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2015年09月22日07:03

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『 ジュラシック・ワールド 』


張先の大阪で公開初日レイトショーで観た『 ジュラシック・ワールド 』だが、どうにも納得ができなかった。あまりの消化不良に、帰ってから『 ジュラシック・パーク 』を観て大満足。『 ・・・・ワールド 』の何がどういけないのか、第一作を観たおかげでストンと腑に落ちたよ。単に恐竜を登場させたいだけの動物パニック映画、それも脚本にかなり無理のある凡作になっているからなんだな。何より肝心要の「 恐竜愛 」が致命的に欠如している。

 友人たちは「 まぁ、エンターテインメント(娯楽映画)だから仕方ないよ 」「 恐竜を見せたいだけの、ご都合主義の脚本だから、それをわかった上で楽しまないと・・・」などとオトナの対応だが、どんな映画であれ物語はきちんと整合性がとれていなければならないとする私にとっては実に許しがたい一本である。この先、ご覧になられていない方はご遠慮願いたい。






















(1)何もかもが、いい加減で中途半端
 主要登場人物の少年兄弟のうち、弟の方は自室に恐竜のフィギュアを飾っていて一見「 恐竜オタク 」のようだが、その知識、恐竜愛はなんとも中途半端。彼が恐竜の知識を発揮するシーンはごくわずかだが、クライマックスに「 新種の恐竜の歯の数が違う 」という指摘があまりに唐突で、なぜそれが事件解決に向かう重要なヒントになるのかどうしても理解できない。しかも、彼らの両親が離婚調停中という設定にどんな意味があるのか全く不明。こういういい加減な恐竜愛、いい加減な設定、いい加減な状況説明が全編に観られるのが『 ジュラシック・ワールド 』の根本的な欠点だ。

(2)ラプターとの信頼関係が疑問
 主要登場人物の一人、元軍人で現在は施設の安全管理アドバイザー兼ラプターの飼育を担当している男がなぜ安全管理アドバイザーに抜擢されたのか明快な説明がない上に、彼がどうしてラプターの調教訓練に長けているのか全くわからない。「 元軍人 」という経歴で何もかも納得させようというのは無理がある。ここで私が最も問題視するのは、映画序盤、逃げた豚を捕獲しようとして誤ってラプターの檻に落下した飼育係を彼が救助するシークエンスだ。彼の機転によって飼育係は無事に助け出されるが、一歩間違えば二人ともラプターに食い殺される「 危険な状態 」であった。そんなラプター達とどうやって新種の恐竜を退治しに出かけられるというのか、全く納得できない。疾走するラプターの群れに混じってバイクで走り出したら、一瞬で襲われるだろう。ラプターと彼の信頼関係を描くなら、飼育係転落シークエンスはカットすべきだった。
 
(3)恐竜達の行動にリアリティを感じない
 新種の恐竜があまりに知性的で、恐竜本来の恐さがない。いくらなんだってDNAの操作であれだけ賢い恐竜が生まれるとは思えないよ。壁に爪あとを残して逃亡したと見せかけたり、身体に埋め込まれたGPSを自らえぐり出して捜索隊をおびき出すなど、まるで人間の囚人が脱獄したようだ。GPSが何なのかを理解していたのか、それとも人間に埋め込まれた機器に違和感があったのかわからないが、全くシラける展開だった。もし、この流れを観客に納得させたいなら、新種の恐竜の生態についてもっと時間をかけて描写すべきだろう。
 さらに納得できないのは、猟犬のように新種の恐竜を追い詰めたラプター達が「 同じDNAをもつ 」という理由で、一転、新種の恐竜側に寝返ってPMC達を襲ったことだ。それだけなら良かったが、クライマックスで新種の恐竜に食われかけた主人公達を救うためにラプターが恐竜に立ち向かったのは驚いた。友人たちはこのシーンを「 感動のシーン 」を絶賛するが、敵になったり味方になったりするラプターの行動は支離滅裂にしか映らない。味方だと信じていたラプターに皆殺しにされたPMC達が浮かばれないよ。

(4)ワールド観客の安全保護を放棄して見殺しにした主人公達
 この映画で最も許せないのが、ここだ。主人公の一人はワールド運営会社の重役の女性で、もう一人は施設の安全管理アドバイザーだが、彼らは行方不明となった女性の甥っ子達(少年兄弟)の捜索と保護を優先し、本来の業務である「 ワールドに来場した観客達の安全を守る 」という使命を放棄してしまった。いや、自分達にその責務があるということさえ考えず、当然のごとく甥っ子の捜索と保護に奔走した。その結果、恐竜が逃げ出したことを知らされていない観客達には避難指示どころか、屋内に退避させる配慮もなく、突然、上空からの襲撃を受けてしまう。主人公二人が本来の業務を全うしていさえすれば、観客達の犠牲は皆無だったか、最低限に防げたはずだ。ジュラシック・ワールドで過ごす休日を楽しみにしていたであろう家族連れが次々に恐竜に襲われる惨状を見て、私は悔し涙がこぼれたよ。こんな無責任な主人公達の行動を「 知恵と勇気に満ち溢れた大冒険 」だとは到底思えないし、クライマックスにはまるで達成感や安堵感がない。ひたすら、彼らの非を責めたくなるばかりだ。

(5)メッセージ性は皆無
 第一作目『 ジュラシック・パーク 』と『 ジュラシック・ワールド 』を比較して最も際立った違いを見せるのが、この点だろう。観客を驚かせ、怖がらせるだけの「 単なる動物パニック映画 」になってしまっている。作品のスケール感とは別に、重みや深みに欠けるのは何もメッセージがないからだ。
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