仏説非仏説の判断基準をまとめ、全仏教経典を六分別に分類しました。
1．三つの判断基準 因縁・南伝・北伝
2．全仏教経典の六分別 因縁＋南伝 → ほぼ原始仏典
3．因縁が重要である理由 第一結集に起因する可能性
4．北伝より南伝を優先する理由 蛇足の上座・捏造の大乗
5．結び
1．三つの判断基準
1．「因縁」（如是我聞など）の記述の有無を最も重要視します。
2．「南伝文献」にその経典があるかどうかを次に重要視します。
3．「北伝文献」にその経典があるかどうかを重要視します。
この三つの相互関係を組み合わせると「仏説の信頼性」を
判定する大まかな判断基準が出来上がります。
2．全仏教経典の六分別
因縁 南伝 北伝
○ ○ ○ → 仏説 ：仏説として最も信頼できる［律蔵と経蔵四部］
○ ○ × → 仏説 ：仏説として次に信頼できる［律蔵と経蔵四部］
○ × ○ → 非仏説 ：大乗非仏説の捏造経典 ［大乗経典群］
× ○ ○ → 非仏説 ：根本分裂以前の長老作品 ［経集や法句経など］
× ○ × → 非仏説 ：上座部独自の長老作品 ［慈経や長老偈など］
× × ○ → 非仏説 ：大乗独自の長老作品 ［祖師たちの著作など］
1．因縁の記述があり、南北双方に対応経典がある経典
パーリ語四部経典（長部・中部・相応部・増支部）と律蔵（附随を除く）などで、最も原始仏典として信頼できるものです。
2．因縁の記述がある南伝文献で、北伝文献には対応経典がない経典
パーリ四部経典にいくつかあります。北伝文献には対応経典がありませんが、十分に原始仏典として信頼できるものです。
3．因縁の記述がある北伝文献で、南伝文献には対応経典がない経典
大乗仏典に多く見られるもので「大乗非仏説」として以前より指摘されてきている経典群です。「浄土三部経」や「法華経」などです。後世の創作経典であると考えて間違いありません。学術的にも非仏説であるというのが常識です。
4．因縁の記述はないが、南北双方に対応経典がある経典
これは岩波文庫の『ブッダのことば』や『ブッダ真理のことば・感興のことば』の経典であるスッタニパータの一部やダンマパダなどです。これらの経典は北伝文献の四阿含から除外されているのに、一方南伝文献ではこれを経蔵に入れており、対応経典はあっても南北で評価が異なり矛盾が生じています。これらは、上座部と大衆部に根本分裂する以前から存在したと考えられる「長老作品群」です。学界はこれを非常に高く評価しますが信頼できない経典が多く、非仏説の長老作品であり修行方法の記述も少なく原始仏典として採用できません。
5．因縁の記述がない南伝文献で、北伝文献には対応経典がない経典
「慈経」や「宝経」など。これらは上座部独自の経典群で、北伝文献にはまったく見られない経典群です。しかも、因縁の記述がなく、ゴータマを讃美する形式が多いのが特徴です。ゴータマを讃美するところから、長老作品であることは疑う余地がありません。これらは経蔵に分類される小部経典に多く見られる蛇足的経典群ですが、すべて非仏説です。
6．因縁もなく、南伝文献にも対応経典がない北伝文献
原始仏教を求める人は読むこともない経典群です。
【結論】
1と2が仏説としての信頼性が高く原始仏典として採用されます。一方、他の四つは信頼できず原始仏典としては採用できません。「パーリ律蔵とパーリ四部経典＝原始仏典」であると見て、大体間違いないと思います。僕が見たところ以下の五つが仏教経典に存在するように思います。
1 原始仏典
2 原始仏典の中にある若干のノイズ（梵網経を説いたら地震が起きたなど）
3 根本分裂以前の長老作品
4 根本分裂後の上座部独自の長老作品
5 根本分裂後の大乗独自の捏造経典
3．因縁が重要である理由
お決まりのはじめの文句である「私はこのように聞いた。あるとき世尊はサーヴァッティのジェータ林、アナータピンディカの園に住んでいた」という因縁の有無は非常に重要です。なぜなら、第一結集の際、マハーカッサパはアーナンダとウパーリに対して「必ず因縁について質問しているから」です。引用します。
「そこで尊者マハーカッサパは尊者ウパーリに言った。
『友ウパーリ、第一パーラージカ（波羅夷、はらい、教団追放の罪）はどこにおいて制されたのか』
『先生、ヴェーサーリです』
『誰に始まるのか』
『スディンナ・カランダカプッタに始まります』
『何の事についてか』
『性行為の法です』
そこで尊者マハーカッサパは尊者ウパーリに第一パーラージカの事を問い、因縁を問い、人を問い、制を問い、二制を問い、犯を問い、不犯を問うた。 」
（参考「第一結集」：http://
