これは、1977年に実際に起きた人質籠城籠城事件を、ガス・ヴァン・サント監督が映画化したクライム・サスペンス。原作は事件についてのドキュメンタリー映画「デッドマンズ・ライン」。
主演は、「IT/イット」シリーズのビル・スカルスガルド。共演は、デイカー・モンゴメリー、そして名優アル・パチーノ。
1977年2月、インディアナポリス。不動産投資会社メリディアン・モーゲージ社の顧客だったトニー・キリシスが、社長の息子で重役のリチャード”ディック”・ホールを人質にとって籠城する――トニーはワイヤーで散弾銃をディックの首に繋ぎ、銃の引金を自分の身体と結びつけた。トニーが取り押さえられたり倒れたりすれば、自動的に散弾銃が発砲され、ディックの頭が吹き飛ぶ“デッドマンズ・ワイヤー”と呼ばれる仕掛けだ。
現場に駆け付けた警官も、これでは手出しができない。トニーはパトカーを奪うと、警察や報道陣を引き連れて自宅アパートに戻って再度籠城……そして、トニーはメリディアン・モーゲージ社によって土地を失い、事業に失敗したと主張。謝罪と補償を訴え、それがメディアに取り上げられて、世間はトニーに同情するようになって行くのだが……
本作は、実際の事件に基づくサスペンスで、事件の特殊性もあって、序盤からトニーのアパートに移動するまでは、興味深く観た――一丁の散弾銃とワイヤーを使った仕掛けだけで、包囲する警官に手出しをさせない、と言う、不謹慎な痛快さもあるし、何より、トニーの動機と、そしてどのような決着を求めているのかにも関心が向く。
また、特筆すべきは、当時の再現度合い……これは自分が幼い頃に観た、粗いTVの映像そのままで、実際の記録映像も取り混ぜているのだろう、と思っていたら、これが全部撮り下ろしたもの、と言うのには驚いた。映画エンドロールで、原作のドキュメンタリーが使った当時の本当の映像が出るので判るのだが、これは大変な事をやっていると感心した。
ただ、舞台がトニーのアパートに移り、広げた風呂敷を畳み始めた所から物語は失速して行く――確かに、その狙いは判る……ワイヤーで繋がれたトニーとディック、血の繋がりのあるホール親子、これが見事にすれ違い、ディスコミュニケーション状態となってしまう。その一方で、ラジオの向こうのパーソナリティや聴取者には共感が得られる、と言う皮肉……こうした“犯罪者”と“被害者”、そしてメディアで繋がった“傍観者”の関係を問い質す……それは、確かにガス・ヴァン・サント監督らしいものであるかも知れない。だが、その一方で、今ひとつ掴み切れず、心動かされる事もなかった、と言うのが正直な所だ。
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