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2026年06月27日15:18

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「マジカル・シークレット・ツアー」感想

 これは、2017年に起きた主婦による金密輸事件から生まれたサスペンス。
 出演は、「ブラック・ショーマン」の有村架純、「アイミタガイ」の黒木華、「万事快調 オールグリーンズ」の南沙良。監督・脚本は、「佐藤さんと佐藤さん」の天野千尋。
 
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 二児の母・和歌子の日常は、ある日突然夫の高志が脳内出血で倒れた事で呆気なく崩壊する。和歌子は知らなかったが。高志は横領で勤め先を解雇されており、借金も抱えていた。実家でも父が倒れ、家業の工場は閉鎖の危機――誰も頼れない絶体絶命の危機の中、和歌子は「割のいい仕事」に惹かれ、怪しげな仕事に関わる事になる……それは、金の密輸だった。
 シンガポールに向かう、“金塊密輸ツアー”に参加していた、崖っぷち研究員の清恵、未婚の妊婦でキャバ嬢の麻由と意気投合した和歌子は、見様見真似で自分たちだけで金の密輸に手を出すのだが……
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 この映画、題材的にはクライム・サスペンスになりそうなものだが、東京税関全面協力、と言う事もあって、肝心の“密輸ビジネス”の詳細は描写されない――為替と消費税制度を悪用した金密輸は未だに摘発例のある犯罪だけに、さすがに描く事は出来なかったか……
 また、物語自体も、登場人物造形を始め、殆どフィクションだ。そして、その物語は“犯罪”よりも、その背景……この国での女性の生き辛さと、ひとつ間違えれば奈落の底へ転落する社会の余裕のなさを丁寧に描いて行く……和歌子、清恵、麻由の三者三様の生き辛さ、そして、生活の閉塞感を、事細かく精密に描写するエピソードには胸が痛くなる。そして、この映画は、女性が直面する先入観や思い込みからのディスコミュニケーションを描いているのにも着目だろう――彼女たちの存在を認め、「誰も私の言葉を聞いてくれない」と言う不満を解消していれば、彼女たちは犯罪に手を染める事はなったのだから――こうした積み上げがあってこそ、そんな日本を離れてのシンガポールでの彼女たちの生き生きとした表情で描かれる開放感に共鳴してしまうのだ。
 
 勿論、これは犯罪映画であり、摘発側の税関が製作側にいるせいもあってハッピーエンドにはなり得ない映画ではある。だがこれは、彼女たちを縛り付けていたものからの解放を描く物語であり、「今から10年前」と言う時代設定から、主人公らに対しては強く懲罰的ではない(和歌子も消費税差額を納めれば解放され、金塊も返却されたはず)せいもあって、後味は決して悪くない映画だった。


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