(※これは、二〇一〇年八月一三日改訂バージョンです)
八大龍王伝説
【004 村長語る】
〔本編〕
ソルトルムンク聖王国では、バルナート帝國との戦いに向けて各地域で兵の徴集が行われた
もちろんホルム一家の住んでいるコムクリ村でも兵の徴集は行われた
コムクリ村の村長が村民を集め語った
「今回の戦いは我が国王であったコリムーニ老聖王の復讐戦である これから対象となる者を発表するので出兵の準備をしてもらいたい
三日後には王城に向かって出発する 第一段階(ファーストランク)の兵のうち三十歳以上六十歳未満の男女、そして第二段階(セカンドランク)以上の兵のうち二十歳以上七十歳未満の男女がその対象である
十五歳未満の子供がいる場合は、両親のどちらかを徴兵から外して構わない」
猟師ホルムとその妻スリサは四十代半ばの第二段階の兵なので対象となり戦地へ赴くことになった
その村長からの話があった夜、ホルムが言った
「父さんと母さんはこれから戦いに赴く…が心配することは何もない 我が國が圧倒的に有利だ
一月(ひとつき)と立たずに戦(いくさ)は終わるだろう そんなに長い別れではない マーク!その間留守を頼むぞ」
「はい!父さん 無事に帰ってきてください」
マークが答えた
この時、マークは二十六歳、レナは二十二歳であった
しかし二人とも第一段階(ファーストランク)の兵であったため、今回は対象からは除外された
ハクビもホルムの遠い親戚で二十四歳の第一段階(ファーストランク)として村長に紹介していたので同じく対象から除外された
龍王暦一〇五〇年二月二六日、猟師ホルムと妻スリサが、他のコムクリ村民と一緒に出征していった
出征に先立ち、コムクリ村の村長が語った
「この戦いは三日前にも言ったがコリムーニ老聖王の復讐戦である 憎き敵国であるバルナート帝國は老聖王の平和への思いにつけ込み、あろうことか謀殺に至った
このような鬼畜の所業、何人(なんびと)たりとも許されざる行為である この戦いは我が國の正義を示す聖戦である
我がソルトルムンク聖王国の兵力は、敵国であるバルナート帝國の三倍である 国力に関して言えば、バルナート帝國は我が聖王国の十分の一に満たない
加えて聖王国、バルナート帝國以外のヴェルト大陸の六つの國々はコリムーニ老聖王の敵討ちという大儀に賛同し、必ずや我が國に味方する 正義は我がソルトルムンク聖王国にある 優鉢羅龍王のご加護の上に…」
誰もが楽観視していた
しかし、これがホルム一家五人を始め、多くの人々の運命を大きく変えることとなるとは、この時点では誰にも分かるはずはなかった
〔参考一 用語集〕
優鉢羅龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王)
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年)
ホルム一家(コムクリ村の住人 父のホルム、母のスリサ、息子のマーク、娘のレナの四人)
コリムーニ老聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王 故人)
ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
バルナート帝國(北の大国であり強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國)
コムクリ村(ソルトルムンク聖王国の南西部にある小さな村)
〔参考二 大陸全図〕
〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される
龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される
龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上、コリムーニ老聖王急死 死因は不明
龍王暦一〇五〇年二月一八日 ソルトルムンク聖王国、バルナート帝國に対して宣戦布告
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