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2007年12月31日20:55

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「“ウラ正月” 映画」。

   ▲『ハーフェズ』。         ▲『夜顔』。          ▲『雪の女王』。



〓フツーのヒトが見ない映画ばかり見るようになって、20年以上が経ちます。たとえば、アタシの中では、

   「イオセリアニ」 と言ったら黄金にも匹敵します。

〓あるいは、

   「フリドリク・トール・フリドリクソン」 とか、
   「キーラ・ムラートヴァ」


などというヒトは、真珠のような存在ですが、この 「多数決の経済原理の世の中」 では、彼ら・彼女らの新しい映画をスクリーンで見ることはできません。

〓アタシが、あまり客の入らない映画ばかり見るのは、たぶん、“カタ寄ることが好きな世間” を見かねて、みずから、その counterweight になっているツモリのところもあります。また、昔から、「お菓子の家に招き入れられる」 ようなショウビズ根性が嫌いなところもあります。江戸っ子カタギなのかもしれません。

   落語は、笑わせるところが3ヶ所あればいい

という林家彦六ふうの体質なんでしょう。

〓最近は、あまり、ヒトに映画を勧めません。勧めたとしたら、それは、アタシの趣味から多少ズレた映画だと思ってください。


〓今年の映画のベストを選ぼうと思って、見た映画の一覧表をまとめていました。ええ、今日の間に、合いませんでした。なんせ、日付と走り書きていどのメモなんで、それを見ながらではベスト10も選べない。
〓一応、2007年に見た映画の本数だけわかりました。

   長編 54本
   短編 44本

〓少ないなあ。長編が少ないです。もっとも、ここ最近は、家事と仕事が忙しくて、長編40本程度という年が続いていたんで、今年はかなり復活したんですが……
〓古い記録をひもといて、バラバラにしてみたら、

   1998年  長編 76本 / 短編  7本
   1999年  長編 68本 / 短編 75本
   2003年  長編 77本 / 短編 64本


なんて、莫迦みたいに見ている。元気があったんだなあ、っと。

〓「短編」 というのは、一応、60分以下の映画、という定義にしています。ほとんどが、アニメーションです。

   チェコ、ソ連邦、フランス、日本

などのアニメーションですね。今年は、チェコ・アニメの大規模上映がユーロスペースでおこなわれたので、それで長編がクワれたようなところもあります。



  【 今年の冬は異常かもしれない 】

〓例年、暮れから新年にかけては、「年末調整」 だの、「年賀状」 の印刷だの、で時間もないんですが、

   たいして見たい映画もない

んですね。ホントウに冬休みというのは、アタシにとっては 「映画が時化 (しけ)」 なんです。
〓ところが、今年は、異常気象なのかもしれない。たぶん、ほとんどのヒトが気がつかないであろうけれども、スゴイ映画が並んでいるんです。ホントに異常なんですよ。
〓今日は、時間がないから、コッチに行こうと思ったわけです。ここで、アタシが言う

   オススメ

の意味は、先ほど申し上げたとおりです。謂わば、自分で自分に勧めているぐらいの意味しかない、ということになりますね。

   【 ここに幸あり 】 オタル・イオセリアニ
      恵比寿ガーデンシネマにて上映中

〓このヒトの名前は、本来の文字で書くと、

   ოთარ იოსელიანი

となります。グルジア文字と言います。このヒトはグルジア人なんですね。ソ連邦時代は、

   Отар Иоселиани
       Otar Ioseliani [ ア ' タール イヤセり ' アーニ ]

と呼ばれていました。ロシア文字、ロシア語の発音ですね。今でも、日本では、ロシア語式に、「オタール・イオセリアーニ」 と呼ばれています。
〓グルジア時代にもすばらしい映画をつくっています。『落葉』、『歌うつぐみがおりました』 などという映画を見るとき、あの鉄のカーテンの向こう側で、なおかつ、コーカサスの山の中で、

   フランスの “ヌーヴェル・ヴァーグ” に一歩もひけをとらない映画

がつくられていたことに驚愕します。
〓もっとも、彼の映画はソ連邦内で、まともに公開されたことがありませんでした。つくる映画、つくる映画、かたっぱしから上映禁止。1982年に 『田園詩』 がベルリン映画祭で “国際批評家連盟賞” を採ったのを契機に、フランスに移住してしまいました。
〓その後も、フランスで、“絶妙なバランス感” のある映画をつくり続けています。彼の新作が届けられた、ということですね。

