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2008年06月13日13:52

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「山本モナ」 という名前。――2

  【 山本モナ 】
〓今日の真打の登場です。もうTVバラエティでは、すっかり、おなじみの顔です。こういう状況をどう表現するかで、その人の道徳観がわかるような気がします。

   転んでも、ただ起きない
   わざわい転じて福となす
   火事の焼け太り
   禍福はあざなえる縄のごとし
   人間万事、塞翁が馬

〓さて、どれでしょう。

   【 山本モナ 】
    1976年 (昭和51年)、広島県尾道市生まれ。
         父親はノルウェー人航海士。
    1982年 (昭和57年)、日本国籍を取得。

    1998年、朝日放送 (大阪) 入社。
    2005年6月、朝日放送を退社。フリーとして上京。
         オフィス北野に所属。
    2006年9月、TBS 「筑紫哲也 NEWS23」 の
         キャスターに抜擢される。
         その直後に、例の 「フライデー」 の件発生。
         10月2日より、番組出演を見合わせる。
         10月23日付で、番組を降板。

    2007年1月1日、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」 で復帰。
         かぶり物などの洗礼ありで司会をつとめる。
         以後、ふっきれたようにバラエティに出まくる。自虐ネタもあり。

〓と、まあ、こういうぐあいです。御当人のブログのほうは、

    2006年9月24日 の次が
    2007年1月14日
    http://yamamoto-mona.cocolog-nifty.com/

で、約4ヶ月あいています。

〓ええと、こうクドクド書きましたのは、何か 「コト」 があったときに、「名前」 というのは、“受け取る側” の心証を左右するんではないか、と思ったからです。さあ、どうでがしょう。「山本モナ」 という名前が印象を左右しなかったでしょうか?


〓6歳で、日本国籍を取得するまでの名前は、

   モナ・ヘグダール

だったそうです。原綴 (げんてい) については、どこにも資料がないんですが、「モナ」 は “Mona” でよいとして、「ヘグダール」 という姓には、ノルウェー語でも4通りの綴りがあります。

   Hegdal
   Heggdal
   Hegdahl
   Heggdahl
      発音 = [ ' hægda:l ] [ ' ヘグダーる ]

〓いずれの綴りも同じ程度の頻度で使われており、ノルウェーでは珍しい姓ではありません。語源から言うと、Heggdahl が元の意味を伝えている綴りです。

   hegg [ ' hæg ] 「エゾノウワミズザクラ」
    +
   dal [ ' da:l ] 「谷」 (旧綴 dahl)
    ↓
   Hegdal 「エゾノウワミズザクラの谷」

〓これは地名です。「エゾノウワミズザクラ」 というのは、北半球の寒冷地に自生するサクラで、日本では北海道で見られます。学名は、リンネによる命名で

   Prunus padus [ プ ' ルーヌス ' パドゥス ]

〓 prunus は “スモモの木”、Padus は、イタリア北部を流れる、イタリア最長の川 “Po” 「ポー川」 の古名 (ラテン語名) です。ポー川の岸辺にこの木が見られることに由来すると言います。

〓「エゾノウワミズザクラ」 のイタリア語における一般名 common name は、

   ciliegio a grappoli [ チり ' エーヂョ アグ ' ラッポり ] 「房状になる桜の木」

ですが、イタリア語版の Wikipedia によると、

   pado [ ' パード ]

の名前もあるようです。この単語は、伊和辞典では見つけることができないので、北イタリアの方言なのでしょう。

〓現代語に pado という語彙があるとすると、北イタリアの俗ラテン語では、

   padus [ ' パドゥス ] 「エゾノウワミズザクラ」

だった可能性があります。つまり、ポー川と同じ名前の桜だったのです。

〓漢字では、和名を 「蝦夷の上溝桜」 と書きますが、「ウワミゾ」 のまちがいではありません。本土には、「ウワミズザクラ」 という野生種の桜があり、これを転用したわけですが、そもそも、

   本土の 「ウワミズザクラ」 は、「ウワミゾザクラ」 (上溝桜) が訛ったもの

です。

〓「ウワミズザクラ」 の古名を 「ハハカ」 と言い、“波波迦” (宛て字) の表記で 『古事記』 にもあらわれます。なんでも、この木の材の表面 (上面) に溝を彫って占いに用いたそうで、そこから 「うわみぞ」 の名があります。