ここから「因縁の記述は第一結集に起因する経典の必要最低限の条件」であることが明らかです。後世の長老たちが長老作品に因縁を挿入する可能性はありますが、その信頼性は南北両文献の比較からある程度推察することができます。逆に因縁の記述がない経典は、明らかに第一結集に遡ることができない経典群であることは明白です。
もちろん、第一結集に誦出されなかった仏説は大いにありえます。しかし、「第一結集に来なかった長老たちの教えが第一結集よりも保存状態がよいということ」、この可能性は非常に薄くなりますので、考慮する必要はないほどです。マハーカッサパが「非法を説く者たちに先んじよう」という主旨で開かれた第一結集ですから、「教えを残したい長老たちは可能なかぎり全員集合した」と考えられます。それゆえ、第一結集から洩れた教えはあまり考慮する必要はありません。
【まとめ】
「因縁がある経典は、それが第一結集に起因する可能性がある」
「因縁がない経典は、それが第一結集に起因する可能性がない」
4．北伝より南伝を優先する理由
上座仏教教団の「売り」は、「こちらこそが本当の仏説だ」というものですから、法と律を改竄（かいざん）することはあまり考えられません。法と律を自ら改竄しておいて「上座仏教こそが本当の仏教ですよ」と言うのは自らの首を絞めることになるからです。ですから、純粋なところは純粋なままに保って、蛇足蛇足で付け加えていって法と律を論でまるごと包み込んで、最後にメソッドという油で揚げてしまうという手法を取らざるを得ません。ですから上座仏教の「衣」は非仏説ですが「中身」をほじくり出せば原始仏典に辿り着くことができます。
一方、大乗は「あれは方便。要するに全部嘘。本物はこっち」というのが売りですから、法と律を改竄する必要が絶対にあるわけです。改竄しなければ、阿含と大乗経典群の内容の相違があまりにも甚だしくなりすぎ、明らかな自己矛盾を生じるからです。ですから、純粋なところを邪見の伏線として汚していって「カイゼン」と称して「改竄と捏造」という手法を取ります。
上座部の売りの一つが「正法伝持」ですので上座部の経蔵と律蔵は信頼できます。しかし、今日の上座仏教のメインの商品は「メソッド」ですので、真の仏説や原始仏典はあまり表に出てきません。しかし一応「建前は本当の仏教」ですので、経典が埃をかぶっても改竄することは少なく、論の蛇足があるだけだと思います。
しかし大乗仏教は今も昔も「大乗経典が命そのもの」ですからもう自由自在です。どんどん変わっていって、後期密教において究極に達しました。大乗仏教の伝播の歴史を見れば、初期・中期・後期であまりにも差異が大きいので、非仏説であることは明らかです。日本伝来当時の初期のもの、法華や金光明経、空海の頃の大日経や金剛頂経、そして、伝わらなかった秘密集会や時輪経典など。初期の頃は中期・後期の話が一切なく、中期は後期の話が一切ありません。歴史的な状況からも順々に創作されていったことは火を見るまでもなく明らかなことです。
一部の人は「仏は永遠で啓示が来た。だから大乗経典も仏説」と主張しますが、それならばどうして「ゴータマ以前の世界宗教の中に仏や菩薩や真言が出て来ないのか」ということになります。ですから、「如来啓示説」は不可能で、「ゴータマ一代かぎりの説法」と見るのが道理です。
【結論】
「蛇足の上座部」
「捏造の大乗」
→蛇足の方がまし。
蛇足でないところに原始仏典があるから。
5．結び
因縁の有無、南伝文献の有無、北伝文献の有無。これらを基準にして仏教経典を六分別しました。もちろん、「100％仏説」というものは何一つありません。条件が揃う程可能性が高いという意味で分類しました。なかには例外もありますが、大体これで分類可能だと思いますので、岩波文庫などお手持ちの書籍の註を参照しながら、読み進めてみてください。仏説非仏説がご自身で確認できると思います。
1．三つの判断基準 因縁・南伝・北伝
2．全仏教経典の六分別 因縁＋南伝 → ほぼ原始仏典
3．因縁が重要である理由 第一結集に起因する可能性
4．北伝より南伝を優先する理由 蛇足の上座・捏造の大乗
5．結び
1．三つの判断基準
1．「因縁」（如是我聞など）の記述の有無を最も重要視します。
2．「南伝文献」にその経典があるかどうかを次に重要視します。
3．「北伝文献」にその経典があるかどうかを重要視します。
この三つの相互関係を組み合わせると「仏説の信頼性」を
判定する大まかな判断基準が出来上がります。
2．全仏教経典の六分別
因縁 南伝 北伝
○ ○ ○ → 仏説 ：仏説として最も信頼できる［律蔵と経蔵四部］
○ ○ × → 仏説 ：仏説として次に信頼できる［律蔵と経蔵四部］
