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2010年07月29日12:54

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八大龍王伝説 【084 血戦!マルシャース・グール(十四) 〜老将軍〜】


いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます

今回は、僕の好きなキャラクターの一人が退場します>< 題名から察しがつくと思いますが… 

それでは、八大龍王伝説をはじめます


【084 血戦!マルシャース・グール(十四) 〜老将軍〜】


〔本編〕
《もう何合合わせたのだろうか??》

バルナート帝國の白虎騎士団のライアスとソルトルムンク聖王国の人和将軍ムーズのお互いに感じた正直な感想であろう

聖王国軍の本隊に南方から接触した白虎騎士団のライアスが、人和将軍のムーズを見つけ、槍を合わせた

それから既に十分以上が経過していた

どちらも大陸中に名前が知れ渡っている勇者である

簡単に決着が着くとはお互いに考えてはいないが、ライアスはムーズの戦い方に一つの疑念をいだいた

ムーズの戦い方は守り一辺倒である

さっきから、ライアスの突きを自らの槍でかわしているだけで、全くライアスに対して攻めかからない

もちろん、ライアスは超一流の戦士である

一般の兵であれば、ライアスの全ての攻めを凌ぐことも難しいであろう

そこは百戦錬磨のムーズ将軍…守りに徹しきったときの防御力は半端ではない

大陸一の技量を誇るライアスをもってしても、攻めきることが出来ないのである

実はムーズ将軍は消極的な守りに徹しながら必殺の一撃に全てをかけていた

ムーズの槍は世界で一番硬いと謂われる金でできており、先端が螺旋(らせん)状の奇妙なつくりになっていた

この槍はソルトルムンク聖王国一の鍛冶屋であるハクルスによって鍛えられており、回転を加えて繰り出す一撃必殺にはどんな金属もまるで豆腐を貫くように簡単に貫いてしまうことができるのである

