好きな映画、ドラマがリメイクされると聞けば、たいていのファンは喜ぶよりも不安に思うことだろう。オリジナルを超えるなど夢のまた夢。比肩することもままならず、ほぼ間違いなく期待を裏切られる。凡庸なリメイクなら、まだ許せるが、織田版『 椿三十郎 』のように陳腐なのは、オリジナル作品を冒涜する愚挙でしかない。
江口洋介主演で『 木枯し紋次郎 』がリメイクされると知り、少々、心穏やかではいられない。私は中村敦夫版を放映当時、リアルタイムで観ており、少年だったこともあって、大いに傾倒した。古びた三度笠と雨合羽、リアルな殺陣、何よりクールな中に人間的な温かさを秘めた紋次郎が格好良かった。なにしろ、級友のほとんどが紋次郎の喋り方を真似ていた時代だ。私は長い楊枝を自作して、自宅では楊枝をくわえて過ごし、納得できるまで楊枝を飛ばす練習もした。学校の行き帰りには、やや前傾姿勢で紋次郎の歩き方を真似て、足の甲を痛めてしまった。あの歩き方はバスケットシューズやテニスシューズなど、甲を紐で締める靴では無理がかかるのだと悟った。『コンバット！』を別にすれば、私が最も影響を受けたTVドラマが『木枯し紋次郎』なのである。
江口洋介は良い役者だと思うし、好きな俳優の一人でもある。しかし、彼が紋次郎を演じるのは少々無理がある。硬派で陰のある中村敦夫に比べると、江口はソフトで明るい。しかも彼は台詞回しで口元や目が頻繁に動く癖があるからだ。目の動きは心の動きを表現してしまい、クールな紋次郎には似合わない。これでは最初から不利だろう。中村敦夫がそうであったように、無名な役者を抜擢するべきだと思う。放映は、５月１日金曜日の21時。21世紀の紋次郎がどんな活躍を見せるのか、とりあえず楽しみにしたい。
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