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2007年12月06日19:58

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「フィギュア・スケート」 は “図形スケート” のことだそうで。

    ▲運河で滑るオランダのスケート。
                       ▲ダッチロール。1795年。英国の絵画。
                                     コンパルソリーの審査▲



〓これは、先週の 「雑学王」 のネタです。ええ、正直言って驚きました。虚を突かれた。

   「フィギュア・スケート」 というのは、もともと、
   姿かたちの美しさを競う競技ではなく、

     氷の上に、いかに正確な図形を描けるか

   を競うものであった。


と言うんですよ。
〓道具としての 「スケート」 の起源は、必ずしも明確ではないようですが、現在の娯楽としての 「スケート」 の発祥の地は、オランダであるようです。なるほど、オランダでは網の目のように張りめぐらされた運河が、冬にはかっこうのスケートリンクになったのでした。
〓オランダでは、1500年ころに、現在のフィギュア・スケートで使われるような 「“外側” と “内側” にエッジを付けた、細身の金属のブレード」 が開発されて、

   初めて、人間が
     2本の脚だけで滑れるようになった


そうです。それまでは、長い棒を持ち、それで氷を押しながら前に進んでいたんだそうで!

   
フォト


   
フォト



〓この 「ダブル・エッジ」 のブレードで優雅な滑りが可能になり、オランダでは、英国人が “Dutch roll” 「オランダ式円運動」 と呼んだところの滑り方が流行りました。
〓すなわちですね、

  両手を前に組み、
  背筋をピンと伸ばし、
  片脚のアウトエッジで滑りながら、
  もう片方の脚は後ろに伸ばし、
  円を描きながら滑走する


というものだそうです。ナンとも優雅な滑りですね。

〓1985年 (昭和60年) 8月12日に起こった 「日本航空ジャンボ機墜落事故」 で、一躍有名になった 「ダッチロール」 という航空用語は、まさに、この16世紀に流行ったオランダのスケートスタイルを指すコトバです。
〓日本語で一般的に知られるようになったのは、この 1985年で、日本国語大辞典では、初出を 1985年8月15日の新聞としています。
〓英語では、航空用語としての初出は 1916年 (大正5年) です。ちょうど、第一次世界大戦の真っ最中ですね。

〓ま、それは置いておきまして。
〓英国人は、オランダ人の優雅な滑りである “ダッチロール” の妙なところに注目したようです。18世紀の半ばから後半に入るにしたがって、“ダッチロール” で円弧が描けることに注目し、

   氷の上に、「円」 だの 「8の字」 だのを描く
       figure skating

が盛んになり始めました。「フィギュア・スケーティング」 の最初の指導書が出版されたのは 1772年のことです。
〓ここで、だんだんと “figure” の意味がわかってきましたよね。

  【 figure 】
    (1) 形、形状。
    (2) 図、図表、図形。
    (3) 姿、人影。
    (4) 人物、大人物。
    (5) 数字、桁。

〓どうです。アタシら、「フィギュア・スケート」 と言えば、(3) の 「姿」 のことだと思ってしまいますよね。いかに美しい姿で滑るか。
〓だけれども、語源はまったく違っていたワケです。

   「形や図を描くスケート」
       → “フィギュア・スケート”

〓現代のアタシらが知っている 「フィギュア・スケート」 を最初にやって見せたのは、米国のスケーターであった、

   ジャクソン・ヘインズ Jackson Haines
     1840年(ニューヨーク)〜1875年(フィンランド)

でした。彼はバレエダンサーでもありました。当時、英国流の 「図形を描く、四角四面のフィギュア・スケート」 “English style” が主流であった時代に、彼は、初めて音楽を流して、それに合わせて、飛んだり跳ねたりという動きもまじえて、バレエ流の優雅な滑りを見せました。
〓しかし、米国では彼のスケートスタイルは支持されなかったため、ウィーンに渡り、そこで彼のスタイルを広めました。それは、“English style” に対して “International style” と呼ばれました。これが、今日のフィギュア・スケートの起源です。

〓そう言えばですよ、渡部絵美 (わたなべ えみ) 選手、伊藤みどり選手のころは、

   コンパルソリー

という競技が行われているのをTVで見た覚えがあります。まさに、氷上に 「8の字」 だの 「円」 だのを正確に描く地味な競技でした。
compulsory [ カン ' パるスリィ ] は、「義務的な、強制的な」 という意味の形容詞です。日本語では、「規定」 と呼んでましたね。これが、まさしく、“English style” の figure skating の残滓 (ざんし) でした。
〓そして、ジャクソン・ヘインズ流の “International style” は、「フリー・スケーティング」 としてフィギュア・スケートの競技に採り入れられていました。つまり、

   “English style” → 「コンパルソリー」
   “International style” → 「フリースケーティング」

ということですね。
〓今のフィギュア・スケート競技に 「コンパルソリー」 ってありますか? ないですね。1991年から 「コンパルソリー」 は廃止されたそうです。本来のフィギュア・スケートがすっかり消えたということですね。
〓そう言えばですよ、思い出したんですよ。伊藤みどり選手が、「コンパルソリー」 を苦手にしてたんですね。世界選手権では、いつも 「コンパルソリー」 で出遅れていたんですね。
〓それが 1991年からは廃止になった。1992年のアルベールビル・オリンピックで、伊藤みどり選手は、日本人フィギュア・スケーターで初の銀メダルを獲ってます。


〓ところでですね、毎度、書きますが、figure という単語の発音についてですよ。

   【 figure の発音 】
      米国では
      [ ' f I g j r ] [ ' フィギヤァ ] が正式とされる。ただし、
      [ ' f I g r ] [ ' フィガァ ] という発音もしばしば聞かれ、
        特に、動詞として使われる場合、これになりやすい。
      英国では
      [ ' f I g ] [ ' フィガ ] 常にこう発音される。

〓つまりですね、「フィギュア」 などという御丁寧な発音は、どこの国にも存在しないのです。まあ、語末の -r を発音するかどうかの違いは、英米音 全般の問題ですから置いておくとしましょう。
〓しかし、英国では常に 「フィガ」 であり、また、米国でも 「フィガァ」 と発音してよいのであって、むしろ、日本人が 「フィギュア」 と言ったら通じないであろう、と思われるのです。発音しやすい 「フィガ(ァ)」 でよいのですよ。


〓まだ、skate の語源が残っていますが、お長くなりますので、明日ということに。
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