〓とっとっと、また、話があさってに行ってしもた。


〓とにかく、「ヘグダール」 というノルウェー姓は、「エゾノウワミズザクラの谷」 という名前の土地の出身者が名乗ったものです。


〓では、今度は、「モナ」 という名前のほうに取りかかります。

〓お父さんがノルウェー人。さもあらん、さもあらん。Mona [ ' モナ ] というのは、北欧では、古くから使われている一般的な女子名です。スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、いずれでも、ごく普通の名前です。
〓もとは、

   Monica [ ' モニカ ] スウェーデン、ノルウェー、デンマーク
   Monika [ ' モニカ ] 同上3ヶ国、+フィンランド

という名前の 「略称」 ないし 「愛称」 です。

〓「モナ」 とか 「モニカ」 というと、日本人には、「ナンか、きのう今日の流行りのチャラチャラした名前ぢゃないの」    というイメージがあるんではなかろか。たぶん、吉川晃司 (きっかわ こうじ) さんの

   『モニカ』

あたりが強烈な印象を与えたんじゃないかしら。あるいは、桜田淳子さんの

   『サンタモニカの風』

とか……

〓しかしですね、「モニカ」 という名前は、「カトリック」、「ギリシャ正教」 ともに聖人として認めている古い古い時代の女性に由来するんです。


――――――――――──────────――――――――――
聖モニカ (8月27日) と聖アウグスチヌス司教 (8月28日)

聖モニカ (332〜387) わが子の回心のために昼も夜もあつく祈るキリスト教的母親の典型。三人の子があり、アウグスチヌスは次男である。未信者の夫に嫁いだが、苦難にも負けず信仰を貫いて、夫や姑、放蕩にふけっていた息子をも回心へと導いた。

聖アウグスチヌス (354〜430) 若い頃放蕩にふけっていたが、生来頭がよく、回心の後には 「告白録」 をはじめ膨大な著作を残した。彼の説いたキリスト教の諸真理は、教会の内外に今日まで大きな影響を及ぼしている。


(↓のページより拝借しました)
http://yurigaoka.info/cal/calbk/seijin-2.html
――────────――――――――――――――――――――


〓聖モニカの夫は、パトリクスという異教徒で、家庭内暴力、いわゆる DVの常習者だったそうです。この夫と放蕩息子に辛抱強く堪え、死のまぎわに夫をキリスト教に改宗させ、息子も改心させた、というのが、キリスト教徒の婦人の鑑とされているそうです。(少し皮肉)

〓 Monica という名前の語源は明らかでなく、アルジェリアの出身者であることから、ベルベル語とかフェニキア語 (=ポエニ語。カルタゴの言語)に由来する名前ではないか、と言われます。
〓不思議なことに、ロシア正教では、教会暦に Моника Monika の名がなく、聖人として扱われていないようです。実際、「モーニカ」 という名前のロシア人は見たことがありません。

〓しかし、西欧〜東欧では広く普及している名前です。

   Monique [ モ ' ニック ] フランス
   Monica [ ' モーニカ ] イタリア、ルーマニア
   Mónica [ ' モーニカ ] スペイン、ポルトガル
   Mônica [ ' モんニカ ] ブラジル

   Μόνικα Monika [ ' モーニカ ] ギリシャ

   Monika [ モ ' ニカ ] ポーランド
   Monika [ ' モニカ ] チェコ、スロヴァキア
   Mónika [ ' モーニカ ] ハンガリー

   Monika, Monica [ ' モーニカ ] ドイツ
            (愛称 Mona [ ' モーナ ])
   Monica, Monika [ ' モーニカ ] オランダ

〓問題なのは 「英語圏」 です。どういうもんですか、英国の名前の体系というのは、大陸ヨーロッパとはかなり異なった様相を呈することが多いのです。Monica という名前は、英語圏では20世紀に入るまで使用されることが稀でした。米国に Santa Monica という地名がありますが、あれは、スペイン人が名付けたものです。かの地にスペイン人が到達したのが、聖モニカの祝日だったことに由来します。
〓 Mona という名前は、現在、英語圏でも使用されますが、その発生過程は、きわめて複雑です。そもそも、Monica という名前が使われていなかったわけですから、Mona という略称も存在しませんでした。

〓まず、Mona は、アイルランド (アイルランド・ゲール語) の女子名、

   Muadhnait [ ' muənat ] [ ' ムアナット ] =「小さな高貴なもの」
         muadh = 高貴な、-nait = 指小辞

の英語形として現れました。19世紀後半にイングランドに広まり、そののちに世界の英語圏に波及しました。ただし、その過程で、レオナルド・ダ・ヴィンチの

   Mona Lisa [ ' moʊnə ' li:sə, ' li:zə ] [ ' モウナ ' りーザ、'
りーサ ] モナ・リザ

が明らかに影響していると言います。

〓もっとも、Mona Lisa の “Mona” は、名前ではなく、イタリア語の Madonna の短縮形です。-ad- が抜けて、Monna [ ' モンナ ] になったものです。