   【 ハーフェズ ペルシャの詩 <うた> 】 アボルファズル・ジャリリ
       1月19日から。東京都写真美術館ホールで。

〓イランの映画監督、あまたいる中で、もっとも表現に対して禁欲的なのは誰か、と言ったら、もう、これは、アボルファズル・ジャリリにとどめをさしますね。
〓彼の前では、アッバス・キアロスタミも、サービス精神タップリに見えます。ジャリリの映画は、イスラーム革命後のイラン映画が生んだ “静謐なる独自の映像表現” を、もっともよく伝えていると言えます。

   美しき動く写真

です。ナンと主演が、

   麻生久美子さん

だと言うんですね。こりゃ、おろろいた。これね、日本のヒモ付き資金が絡んでいるとか、そういうんじゃないようです。だいたい、ジャリリというヒトが、そういうハナシに乗ると思えないし。
〓なんでも、ジャリリ監督のほうが、麻生久美子さんを気に入っちゃったんだそうです。イランのハナシの中に、ヒョッコリ、麻生さんが出てくる。でも、そういうストーリーの整合性みたいなのに頓着しないのがジャリリ流でしょう。「そんなのかんけーねえ」。もう古い?

〓つい、先日、突然の入籍発表ですけど、まあ、イラン映画の客の入りに、主演女優の入籍は、ほとんど影響しないだろうな……

   【 雪の女王 】 レフ・アタマーノフ
       シネマ・アンジェリカ (渋谷) で上映中。

〓ソビエト・アニメーションの傑作の1本でしょう。今回は、字幕の翻訳をあらたにして公開です。リマスターによる色の調整とか、そういう処理はしていません。

〓アタシ、20年ほど前に、1回見てるんですね。たぶん、三百人劇場です。そのときは、さほど面白いアニメだとは思わなかった。当時のアタシは、

   ソ連映画、中国映画、ポーランド映画、チェコ映画

などをカタッパシから見て、そこから 「政治的メッセージ」 ばかり読み取ろうとしていました。実際、アンジェイ・ワイダの映画なんてのは、脚本の文字にならない部分にメッセージが隠れている。それに有頂天になっていました。

〓いつの間にか、映画の見方が変わっていまして、それが、いつ変わったんだかわからない。いつの間にか、

   ストーリーだの、テーマだのはどうでもいい

という見方になっていました。実は、こういう見方のほうが、はるかに多くのものを映画から与えてもらえるんですよ。禅問答みたいですけど。

〓今回、見た 『雪の女王』 はすばらしかった。もちろん、シュヴァンクマイエル的な “すばらしい” のベクトルではありません。素直に、ディズニー的なベクトルです。それでも、かつての “政治的ナナメ読み” のキネヅカを持ち出すなら、この映画は、

   フルシチョフによる “スターリン批判” の翌 1957年に完成している

のです。当時のソ連人が、この 『雪の女王』 を見たときに、その冷気ですべての生き物を死滅させ、冷たい氷の城の玉座ですべてを見通している、ニンゲンよりもはるかに大きな巨人のような女王が、ナニカのメタファーのようだとは、感じたにちがいありません。

〓昔のディズニーふうの 「リアルな動きをするアニメ」 にひたってみるのもいいもんです。動きそのものが鑑賞に価します。

〓その他にも、紹介したい映画があるんですが、お時間がございません。

   【 レンブラントの夜警 】 ピーター・グリーナウェイ
       1月12日より、テアトルタイムズスクエアにて。

〓グリーナウェイの久々の新作です。

   【 夜顔 】 マノエル・デ・オリヴェイラ
       銀座テアトルシネマにて上映中。

〓この監督、99歳です。80歳を過ぎてから、1年に1本のペースで映画を撮っている驚異の先達です。99歳のヒトには、世の中がどのように見えているのか、カメラが、彼の視線そのものです。
〓この映画は見てきたのですが、パリの俯瞰の風景を、こんなにも悲しげに撮った監督を、アタシは知りません。音楽と画を楽しむツモリで行ってみてください。無欲になれば、実に、快適な映画です。
〓レイトショーの 『わが幼少時代のポルト』 が、また、すばらしい。99年間生きてきたヒトが、99年の人生を振り返ったセルフドキュメントです。

   【 カフカ 田舎医者 】 山村浩二
       シネカノン有楽町2丁目 (イトシア内) で、
       1月25日までレイトショー中。

〓「頭山」 の山村浩二の新作です。


〓けふは、これまで、よかお年を。
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