ブータン４　仏教！？

　チベット、ブータン、シッキム、ラダック、ネパールに分布する「チベット仏教」別名ラマ教。
　ブッダよりも高僧の方を崇拝するのでラマ（師）教という別名が付けられているのですが、中の人達はこれが正式な仏教だと信じているので、あんまりそこいらツッコまないであげて下さい。

　だってな、ブッダが転生するんだよこの宗派‥‥

　仏教の最終目的は輪廻から脱却する事なのに、それを悟りと言うのに、「悟った者」という意味のブッダが転生していいのか‥‥それは警視総監が広域暴力団の組長やってるようなもんじゃないのか‥‥
　六道輪廻の思想はガッチリあり、今生の功罪に応じて来世では酬いor救いが与えられるという意識もガッチリあり、その永遠の輪から脱却する事が最高の栄誉だという理論もガッチリあるのに、なんで高僧が生まれ変わってくる事は当然であり祝福されるべき事であるのか。
　分からない‥‥

　これは多分、多分なんですけどね、ヒンドゥー教の「神は人界に転生して人々を救う」という思想が影響しているんじゃないかと思います。
　有名なネパールの生き神「クマリ」は、初潮前の女の子で王様ですらその前では平伏する至高の存在ですが、元々は南インドの土着神。インド最南端の岬はカニャークマリといい、クマリ女神の神殿があります。（ここ、海から登る朝日と海に沈む夕日が綺麗なんだ〜v）
　キリスト教が元々はユダヤ教の一派であったように、仏教は元々ヒンドゥー教の一派でした。そして土着神を取り込みながら土地ごとに発展していき、なおかつローマ・バチカンのような総本山が存在しないので、仏教の中にはどれが正統でどれが異端だっていう区別はありません。
　ま、宗教戦争が起きなきゃそれでいいっしょ（笑）このアバウトさがアジアの特徴の一つだと思うので、私は無神論者の宗教オタクですが、ラマ教も充分に美しいと感じましたよ。

　ブータンで最も崇拝されているのは、釈迦の直接の生まれ変わりであるとされる、チベット仏教の開祖グル・ルンボチェ。次いで、ブータン建国の父とされるシャブドゥン。
　シャブドゥンの代理人が、国の大僧正ジェ・ケンポです。今のジェ・ケンポは80代目だったかな？王様と同等くらいの権威を持ちます。
　あと、伝説的な高僧に啓示を受けた人をテルトンと呼び、これまた崇拝の対象です。その神話の中でも国内最大級の聖所へも行ったのですが‥‥えーと、ペマ・リンパという16世紀の人に、グル・ルンボチェが夢枕に立って「あそこの淵に法典を沈めたから取りに行きなさい」と言い、潜ったら本当に教典と宝塔が出てきた、という伝説がある所。場所は中央ブータン、ジャカルのメンバル・ツォ。写真３枚目。
　出てきた宝塔のレプリカが国立博物館にあります。30cmくらいの、すっごい繊細で綺麗な仏塔でした。

　各所に残るヒンドゥー教の影響とか、私ぐらいしか面白がる人もいないと思うので割愛します^_^;;（歓喜仏とシャクティー信仰の同一性やら、ヒンドゥー神の護持仏化やら、「緑面ターラーと白面ターラーの違いって何ですか！？」と詰め寄られたガイドさんは実に災難でした。私のメモ帳、ヲタ書き込みで真っ黒だ（笑））でも、７世紀に作られた弥勒菩薩塑像がちょっと寄ったお寺にさりげなく安置されていたりして、それがまたお触りOKだったりして、すっごい興味深かったです。飛鳥時代の仏像に似てるんだよー。
　聖なるものには己の息を掛けてはいけない、という習慣があるので、仏像や高位の人の前ではブータン人は袖で口を覆います。それがどこまで適用されるのか分からず、寺の中では常に手で口を押さえていた私は、何度も「もういいですよ」とガイドさんに笑われたのでした。

　ブータンの人達は常にお経を唱えます。マニ車は、一回回すとお経を一回唱えたことになるので、寺院の外壁など到る所にあります。また、みっしりとお経を書いた旗（五色の小さい布を繋いであったらルンタ、単色で高い竿に結ばれていたらタルシン）がいたる所にあるのも、一回風にひらめくごとに一回お経を唱えたことになるからだそうです。
　老いて家も家族も無くした人は、お寺に行って、時計回りに無数のマニ車を回し続けます。それは一つの職業で、お寺が彼らの衣食住を見てくれるとか。
　ちょっと前まで、一家に一人は必ずお寺に差し出して、小僧さんを経て僧侶にさせたというブータン。義務教育が始まってその数は減ったそうですが（それまでは僧侶しか字が読めなかったのね）、それでも見学させてもらった学問所では、赤い布をまとった少年達が、ひたすらにお経を唱えていました。
　外国人が珍しくて私を見るのに夢中になり、先輩に怒られてた子とかもいたけどな。座禅を科せられてんのにミニゲームに熱中してた子もいたけどな（笑）