〓 ma donna 「我が淑女 (←女主人)」 が語源ということは、英語の my lady と同じく 「名前にするのはヘンテコ」 なことです。本来は、Monna と n は2つなんですが、イタリア語でも Mona Lisa とする表記が相当数見られることから、俗音では [ ' モーナ ] も使われるか、あるいは、方言の多様なイタリアということで、Madonna を Mona [ ' モーナ ] と略する地方があるかもしれません。

〓とりあえず、イングランドでは、このヘンが 「綯 (な) い交ぜ」 になって、19世紀後半から、

   Mona [ ' moʊnə ] モウナ

という名前が成立したようです。


〓この名前を有名にしたのは、ナンと言っても、ボー・ディドリー Bo Diddley のロックンロール曲

   “Mona” 『モナ』

であったかもしれません。
〓ボー・ディドリーは、チャック・ベリーやプレスリーと同時代の、「黎明期のロックンローラー」 です。どちらかというとブルース寄りで、「ジャングル・ビート」 Jungle Beat の発明者。“Mona” は、彼の1957年の曲です。同年のシングルの売り上げチャートでは、

   “Hey! Bo Diddley / Mona”    29位

だったらしい。


〓話はキッパリ横道にそれますけん、ボー・ディドリーは、先だっての6月2日に亡くなったのです。
〓来日は、1988〜2001年のあいだに4回。最初は、ストーンズのロン・ウッドとのワールドツアー。この音は、レコードでもCDでもリリースされてます。今、アマゾンで見ると新品がないので、廃盤なんでしょうか……

〓2度目は “ブルース・カーニバル”。今年は、知らせがないのだけれど、“ブルース・カーニバル” は中止なのかしらん。
〓4度目はブルーノートでの公演で、アッシなんぞにはカンケーねかったですね……


〓3度目、1997年の日本単独ツアーを、アッシは、オン・エア・イースト ON AIR EAST で見やした。今、Shibuya O-East と言っているライヴハウスです。当時は、ちょいとしたブルースブームがあって、あの J-WAVE がブルースに肩入れしてたんですよ。信じられないけど……

〓東京では、2日間くらいやったと思うんだけど、オン・エア・イーストは立ち見でスシ詰め。当時、70歳になんなんとするボー・ディドリーのギタープレイは、手元にまったく衰えはなく、ご機嫌なジャングルビート (1990年代に流行った “ジャングル” とは関係ないよ) を聴かせてくれました。
〓ライヴの終盤に、当時、解散したばかりの “ボ・ガンボス” の 「どんと」 さんと 「Kyon」 (キョン) が飛び入り参加しました。“ボ・ガンボス” の 「ボ」 は “ボ・ディドリー” の 「ボ」。その3年後、「どんと」 さんは、わずか37歳で早世してしまいました。

〓ボー・ディドリーが “Mona” を発表した7年後の1964年、ローリング・ストーンズが4月に英国、5月に米国で、デビュー・アルバム

   “The Rolling Stones”

をリリースしていますが、英国盤の4曲目にのみ、ボー・ディドリーの “Mona” のカバーが入っています。

〓この他にも、“Mona” という曲は、いくつかあります。
〓ビーチ・ボーイズ The Beach Boys、1977年のアルバム “Love You” に “Mona” という短い曲があり、また、ジェームス・テイラー James Taylor の1985年のアルバム “That's Why I'm Here” にも “Mona” があります。


〓なんか、そんなふうに歌に歌われやすい名前なんですね。



〓つぃなみに、中国では 「山本モナ」 さんは、ほとんど知られていません。ここが面白いところで、中国で有名になるのは、「グラビア」、「ドラマ」、「映画」、「歌」 のいずれかのチャンネルを通してなのです。だから、「アナウンサー」、「キャスター」、「TVバラエティのタレント」 は、まったくと言っていいほど知られていません。

〓一応、

   山本梦娜 (山本夢娜) shānbĕn mèngnà [ しゃヌペヌ モンナー ] 26件

と表記されています。「梦娜」 というのは、モナさん用の表記というより、中国の企業名などで流行っている “雰囲気外国語” の表記の1つです。一応、Mona という女性の名前の転写ということらしい。


〓そんなこんなで、英語圏では出自がはっきりしないまま、“水っぽい感じ” で有名になっちゃった名前です。しかし、ヨーロッパの、特に北欧では、伝統的な名前なのです。
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