原始仏教コミュの三学　　　出家して阿羅漢になるまで　

原始仏教の修行を簡単にまとめたものが「三学」です。この三学の中に「百以上の全ての学処が含まれている」と説かれています。ここでは「増上戒学・増上心学・増上慧学」と書いていますが、よく言われるように「戒・定・慧」でも間違いではなく、原始仏典でもその三セットはしばしば出てきます。「増上」とは「より上の、さらに優れた」という意味で、さらに優れた戒と心と智慧を学んでいこうということです。三学は簡略して説く場合と詳細に説く場合があります。



［基本］

　1
　増上戒学　具戒　戒を守って、学処を学ぶ
　増上心学　四禅　第一禅・第二禅・第三禅・第四禅を具足して住する
　増上慧学　四諦　苦・苦集・苦滅・苦滅道を事実の通りに知る

　2
　増上戒学　具戒　戒を守って、学処を学ぶ
　増上心学　四禅　第一禅・第二禅・第三禅・第四禅を具足して住する
　増上慧学　解脱　無漏の心解脱・慧解脱を現世で実証して住する

　　参考：http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27171196&comm_id=951429




［応用］

　増上戒学　　小戒・中戒・大戒　
　増上心学　　根律儀・食量知・覚醒・念正知・満足・断蓋・四禅
　増上慧学　　心身智・意成身・六神通　　




以下は三学の詳細です。




［増上戒学］
1　出家　　　如来出世・聞法・信・熟慮・財産親族を捨てる・出家
2　戒　　　　小戒・中戒・大戒

［増上心学］
3　根律儀　　眼耳鼻舌身意の六根の防護（馬を御する）　
4　食量知　　一日一食（傷に薬・車軸に油）
5　覚醒勉　　日中初夜後夜は障害法から心を清め、中夜は念じて獅子臥　
6　念正知　　四威儀（行住坐臥）を知ることと所作の自覚
7　満足　　　衣食に満足してどこにでも行く（鳥の翼）
8　断蓋　　　欲意欲・瞋恚・惛眠・掉悔・疑（借金・病気・牢獄・奴隷・荒野）
9　四禅　　　初禅・第二禅・第三禅・第四禅（石鹸・湖・蓮・白布）　

［増上慧学］
10 心身の智　肉体と心を知る（宝石と糸）　
11 意成身　　心の身体を化作する（ムンジャ草・短剣・蛇）
12 神足通　　多端神変（陶工・象牙細工師・金細工師）
13 天耳通　　神と人の声を遠近ともに聞く（ティンパニー・小太鼓等）
14 他心通　　生ける者の心を知る（鏡に映るほくろの有無）
15 宿住通　　前世を無限に思い出す（村から村への旅）
16 天眼通　　生ける者の死と再生を見る（交差点の高い建物）
17 漏尽通　　苦の四諦と漏の四諦を知る（澄んだ湖）


括弧の内容はそれぞれのたとえで、これによって修行のイメージをつかむことができます。六神通の獲得は必須科目ではありません。慧解脱以上であるならば、堕落の可能性も機会もあり得ないと説かれています。神の境地が宮殿で贅沢に暮らすというたとえだとすると、阿羅漢はオアシスの泉で身体を清めて（想受滅の瞑想のこと？）泉から出て木陰で一方的に安楽を享受する境地であると書いてあります。阿羅漢の境地は苦しみの消滅ですので、一方的に快楽があります。阿羅漢となった後は、好きに暮らせばいいです。弟子たちもみな好き勝手に暮らしています。一応、簡略にした戒律を下に書いておきます。出家者用です。





［小戒］
1　殺さない
2　盗まない
3　性行為・自慰行為をしない
4　嘘をつかない
5　仲違いさせることを言わない
6　人を不快にすることを言わない
7　無益な話をしない
8　草木を刈らない
　　一日一食にし夜食を摂らない
　　娯楽（踊り・歌・音楽・視聴）をしない
　　お洒落をしない
　　高いベッドや大きなベッドを使用しない
　　金・銀（お金）を受け取らない　
　　生の穀物を受け取らない　
　　生の肉を受け取らない
　　鶏や豚を所有しない
　　象・牛・牡馬・牝馬を所有しない
　　畑や屋敷を所有しない
　　使者になったり、使者を遣わしたりしない
　　売買をしない
　　升目・貨幣・寸法をごまかさない
　　賄賂・欺瞞・詐欺をしない
　　暴力・殺害・監禁・待ち伏せ・略奪・強盗をしない

［中戒］
1　草木を刈らない
2　貯蔵しない
3　娯楽を見たり聞いたりしない
4　賭博遊戯をしない
5　贅沢な寝台を使用しない
6　お洒落をしない
7　無駄話をしない
8　論争で勝ち誇らない
9　使者になったり、使者を遣わしたりしない
10 ペテン・作詩・占い・詐欺・手品・利潤追求をしない

［大戒］
1　相占い（夢や手相）と献供（護摩や食べ物）、呪術などで生計を立てない
2　相占い（人・動物・もの）で生計を立てない
3　戦争の予言で生計を立てない
4　占星術による予言で生計を立てない
5　日取り決め・呪術・呪文・神託・太陽崇拝などで生計を立てない
6　願掛け・拝み屋・内科医療・外科医療・薬の調合などで生計を立てない



小戒の一から七までは出家在家問わず、為してはならない身行と語行です（性交に関しては差異があります）。八番目の戒は中戒と大戒をまとめていて、主に生活法について述べられているのでこの小戒の別名が「活命第八」となっています。「初梵行戒」とも言われ、基本中の基本の戒になります。正業が三つ、正語が四つ、正命が一つです。

中戒からは主に出家専用の戒となります。在家は「他者を害することを制する」のですが、出家は「自己を害することをも」制します。娯楽や贅沢は欲を増大するので結果的に自己を苦しめることになるので中戒においてそれを制します。

大戒は邪命を禁じる戒です。金銭の授受がなくともうさん臭い業によって生活を確保してはならないということだと思います。

小戒は正業・正語。
中戒は五妙欲を享受する機会の制御。
大戒は正命。



原典は以下を参照してください。


・長部経典 第10経 『スバ経』
1 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27854287&comm_id=951429
2 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27875168&comm_id=951429
3 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27900944&comm_id=951429
4 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=27917774&comm_id=951429　　完