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2026年10月26日20:48

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『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』感想

〜「野火」の塚本晋也が監督・脚本を手がけ、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンが自らの戦争体験と帰還後の葛藤をつづったノンフィクション書籍を原作に、“戦争加害者の傷”というテーマに取り組んだドラマ〜
〜ニューヨークの貧しい家庭に生まれたアフリカ系アメリカ人のアレン・ネルソンは、貧困や差別から抜け出すため18歳で海兵隊に入隊する。沖縄のキャンプ・ハンセンを経て、1966年にベトナム戦争の最前線へ送られた彼は、苛烈な戦場でただ人を殺すことを強いられ、命を奪う経験を重ねるうちに心の感覚を失っていく。やがて23歳で帰国した彼を待っていたのは、戦場の記憶に縛られる日々だった。大きな音や暗闇に怯え、家族との関係も崩壊しホームレスとなった彼は、絶望の淵へと追い込まれていく。退役軍人病院でカウンセリングを行うダニエルズ医師はそんな彼に真正面から向き合い、救い出そうとするから<映画.comさんより>

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そこそこ内容に触れていますので、未見の方はご注意下さい危険・警告

今作の大まかな流れ。
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冒頭、アレン・ネルソンは薄汚れた廃墟のような場所で暮らしている。
大きな音が聞こえるたびにパニック障害に陥る。

ネルソンは、現在は小学校の先生となっている、かつての同級生と再会。
「学校で戦争の体験談を話して」とお願いされる。
最初は断るのだが、ある時、引き受けることに。
子供たちからの質問タイム。無邪気な質問に場も和む。
しかし、ある女の子がタイトルとなっている質問を口にして、ネルソンは金縛りにあったようになってしまう。
「Mr. Nelson, Did You Kill People?」

その後、精神科医ダニエルズとのやり取りで、ネルソンの過去や戦場で起きたことが語られる。

アレン・ネルソンは、実の父を知らず、育ての父親は軍人だった。
その父親は母親に手をあげ、家庭内暴力を繰り返す。
また家には十分なお金がなく、アレンは貧困状況から抜け出そうと海兵隊入りを決める。

沖縄で訓練を終えたあと、ベトナム戦争最前線へ送られる。
そこでネルソンは、ベトコンのみならず、一般の人々をも殺し、彼らの家に火をつける。
帰国してPTSDに悩まされ・・・ダニエルズのもとに通っている。

戦場で若いベトコンを捕まえた時、その男が放った言葉がネルソンに響く。
「なぜ他の国に来て我々を殺すんだ?黒人だろ?自分の国で戦え」

ダニエルズは聞く「どうして人を殺してしまったんだ?」
ネルソン「戦場だぞ。やらないとやられる」
ダニエルズは何度も聞く「どうして人を殺してしまったんだ?」
ネルソンはそのうち、言葉に詰まるようになる。
ダニエルズはまだ聞いている「どうして人を殺してしまったんだ?」
しばしの沈黙のあとネルソンは答える「殺したかったから」
それは、ダニエルズの幼い頃の家庭環境と関係があったと思われ・・・。

ネルソンは子連れのリンダという女性と結婚。
ある時、息子のショーンは、学校から、海兵隊の入隊案内の小冊子をもらってくる。
ネルソンは驚きと怒りを隠せず、すぐさま学校に向かう。
すると校長から「生徒たちに戦争の体験談を話してみては?」と提案される。
ショーンは「頼むから来ないでくれ」と願うが、ネルソンは悩みながらも、後日、学校に向かう。

学校の教室。ネルソンが話し始めるが、声はミュートされていて観客には聞こえない。
生徒たちは、最初、まるで聞く耳をもたない。それでもネルソンは必死に語り続ける。
やがて生徒たちの表情は真剣そのものへと変わっていく。
(背景に流れるBGMや効果音でも、生徒たちの変化が伝えられる)

ネルソンとリンダ、そして娘がいるところに、ショーンが帰ってくる。
緊迫感が漂う。ショーンがネルソンのところにやってくる。ドキドキ。
ショーンはネルソンの背後に立ち、ネルソンの肩に優しく手を置く。その手を握るネルソン。
上手いよ〜、塚本監督!ここは泣いちゃったよ涙

ネルソンにはずっと不安だったことがあって。
それは、自分のショーンに対しての接し方は、自分の父親そっくりなのではないか?と。
自分とショーンは血がつながっていない。自分と父親もそうだった。
血の繋がりはないものの、父親が暴力を振るっていたように、自分もショーンに同じことをしている?
だが、ショーンが信頼を込めて、歩み寄ってくれた。ネルソンは一歩、前に進めた。

※予告編
https://youtu.be/sWVQpnno3BQ?si=Lc9vFWj2d3johoPn

今作はBGMや効果音の役割が重要ゆえ、観るなら絶対劇場観賞だと思う。

主演のロドニー・ヒックスが素晴らしく、ずっと彼の表情に見入ってしまう。
かつて『シャイン』で精神を病む天才ピアニスト役だったジェフリー・ラッシュが、今作ではPTSDに悩まされるネルソンさんのカウンセラー役。

終盤の展開にはビックリ。
ネルソンさんはいろんな場所で戦争体験を語っていた。日本だけでも1200回以上!
そして日本のあと、なんとベトナムで講演をするという展開。マジか。
その手伝いをしたのが、日本人の黒井(リリー・フランキー)
この黒井の父親にも過去があり・・・。
黒井が舞台のネルソンさんを見つめる表情は、全ての観客の気持ちを代弁していたと思う。
講演でベトナム側がネルソンさんに期待していたのは、穏やかな友好の架け橋の役割。
だが、ネルソンさんがやろうとしたのは戦場で体験した全てを話すという衝撃的なもの。
話す方もしんどいだろうが、聞かされる方も相当しんどい。
それでも、ネルソンさんは’友好’という生易しいやり方では意味がないと思ったのだ。
本当に心から繋がるためには・・・。

総評:衝撃的な作品でした。
とことんリアルに、そして、とことん戦争と向き合うという塚本監督の姿勢。
ここまでやらなければ(描かなければ)、撮る意味がない。そういう覚悟が伝わってきました。
劇場では大きなバッグを抱えたお客さんもいました。おそらく遠方から来られたのかと。
もう少し上映劇場が増えればいいとは思うのですが、とりあえず製作のバックアップをしたという木下グループ/キノフィルムズには感謝しなければいけないと思いました。
どうかご覧下さい。今年を代表する邦画の1本だと思います。4.5☆

追加:ネルソンさんはすでに亡くなられているのですが、彼のお墓はなんと私の故郷の石川県にあるお寺に納められていることを知りビックリ。
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