▲今年の 「カラータイツ」 は、こんな感じ。
〓ええっと、正月に近くなりまして、スーパーの花売り場も “花盛り” です。いつもなら、冬場に並ばないような花まで、顔を見せている。
ポピー を売っていたので、さっそく飾ってありますよ。
〓ポピーほど、「花の開くようす」 のおもしろい花はありませんや。なんというかね、
ダルマさんが転んだ
なんですよ。一度でいいから、折りたたまれた花びらを覆っている 「ツボミのカプセル」 が割れて落ちる瞬間というのを見てみたいんですね。
〓ポピーの花びらは、クシュクシュに小さく畳まれて、なんというか、ピーナツみたいな 「タテに2つに割れるカラ」 に納まっていますやね。内部の花びらが、吸い上げた水の力で広がろうとすると、カラ ── 専門用語では
“萼片” (がくへん) と言います ── がパカッと割れます。
〓でも、まだ割れただけ。割れ目から花びらの色が見える。「そうかそうか、これはオレンジか」 なんてね。
〓そんでもって、他の用事をしていて、ハッと気がつくと、2枚の萼片がいつの間にか床に落ちて、ポピーの花びらは、
羽化の途中のセミとかチョウのハネみたいに
クチャッとなっているが、時間とともにカジカンでいた花びらを広げてゆくんですね。
〓よう、まあ、あの萼片のカプセルの中で、形を間違えずに折りたたんだ花びらが作られるもんだと、つくづく感心するんですよ。自然の手品ではありますまいか。
〓そんなこんなで、いまだに、萼片が落ちる瞬間を目撃したことがないのですね。アイツら、ゼッタイ、こっちのようすをうかがっているのに違いないのだ。
【 「タイツ」 と 「パンティーストッキング」 は
何がちがうか? 】
〓今年は、
「カラータイツ」
+「ブーツ/ブーティ」
+「ミニスカート」
が流行ってませんか? ダンゼン多い、というワケではないですけど、例年は見かけない色のカラータイツが目につきます。「うんにゃ?」 と思う色ですよ。たとえば、
パープル
ボルドー
グリーン
みたいな色。ハデな色じゃないですけど、「彩度」 が高いので、ものすごく目につく。ふ〜ん、そういうのが流行ってるんだ、と。
〓
眞鍋かをり ネエサンのブログの一節に、なるほど、ということが書いてありましたんですよ。
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…………
毎日、起きて20分くらいで家を出るからさ、服考える時間とかナシ。
基本、ワンピース。んでカラータイツ。
衣装に着替える時とか、
スタイリストさんの前で必ずやる一発ネタがあります。
インナーに着てるタンクットップ一枚に
下はカラータイツ履いて
その恰好でさらに靴も履いて
。。。。
志茂田景樹!!!
、、、ヤングチーム、わからなかったらごめん。
クイズ年の差なんて!
↑(さらに古い)
でも最近さあ、カラータイツ流行りすぎて
どこ行ってもいい色が売り切れてるんですよねー。
大手百貨店ですら品薄状態。
たまにいい色見つけた!と思ったら、
超厚手の高いデニール数のものだったり。。。
…………
http://manabekawori.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_4b1c.html#more
※レイアウトのツゴウで文字組を変えさせていただきやした。
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〓ナ〜ルホロ。そういう感じなんれすね。
〓ところでね、昔から気になってるんですけど、
「タイツ」 と 「パンティーストッキング」 は何が違うんだろう
って。
〓
「パンティストッキング」 というコトバをつくったのは “アツギ” だそうです。1968年 (昭和43年) 6月に販売を開始しています。その年の12月、翌年の6月に、それぞれ、宮城県白石市と長崎県佐世保市に工場をつくっています。1971年には株式を上場。売れたんでしょうねえ。
〓1967年10月にツィギーが来日し、ミニスカート・ブームが起こっていますし、ホットパンツは 1971年から流行しています。どちらも “パンスト” が欠かせないですね。
〓つまり、それ以前には、「タイツ」 しかなかったんですよ。アッシが子どものころは、
冬場にスカートをはく女の子は、ウールのタイツをはいていた
のを覚えています。なんせ、そのころは、東京の冬も寒かった。まだ、霜柱が普通に見られたし、池には、毎日のように氷が張っていました。
〓しかしね、今どきの 「カラータイツ」 なんて見ていると、
「パンストと何がちがうんだろう?」
って思うわけですよ。当然のことながら、
“デニール” ── つまり、糸の太さが違うんではないか
と思ったわけです。
〓ところが、この推測が壁にブチ当たるワケですよ。
カラータイツ
30、40、50、60、70、75、80、110、120、150デニール
パンティーストッキング
5、8、13、15、19、20、22、25、30、35、40、45、50、
60、70、80、105、110、125、140、210、280デニール
〓ここでトホウにくれちゃった。
カラータイツの主流は 80デニール
パンストの主流は 15〜20デニール
だそうです。確かに、パンストのほうが、一般的に糸が細い。しかしだよ、カラータイツの糸の上限が 150デニールなのに、パンストには 280というサポートタイプまである。完全に、パンストのレンジの中に、カラータイツが包含されちゃってる。
「どういうことだ……?」
〓「デニール」 というのは、フランス語の
denier [ ドゥニ ' エ ] を借用したんだそうで、明治26年に初出例があります。「デニール」 という読み方は、denier をドイツ語式に読んだものと見えますね。英語では denier [ ' デニァ ] と読みます。単位の記号は
d。
〓「デニール」 の定義は、
9000メートルの糸が何グラムか
