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2013年01月31日09:54

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『 THE GREY 凍える太陽 』

 年秋、映画『 THE GREY 凍える太陽 』を観た。私の好きな俳優の一人、リーアム・ニーソンが主演するサバイバルアクションと知って以来、ずっと楽しみにしていたのだが、『 週刊文春 』の映画評で品田雄吉に「 無残なネタバレ 」をされた因縁の作品である。

 主人公オットウェイ(リーアム・ニーソン)はアラスカの石油採掘企業に雇われたプロのハンターだ。油田で働く従業員達が狼に襲われないよう、油田周辺に近づく狼を駆除するのが彼の仕事である。来る日も来る日も一人雪原に向かい、狼の痕跡を追跡し、見つけ出しては確実に仕留めて行く。経験豊富で、確かな技術をもつ彼は狼専門のハンターとして誰からも信頼されていたが、孤独だった。最愛の妻と別れて以来、生きる希望を失い、自暴自棄になっていた。ある晩、休暇に向かう途中の旅客機が事故で墜落。わずかな生存者と共に酷寒の大雪原にオットウェイは投げ出される。そこは人間界を遠く離れた氷点下マイナス20℃のアラスカ。しかも飢えた狼の群れが支配する、絶対絶命の世界だった。はたして、彼らは生還できるのだろうか・・・。


 妻との別れに堪えられず、油田では自殺未遂直前まで精神的に追い込まれていたオットウェイだったが、共に遭難した仲間達を救うために知識と経験を生かして立ち上がって行く過程が素晴らしい。生きがいを失い、自分の帰りを待つ者のいない彼が、他の生存者を「 生きて家族のもとに帰してやりたい 」という一心から見事なサバイバル技術を駆使し、脱出をリードする。この映画の正に見所と言って良いだろう。そして、いつしかオットウェイは厳しい戦いの中で自分自身を取り戻していくのだったが・・・。

 この先、重大なネタバレを含むので未見の方はご遠慮願いたい。









 
 

 
 氷点下マイナス20℃の酷寒の大雪原で、獰猛な狼の群れと戦いながらの脱出劇という素晴らしいシチュエーション。しかも、主演リーアム・ニーソンはいつもの大熱演なのだから、面白くならないはずがないのだが、残念ながら、映画『 THE GREY 凍える太陽 』にはいくつかの欠点がある。

 ひとつには、精神的哲学的なエッセンスを盛り込み過ぎたことだろう。オットウェイのモノローグ(独白)が随所に登場するので物語が少々複雑になると同時に、脱出劇の緊張がその都度断ち切られるように思えてならなかった。妻との別れ、少年時代の父との思い出がオットウェイに与えた精神的な影響と再生の秘密をうまく生かせなかったのは惜しい。

 もうひとつは、肝心の狼の描写にリアリティがないことだ。巨大で獰猛で人を恐れず、積極的に人を襲うなど野生の狼の生態とかけ離れた過剰な描写は「 飢えた狼というより、もはやモンスター 」にしか見えない。狼の描写にリアリティがあれば、この映画はずっと面白いものになっただろう。

 そして最後は、主人公オットウェイが「 狼専門のハンター 」として看過できないミスを犯していることだ。彼は遭難直後から狼の気配に気づき、再三、群れが襲撃してくる原因を「 狼のテリトリーのど真ん中に事故機が墜落したから 」と正確に分析していたのだが、どちらの方角に向かえば脱出できるか、という肝心な点については直感に従ってしまった。また、ひたすら逃げるばかりで、途中から有効な撃退手段を模索しなくなってしまったのも、不思議だ。逃げずに、森林地帯で直接対決に持っていけば違った結果になった可能性も考えられる。このあたりの脚本の甘さは、テーマが良かっただけに本当にもったいないと思う。
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