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2011年08月20日17:29

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『 豆富小僧 』

 場で見逃した『 豆富小僧 』を、娘たちと磯子公会堂で観た。夏休み特別企画なので、大人も子どもも一律入場料900円である。劇場予告編で、二等身キャラの可愛らしいデザインと、吹替えの深田恭子の声が素晴らしくマッチしているのを観た時、「 これは楽しいアニメになったな〜!!! 」と大いに注目していた。実は、手塚治虫の漫画に『 雨ふり小僧 』という短編の傑作がある。私は『 雨ふり小僧 』が大好きで、手塚漫画のベスト10を選ぶなら必ず上位に入る作品だ。タイトルが共に小僧であることから、勝手に期待を膨らませていたが、劇場で観る機会を逸したままになっていたものである。

 『 豆富小僧 』は3Dと2Dがあり、シネコンでパートをしている長女の評価では、「 3D作品では『 豆富小僧 』が一番飛び出して観えた 」とのこと。残念ながら、磯子公会堂では設備の関係上、2Dでの上映だったが、2Dにも関わらず、立体感が見事に描写されていて驚いた。これは3Dで観たら、さぞかし面白かったろうと思う。


 物語に関しては、それなりに楽しめたが、手塚の『 雨ふり小僧 』には遠く及ばないものだった。京極夏彦の原作は未読なのでわからないが、この内容ならキャラだけ借りて、全く別の物語を作るべきだったのではないかと思う。子ども向けなのか大人向けなのか中途半端で、おそらく、どちらにとっても今ひとつ面白くなかったに違いない。妖怪を現代の日本に登場させ、スカイツリーや気候温暖化を展開に織り込むなど目新しいところを狙い過ぎた結果、単なるドタバタになっているのが惜しい。大きな事件ではなく、もう少し腰をすえて、人々と豆冨小僧の日常を描く方がテーマにはマッチしていただろう。それでも、クライマックスで目頭を熱くさせられてしまったのは、一にも二にも豆富小僧のキャラの力だ。深田恭子の吹替えは本当に巧い。

 余談。

 手塚治虫の『 雨ふり小僧 』にご興味をもたれたら、漫画版を読まれることをお薦めする。非常に素朴で温かく、移り行く時代に取り残される妖怪達の悲哀を子どもの目、子どもの心を通して見事に描き切っている。さすが、天才・手塚治虫である。私など読むたびに泣けるほどだ。『 豆富小僧 』が欠いているのは、実はそうした要素なのだ。ちなみに、『 雨ふり小僧 』にはアニメ版も存在するが、こちらの方はどういうわけか、原作漫画の解釈を間違った脚色で制作し、「 よく似た別の作品 」に仕上がっているので、私は感心しない。



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