という数値だそうです。つまり、80デニールの糸ならば、9000メートルで80グラムということですね。
〓ということは、糸の作り方によっては、同じデニールでも、太さは違うことがあるんじゃないか……
〓で、わかったんですよ。
【 パンティーストッキング 】
糸が、ナイロンやポリウレタンからつくられた、
モノフィラメント
monofilament ── つまり、撚り糸 (よりいと) ではない ──
単体の繊維である、ということ。
【 タイツ 】
糸が、
マルチフィラメント multifilament ── 複数の繊維の撚り糸
── である、ということ。
〓それゆえに、両者の違いが、次のように出てくるのです。
【 パンティーストッキング 】
モノフィラメントで編んでいるために、透明であり、また、
ツヤがでる。また、サポート力も強い。
パンストは、業界では 「靴下」 に分類される。
【 タイツ 】
マルチフィラメントで編んでいるために、不透明 (オペーク)
であり、また、ツヤがない。また、サポート力も、パンストほど
強くすることがむずかしい。
タイツは、業界では 「衣類」 に分類される。
〓どうどす。明快でっしゃろ。なるほど、どんなに糸が太くても、一本糸だから透明なんですよ。タイツは、糸が細くても “撚り糸” であるわけです。
〓もちろん、パンストにせよ、タイツにせよ、それぞれの分野では、やはり、デニール数の小さい方が薄手であり、透ける度合いも高い、ということになります。
【 「パンティーストッキング」 は通じない 】
〓「パンティーストッキング」 というコトバは、先ほど書きましたように、アツギが考案したコトバです。和製英語ですね。英語圏で使ったら、おそらく、通じないでしょう。米国では
pantyhose [ ' パンティ , ホウズ ] と言わねばなりません。
【 米国 】
pantystocking 米国、英語限定 2,020件
panty stocking 米国、英語限定 5,950件
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pantyhose 米国、英語限定 1,100,100件
【 英国 】
pantystocking 英国限定 6件
panty stocking 英国限定 264件
────────────────────
pantyhose 英国限定 495,000件
※Google による。2007/12/27 現在。
〓米国は、一見、8,000件あるように見えますが、その多くが、日本人を含めた外国人の書いたもの、あるいは、和製英語について書いたものなどです。
〓英語の
hose 「ホーズ」 は、15世紀から使われている単語で、昔の西洋の男性がはいていた 「タイツ」 様のものを指していたコトバです。17世紀なかばには、そのファッションとともに廃れていたコトバですが、
パンストの形状が hose によく似ていたために、
pantyhose という形で復活した
のでしょう。
〓「パンスト」 が生まれる以前は、もっぱら、現代英語で
hose と言えば、「水を撒くのに使う水道のホース」 のことでした。また、古英語の時代からあった 「長靴下」 (= stocking ) の意味に使われることもあります。
〓ドイツ語を学んだヒトは、
die Hose [ ' ホーゼ ] ズボン (=[英] pants, trousers )
と似ていると思うでしょうが同源です。
〓現代英語で、デパートの売り場案内などに普通に使われる単語に、
hosiery [ ' ホウジャリー ] 靴下類
があります。
hose に、
jewelery 「ジュエリー」 などと同じく、“集合体” をあらわす
-ery が付いた単語ですね。「ソックス、ストッキング、パンスト」 などをひとくくりで呼ぶ名前です。
〓ところでですね、英国では、商品名などを別として、日常会話では、「パンスト」 のことも
tights 「タイツ」 と言います。
pantyhose とは言いません。
〓それどころか、英国では、
panties 「パンティ」 というコトバも口語では使わないんですよ。
knickers 「ニッカーズ」 と言います。日本語で 「ニッカボッカ」 として知られる
knickerbockers 「ニッカーボッカーズ」 の省略形です。
〓
knickerbocker というのは、そもそもが、オランダ語で 「オハジキ焼き職人」 という職業名でした。
knickerbacker 「オハジキ焼き職人」
↓
Knickerbocker オランダ人の姓
↓
Diedrich Knickerbocker 「ディードリック・ニッカーボッカー」
↓ ※ニューヨーク在住のオランダ系の友人の名前にちなんだ
↓ ワシントン・アーヴィングの最初のペンネーム
↓
knickerbockers 「ニッカーボッカーズ」
↓ ※オランダ系移民のはいていた独特の半ズボンを
↓ 指すコトバに転用された
↓
knickers 「ニッカーズ」。“ニッカーボッカーズ” の略
↓
knickers 「ニッカーズ」。“ブルーマーズ” ふうのズロースを指すコトバに転用
↓
knickers 「パンティ」 に転用
〓つまりですね、
【 パンスト 】
pantyhose 米国
tights 英国
【 パンティ 】
panties 米国
knickers 英国
となります。それゆえに、英国では、「パンスト」 と 「タイツ」 が区別できないんですね。すでに調べたとおり、「パンスト」 と 「タイツ」 のあいだには、モノフィラメントとマルチフィラメントの違いがあるわけですからして、もしかしたら、
英国人は、“パンスト” と “タイツ” の構造が
違っていることに、全然、気づいていないかもしれない
ですよ。
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