ただ、あまりに槍先が複雑でかつ繊細に作られているため、二度目以降の突きでは、血のりなどの不純物が刃先に混じることにより、本来の力を発揮することができない

まさに、一撃必殺のためにできたような槍であった

ムーズ将軍はその一撃のチャンスを待っていた

むろんライアス軍団長を相手に無傷で勝利できるとは、ムーズ将軍も考えてはいない

それこそ「肉を切らせて骨を断つ」といった捨身の戦法になるだろう

一方、ライアスはというと当然、ヴォウガーの援軍で来たのであるから、早々にヴォウガーの軍と合流したい

ここで、ムーズと一騎打ちで時間をつぶしている暇など本来ないのである

しかし、ムーズをこのままほうっておけば、今、陣形がかなり乱れている敵軍を整えさせてしまうし、味方の士気にも大いに影響する

ライアスはそこまで考えて、百余り繰り出した攻めを突然、止めた

「どうしたぁ〜 ライアス殿!天下に名を轟(とどろ)かしているお主がもう疲れたのではあるまい!」

ムーズがライアスを挑発する

「いやいや!私の名前など最近有名になってきた流行(はやり)のようなもの 老将軍の名こそ私が生まれるずっと昔から大陸中に鳴り響いております しかし…」

ライアスが続ける

「ここでその老将軍の伝説に終止符をうたせてもらいます そして、我が名をその老将軍を討った人物として、生涯知れ渡ることをお許しいただきたい」

ライアスはそう言うと一撃必殺の突きの構えをとった

「老将軍は、私の心臓(ヘルツ)をご所望(しょもう)のようだ!一撃必殺の突き!!どちらが速いか?後の語り草にしましょうぞ」

「おう!!」

ムーズ将軍もそれに応じた

むしろムーズ将軍が望んだ形になったのである

このまま、ライアスと打ち合いをしていても、技量、力、スタミナどれをとっても劣るムーズとしては、勝ち目はなかった

ここは相手が焦れてくるような戦法をとり、こちらの土俵に引っ張りこむことが重要であった

まさに老将軍の経験ゆえの見事な戦術であるといえる

老将軍ムーズは正にこの一撃にかけていた

自分の命すらも賭して…

「あああっ〜!!!」

「いやぁぁぁ〜!!!」

二人は気合と共に、お互いの左胸目がけて一撃を放つ

ムーズ将軍の槍は将軍の右手の中で鋭い回転が加えられる

ライアスの白い槍はやはり彼の手から一直線に突き放たれる

明らかに回転を加えた分、ムーズ将軍の一撃の方が遅い

ライアスの槍がムーズの左胸の鎧を砕く

その時、ムーズはむしろそのまま馬(ホース)を前に踏み込ませて、自分の槍を繰り出した

生涯最高の突きであった

「勝った!!!」

ムーズ将軍はそう呟(つぶや)いた

ムーズの槍は回転しながら、金でできた白いライアスの鎧を抉(えぐ)った

本当に豆腐に突き立てたように何の抵抗もなく、ライアスの左胸の心臓を貫いた…と誰もが疑わなかった

しかしムーズの槍はライアスの左胸の何かに当たり動きが止まった

そしてその槍の穂先は繊細なガラス細工のように粉々に飛び散った

ライアスの鎧は左胸からの亀裂で砕け、砕けた鎧の内側に胸当て(ヘルツリュストゥング)が現れた

その胸当ては狼の横顔のような形をしていた

ライアスは少し自嘲気味に呟いた

「この帝王から賜った『狼の胸当て(ヴォルフリュストゥング)』が、私を救ってくれた この神々の防具がなければ、敗れていたのはこの私かもしれない」

狼の胸当て−ヴォルフリュストゥングは神々の世界でのみ採掘されるという、金よりもはるかに硬度が高いバサラという金属で出来ている

このバサラの胸当てがなければ、ムーズ将軍の槍はライアスの心臓(ヘルツ)を確実に貫いていただろう

ムーズ将軍はと見ると左胸をライアスの槍に貫かれて、こと切れている

おそらくは即死であろう

ゆっくりと崩れていく老将軍の顔は勝利の笑みが刻まれていた

ソルトルムンク聖王国のため、百以上の戦(いくさ)を経験し、齢(よわい)七十を超えてまで第一戦で戦った偉大なる老将軍

ライアスは部下に命じた

「この老将軍の遺体は粗末に扱ってはならない 最高級の金の巨竜(ゴールドバハムート)の皮で包(くる)み、丁重に祀(まつ)れ!」

これがこの時代の亡くなった敵将に対する最大級の礼儀作法であった

時刻は午後一時二十分頃であった



〔参考一 用語集〕
ムーズ(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

ライアス(バルナート帝國四神兵団の一つ白虎騎士団の軍団長)

ハクルス(ソルトルムンク聖王国一の鍛冶屋)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

マルシャース・グール(元ソルトルムンク聖王国の首都であり王城 今はバルナート帝國が占領している)

狼の胸当て(神々の手によって作られた伝説の防具の一つ 「ヴォルフリュストゥング」と呼ばれている)

バサラ(神々の世界でのみ採掘できるという金属 この時代の金よりさらに硬度が高い)

バハムート(十六竜の一種 陸上で最も大きい竜 巨竜と呼ばれている また、単純に竜と言った場合、バハムートをさす場合もある)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 マルシャース・グール周辺拡大地図〕
フォト



〔参考四 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年同月一四日 帝國軍のマルドス城がハクビの策により陥落 帝國軍撤退

同年同月一八日 ハクビが帝國軍ケムローンをカムイ湖の戦いにて倒す 帝國軍カムイ湖より撤退

同年一〇月五日 聖王国ジュルリフォン聖王子、グール平原南にて、グラフ将軍等と合流 五千人の兵を前に演説を行う(グール平原での演説)

同年同月一〇日 聖王国軍がマルシャース・グール奪回に向けて進撃開始

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