これは、2020年に韓国で同題の映画も公開された、曽根圭介の同題小説を城定秀夫が映画化したクライム・サスペンス。
出演は、鈴鹿央士、成宮寛貴、森七菜、MEGUMI、二ノ宮隆太郎など。
認知症の祖母と2人暮らしの大学生・佐藤寛治は、ある日、バイト先のネットカフェで客が忘れていったバックを確認……中に1億円の現金を見つけて動転する。
その1億円は、大企業相手の詐欺師の逃走資金だったが、その詐欺師の同級生で、借金に追われるヤサグレ刑事、資金難で現金が欲しいヤクザ組長、その元情婦の謎めいた女“し〜な”、ワケあり人妻デリヘル嬢と、その得意客に、本庁捜査官までが入り乱れる現金争奪戦が繰り広げられて……
冒頭、東映のロゴマークを粉砕して飛び出して来るクルマにびっくりさせられるが、これがクライマックスの伏線。
物語は、主人公の佐藤が動画撮影をしている最中、乱闘騒ぎに巻き込まれてカメラを壊されるシーンに始まり、その佐藤が、バックに入った1億円を見つけてしまった事から騒動に巻き込まれて行く――物語は、そこから少し時間を遡り、それぞれの理由で金に困り、追い詰められている男と女を描いて行く。
登場人物は多いし、時制も遡ったり先に飛ばしたりと、かなり複雑、と言うか煩雑な構成なのだが、それをテンポよく、しかも、それぞれ面白くてインパクトの強いシチュエイションを作って見せるので、疑問を覚える間もなく勢いで見せてしまう、この語り口は巧みだし、なによりも面白い。そして、バックの1億円の視点で、ジッパーの開閉を場面展開に使う、と言うアイデアも優れものだ。
キャスティングはなかなか意欲的で、監督曰く「峰不二子のような」謎の女役に森七菜を宛て、DVに苦しむ借金苦の主婦にMEGUMIを宛てる(これまでのイメージなら逆の配役だろう)のにはびっくりだったし、こんなにMEGUMIが困り顔をするなんて、と言う意外性もあった。また、他にも、久々の映画出演の成宮寛貴がいい味を出しているし、便利に走り回される下っ端ヤクザ役の二ノ宮隆太郎も印象的。
そして、クライマックスとなるのは、何と閉館した丸の内TOEIを舞台とした大立ち回り――冒頭の粉砕される東映マークはこれだったのだ。そのまま、クルマが映画上映中の劇場に飛び込み、そこから上映中の映画を背景にしたドツキ合いとなる――この時、上映されていたのが「仁義なき戦い」。恐らく丸の内TOEIのスクリーンが最後に映したのが菅原文太だ、と言うのにも感慨深いし、繰り広げられるアクションよりもスクリーンの中の菅原文太に視線が行ってしまうのも仕方のない事だろう。
原作の主人公は中年男(だから認知症なのは祖母ではなく、母親)だが、本作は、それを大学生にしたアレンジも効いていて、小説版に近い韓国での映画版よりも、本作のラストの方が笑えて、希望の持てるものとなっている感じ。韓国版も面白かったが、後味は本作の方がよかった。
ログインしてコメントを確認・投稿する