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2013年09月01日07:42

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『 チェイサー 』


ょんなことから、韓国映画『 チェイサー 』(2007年)をレンタルDVDで観た。以前ほど韓国映画に対する抵抗感がないのは、チョン・ジヒョン(『 僕の彼女を紹介します 』)とウォンビン(『 アジョシ 』)のおかげだろう。

 『 チェイサー 』は、実際に起きた柳永哲連続殺人事件(2004年)をモチーフに映画化したものだという。多少の改変や脚色はあっても、事件の大筋はだいたい合っているのだそうだ。『 殺人の追憶 』も同様に実際の事件を題材にしているのだが、かの国ではこういう連続猟奇殺人事件が多いということに驚かざるをえない(ちなみに、『 殺人の追憶 』が描いた華城連続強姦殺人事件は迷宮入りしている)。

 物語はひどく単純だ。元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営するデリヘルで、派遣した女の子が何人も戻ってこない。てっきり何者かに拉致され、どこかへ売り飛ばされたに違いないと踏んだジュンホは怒り心頭で彼女達から手付金を取り戻そうと行方を追いはじめる。ある日、体調不良で仕事を休んでいた、子持ちのデリヘル嬢ミジン(ソ・ヨンヒ)を電話で叱りつけ、客の元に派遣したが、客の使った携帯電話が行方不明になったデリヘル嬢を派遣した先と同じ番号であったことに気づく。ジュンホはミジンの携帯に電話をし、客に気づかれないよう、家の住所をメールで知らせるよう指示したのだが・・・。

 この先、ネタバレを含むので未見の方はご遠慮願いたい。




















 映画『 チェイサー 』の特徴は、骨太な物語でありながら、ひどく粗削りだという点に尽きる。「 殺したい 」という欲望を満たすためにデリヘルに電話をかけ、女の子を派遣させる犯人と、派遣したデリヘル嬢ミジンを「 救出したい 」という経営者ジュンホの執念の追跡をひたすら描くのみだ。犯人の生い立ちを描いて、もっともらしい動機を説明することもなければ、「 心の闇 」に踏み込んで犯人も被害者だったのだとつまらぬ蛇足を加えることもない。作りこめばドラマは厚みを増すが、同時に作り物臭くなるデメリットからは逃れられない。それを意図したのか、それとも脚本の粗さゆえか知る術もないが、何の説明もせず、一切掘り下げず、ただただ、犯人と追跡者(チェイサー)たるジュンホの姿を描いたところに、生々しいリアリティが生まれた。

 最初は、単に女達に払った手付金を取り返そうという目的だったジュンホが、自分のせいでミジンを危険な男の元に送り込んでしまったことに気づき、奔走する様には心打たれる。彼の追跡は、なんともおぞましく苦い結末を迎えるが、それでも全く救いようのない悲劇に終わらなかったのは、ジュンホが遺された幼いミジンの娘と人間らしい生活を取り戻す「 予兆 」を感じさせるからだろう。

 それにしても、警察の無能と怠慢には恐れ入る。デリヘル嬢が失踪しても、店側はもちろん、家族や仲間達の誰一人「 事件に巻き込まれたのではないか 」と警察に通報することのない土壌が連続殺人犯の犯行を助長しているのは確実だが、肝心の警察が縄張り意識と手柄争い、はては根拠のない思い込みと偏見で捜査を迷走させるのだから、これは悪循環なのかも知れない。だからこそ、頼りにならない警察をよそに、元刑事のジュンホが犯人に肉薄していく姿に共感を覚えるのだ。ちなみに、実際の柳永哲連続殺人事件でも犯人逮捕のきっかけとなったのは風俗店の経営者だったということである。
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