説をはじめます


【094 朱雀騎士団(二) 〜スキンムル城〜】


〔本編〕
ソルトルムンク聖王国が復活して二日後、龍王暦一〇五〇年一一月一日の早朝、聖王国の王城マルシャース・グールの東門が重々しく開いた

その門のある東側の城壁はまだ修復途中であり、ところどころ壁がない

その壁に見送られながら北東に向かう軍勢があった

先頭の将は、白い鎧に身を固め、小型のドラゴン族であるドラゴネットにまたがっている

ハクビであった

今はソルトルムンク聖王国の三将軍の一人、人和将軍に就任し、兵種もシルバーナイト(第三段階の兵)からドラゴンナイト(最終段階の兵)へのクラスチェンジを果たしていた

彼の騎乗するドラゴネットは茶褐色の皮膚を持ち、鋭い眼差しはドラゴン特有の荒々しさを伺える

たとえ、小型といえどもドラゴン族の端くれ、何ものも恐れぬその眼光は並みの兵士なら、睨まれただけで戦意を喪失してしまうだろう

実際、ハクビの乗っているドラゴネットは、ソルトルムンク聖王国が現在所有しているドラゴネット五十匹のうちの最も勇猛なドラゴネットであり、ジュルリフォン聖王から直々に賜った竜である

そのハクビの後方を馬(ホース)に乗った二人の女性が続く

一人は白いローブを身に纏った色白の女性

もう一人は黒いローブを纏った褐色の肌を持った女性である

色白の女性は茶色の瞳を持ち、均整のとれた顔立ちをしていた

それに対し褐色の肌の女性は切れ長の瞳は緑色で、全体的に引き締まった印象を受ける美人であった

色白の女性がレナ、そして褐色の女性がシェーレである

二人ともマルシャース・グール王城の奪回戦には負傷して参加できなかったが、一〇月の二〇日頃には完治して無事王城に到着していた

この二人が現在の人和将軍ハクビの副官である

その三人の後を新生人和将軍の兵が付き従う

その数は五千人を数えた

王城を奪回して二十日あまり、バルナート帝國に従っていた旧ソルトルムンク聖王国の城主、地主等(ら)の諸侯は、再びジュルリフォン聖王の新生ソルトルムンク聖王国に大半が帰属してきた

それでもまだ各地に趨勢を見極めようとする諸侯なども、数多く存在している

その中で最も大きな勢力はバルナート帝國の白虎騎士団のライアスが居座る王城から南西の地域であった

この地域の聖王国への帰属率は三十パーセントを下回っている

そのため、王城内には一一月一日現在で一万五千の兵が存在していたが、王城に残す兵も考慮すると、朱雀騎士団ナンダに対抗する兵力は一将軍、五千人が限界であった

一一月三日、ハクビ率いる五千人は王城の東二百キロメートルの地点にあるスキンムル城に入城した

このスキンムル城の城主はミラーグスと言い、三月マルシャース・グール陥落の後、バルナート帝國から降伏するよう再三にわたり勧告を受けたが断固として拒み、今の今までソルトルムンク聖王国側を貫いた数少ない城主の一人である

ミラーグスは五十を越えたばかりの男だが、頭は毛が全くないはげ頭で、赤みを帯びた血色の良い丸顔をしている

背は百六十センチメートルに満たない小男だが、スキンムル城の周りの諸侯が皆、バルナート帝國に降伏する中、帝國の降伏に応じなかったのだから、見た目と違いかなり芯のしっかりした人物と思える

そして、ミラーグスはグラフ将軍とは幼馴染の間柄でもある

そのミラーグスはハクビ一行を温かく迎えた

「おう!ハクビ殿!グラフからはいろいろ聞かせてもらっているぞ!よくぞ来た」

ミラーグスは丸いはげ頭を振り振り、ハクビの手を握った

「私も、ミラーグス殿は信頼できる御仁とグラフ将軍より伺っております お会いできて光栄です」

ハクビもにこやかに手を握り返した

「ところで、ミラーグス殿!ゴンク帝國を屈服させた朱雀騎士団が、このスキンムル城に向かって進軍中と偵察にあたっている城の者から聞きましたが、今はどの辺りを進軍中なのでしょうか?」

「うむ!それなのだが!ゴンク帝國から王城マルシャース・グールまで直線距離で一千五百キロメートルあまり、一〇月三〇日にはゴンク帝國を出発して、今日で五日目、一千キロメートルの地点まで到達しているようだ

一日百キロメートルのペースで移動している 五千人率いているということであるから、かなりの強行軍だな

このスキンムル城がマルシャース・グールより東へ二百キロメートルの地点にあるから、八日後の一一月一一日にはここにたどり着くだろう

ところでハクビ殿!敵がマルシャース・グールを目指すにあたって、この城のある場所を必ずしも通過するとは限らないのではないですかな?」

「それは安心してください!既に間諜の者を使い、聖王国で最も強力な敵がスキンムル城に入城する予定であるという情報を流しました

ここに来るまでにナンダの性格を分析しましたところ、強力な敵に進んで挑むという性格のようです

この城に強力な敵がいると知れば必ずここを素通りはしないでしょう」

「おお!さすがハクビ殿!噂に違わぬ智勇兼備の将であるな!」

「ミラーグス殿の一貫してバルナート帝國に降らない信条も、ナンダが相手の場合は手強い敵ということでプラスに働くでしょう

このスキンムル城のルートをとれば、この城の五千人以上の兵を攻略しない限り、王城には進めません

時間がかかればかかるほど、遠征軍は食糧事情などで撤退せざるをえなくなります」

ハクビの構想はナンダの性格をよく考慮しており完璧であった

しかし、ハクビにはどうしても出せない答えが一つあった

それは朱雀騎士団の軍団長であるナンダそのものの攻略であった



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

レナ(マークの妹 ハクビ将軍の副官)

シェーレ(ハクビ将軍の副官)

ミラーグス(スキンムル城の城主)

グラフ(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)

ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の第四十九代聖王)

ライアス(バルナート帝國四神兵団の一つ白虎騎士団の軍団長)

ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

ゴンク帝國(南東の小国 第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國 ドラゴンの産地 『城塞帝國』の異名を持つ)

マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

スキンムル城(ソルトルムンク聖王国の東部地域の城)

シルバーナイト(第三段階のシルバーホースに騎乗する重装備の騎兵 銀騎兵とも言う)

ドラゴンナイト(最終段階の小型竜に騎乗する騎兵 竜騎兵とも言う)

ドラゴネット(十六竜の一種 人が神から乗用を許された竜 小型竜とも言う)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活
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