○ × ○ → 非仏説 ：大乗非仏説の捏造経典 ［大乗経典群］
× ○ ○ → 非仏説 ：根本分裂以前の長老作品 ［経集や法句経など］
× ○ × → 非仏説 ：上座部独自の長老作品 ［慈経や長老偈など］
× × ○ → 非仏説 ：大乗独自の長老作品 ［祖師たちの著作など］
1．因縁の記述があり、南北双方に対応経典がある経典
パーリ語四部経典（長部・中部・相応部・増支部）と律蔵（附随を除く）などで、最も原始仏典として信頼できるものです。
2．因縁の記述がある南伝文献で、北伝文献には対応経典がない経典
パーリ四部経典にいくつかあります。北伝文献には対応経典がありませんが、十分に原始仏典として信頼できるものです。
3．因縁の記述がある北伝文献で、南伝文献には対応経典がない経典
大乗仏典に多く見られるもので「大乗非仏説」として以前より指摘されてきている経典群です。「浄土三部経」や「法華経」などです。後世の創作経典であると考えて間違いありません。学術的にも非仏説であるというのが常識です。
4．因縁の記述はないが、南北双方に対応経典がある経典
これは岩波文庫の『ブッダのことば』や『ブッダ真理のことば・感興のことば』の経典であるスッタニパータの一部やダンマパダなどです。これらの経典は北伝文献の四阿含から除外されているのに、一方南伝文献ではこれを経蔵に入れており、対応経典はあっても南北で評価が異なり矛盾が生じています。これらは、上座部と大衆部に根本分裂する以前から存在したと考えられる「長老作品群」です。学界はこれを非常に高く評価しますが信頼できない経典が多く、非仏説の長老作品であり修行方法の記述も少なく原始仏典として採用できません。
5．因縁の記述がない南伝文献で、北伝文献には対応経典がない経典
「慈経」や「宝経」など。これらは上座部独自の経典群で、北伝文献にはまったく見られない経典群です。しかも、因縁の記述がなく、ゴータマを讃美する形式が多いのが特徴です。ゴータマを讃美するところから、長老作品であることは疑う余地がありません。これらは経蔵に分類される小部経典に多く見られる蛇足的経典群ですが、すべて非仏説です。
6．因縁もなく、南伝文献にも対応経典がない北伝文献
原始仏教を求める人は読むこともない経典群です。
【結論】
1と2が仏説としての信頼性が高く原始仏典として採用されます。一方、他の四つは信頼できず原始仏典としては採用できません。「パーリ律蔵とパーリ四部経典＝原始仏典」であると見て、大体間違いないと思います。僕が見たところ以下の五つが仏教経典に存在するように思います。
1 原始仏典
2 原始仏典の中にある若干のノイズ（梵網経を説いたら地震が起きたなど）
3 根本分裂以前の長老作品
4 根本分裂後の上座部独自の長老作品
5 根本分裂後の大乗独自の捏造経典
3．因縁が重要である理由
お決まりのはじめの文句である「私はこのように聞いた。あるとき世尊はサーヴァッティのジェータ林、アナータピンディカの園に住んでいた」という因縁の有無は非常に重要です。なぜなら、第一結集の際、マハーカッサパはアーナンダとウパーリに対して「必ず因縁について質問しているから」です。引用します。
「そこで尊者マハーカッサパは尊者ウパーリに言った。
『友ウパーリ、第一パーラージカ（波羅夷、はらい、教団追放の罪）はどこにおいて制されたのか』
『先生、ヴェーサーリです』
『誰に始まるのか』
『スディンナ・カランダカプッタに始まります』
『何の事についてか』
『性行為の法です』
そこで尊者マハーカッサパは尊者ウパーリに第一パーラージカの事を問い、因縁を問い、人を問い、制を問い、二制を問い、犯を問い、不犯を問うた。 」
（参考「第一結集」：http://
ここから「因縁の記述は第一結集に起因する経典の必要最低限の条件」であることが明らかです。後世の長老たちが長老作品に因縁を挿入する可能性はありますが、その信頼性は南北両文献の比較からある程度推察することができます。逆に因縁の記述がない経典は、明らかに第一結集に遡ることができない経典群であることは明白です。
もちろん、第一結集に誦出されなかった仏説は大いにありえます。しかし、「第一結集に来なかった長老たちの教えが第一結集よりも保存状態がよいということ」、この可能性は非常に薄くなりますので、考慮する必要はないほどです。マハーカッサパが「非法を説く者たちに先んじよう」という主旨で開かれた第一結集ですから、「教えを残したい長老たちは可能なかぎり全員集合した」と考えられます。それゆえ、第一結集から洩れた教えはあまり考慮する必要はありません。
【まとめ】
「因縁がある経典は、それが第一結集に起因する可能性がある」
「因縁がない経典は、それが第一結集に起因する可能性がない」
4．北伝より南伝を優先する理由
上座仏教教団の「売り」は、「こちらこそが本当の仏説だ」というものですから、法と律を改竄（かいざん）することはあまり考えられません。法と律を自ら改竄しておいて「上座仏教こそが本当の仏教ですよ」と言うのは自らの首を絞めることになるからです。ですから、純粋なところは純粋なままに保って、蛇足蛇足で付け加えていって法と律を論でまるごと包み込んで、最後にメソッドという油で揚げてしまうという手法を取らざるを得ません。ですから上座仏教の「衣」は非仏説ですが「中身」をほじくり出せば原始仏典に辿り着くことができます。
一方、大乗は「あれは方便。要するに全部嘘。本物はこっち」というのが売りですから、法と律を改竄する必要が絶対にあるわけです。改竄しなければ、阿含と大乗経典群の内容の相違があまりにも甚だしくなりすぎ、明らかな自己矛盾を生じるからです。ですから、純粋なところを邪見の伏線として汚していって「カイゼン」と称して「改竄と捏造」という手法を取ります。
上座部の売りの一つが「正法伝持」ですので上座部の経蔵と律蔵は信頼できます。しかし、今日の上座仏教のメインの商品は「メソッド」ですので、真の仏説や原始仏典はあまり表に出てきません。しかし一応「建前は本当の仏教」ですので、経典が埃をかぶっても改竄することは少なく、論の蛇足があるだけだと思います。
しかし大乗仏教は今も昔も「大乗経典が命そのもの」ですからもう自由自在です。どんどん変わっていって、後期密教において究極に達しました。大乗仏教の伝播の歴史を見れば、初期・中期・後期であまりにも差異が大きいので、非仏説であることは明らかです。日本伝来当時の初期のもの、法華や金光明経、空海の頃の大日経や金剛頂経、そして、伝わらなかった秘密集会や時輪経典など。初期の頃は中期・後期の話が一切なく、中期は後期の話が一切ありません。歴史的な状況からも順々に創作されていったことは火を見るまでもなく明らかなことです。
一部の人は「仏は永遠で啓示が来た。だから大乗経典も仏説」と主張しますが、それならばどうして「ゴータマ以前の世界宗教の中に仏や菩薩や真言が出て来ないのか」ということになります。ですから、「如来啓示説」は不可能で、「ゴータマ一代かぎりの説法」と見るのが道理です。
【結論】
「蛇足の上座部」
「捏造の大乗」
→蛇足の方がまし。
蛇足でないところに原始仏典があるから。
5．結び
因縁の有無、南伝文献の有無、北伝文献の有無。これらを基準にして仏教経典を六分別しました。もちろん、「100％仏説」というものは何一つありません。条件が揃う程可能性が高いという意味で分類しました。なかには例外もありますが、大体これで分類可能だと思いますので、岩波文庫などお手持ちの書籍の註を参照しながら、読み進めてみてください。仏説非仏説がご自身で確認できると思います。
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コメント(1)
北伝大蔵経は、当時の中国の検閲をへて、欽定訳として作成を許されたという記述をどこかで読んだと思います。
南伝大蔵経は政府の検閲とか欽定訳とかあったとしても緩やかなものだったために比較的仏陀の正確な教えが伝えられているのかもしれませんね。
中国は、強力な政権が次々に現れる下克上社会だったと思うので、思想に対する警戒心は高かったと思うし、現在でもその名残があるような気がします。
中国人は、表面上は人と合わせていても、裏では自己の益になることを見抜いて見出していくところがあるので、儒教社会の中でも、仏教の価値の本質をみぬいていたため、それなりに中国仏教が発展したのだと思います。智�擇遼琺纏澳僂覆匹呂�なり高度な仏教書だと思います。
南伝大蔵経は政府の検閲とか欽定訳とかあったとしても緩やかなものだったために比較的仏陀の正確な教えが伝えられているのかもしれませんね。
中国は、強力な政権が次々に現れる下克上社会だったと思うので、思想に対する警戒心は高かったと思うし、現在でもその名残があるような気がします。
中国人は、表面上は人と合わせていても、裏では自己の益になることを見抜いて見出していくところがあるので、儒教社会の中でも、仏教の価値の本質をみぬいていたため、それなりに中国仏教が発展したのだと思います。智�擇遼琺纏澳僂覆匹呂�なり高度な仏教書だと思います。
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