これは、イギリスの人気ポップシンガー、チャーリーxcxが自ら発案、本人主演で、自身のアルバル「brat」をヒットさせた後に何が起きたのかを描くモキュメンタリー。
共演は、アレクサンダー・スカルスガルド、ロザンナ・アークエットに加え、カイリー・ジェンナーらチャーリーxcxの知人セレブが本人役で出演している。
監督は、チャーリーxcxのミュージックビデオを手がけてきたエイダン・ザミリ。
チャーリーxcxが、アルバム「brat」を大ヒットさせ、“ブラット・サマー”と呼ばれる社会現象を巻き起こしてから数ヶ月後……チャーリーは、変わらず自分らしさを追い求めていたが、所属するレーベルは“ブラット・サマー・フォーエバー”を合言葉に、このムーブメントを延命させようとしていた。
そんな中、Amazon musicの出資で「ブラット」のライブ映像配信のプロジェクトが始動する。レーベルが起用した大物演出家は、チャーリーの表現に理解を示さず、彼女を“ベタなスター像”へと押し込めて行く。
一方、レーベルは銀行とタイアップして、「brat」のクレジットカードの大規模キャンペーンを展開して……
2024年6月にリリースされたチャーリーxcxのアルバム「brat」は、欧米で大ヒットとなり、米大統領選ではカマラ・ハリス候補が「brat」のイメージカラーのグリーンを使い、自ら「brat(生意気な女)」を名乗るなど話題となった。
本作は、その「brat」のキャンペーンフィルムとして企画されたのだが、それに自ら発案して、この内容をぶつけて来る辺り、チャーリーxcxの癖の強さが伺える。
そんなチャーリーxcxは、欧米での人気に対し、日本では注目されておらず“日本に呼べないスター”の代表なのだそう……本作についても、日本公開は危ぶまれていたが、小規模とは言え、劇場公開に漕ぎつけられたのは、やはりA24製作作品である所以だろうか?
映画内容は、個性あるアーティストが、商業的に成功した後に受けるストレスと、それに如何に対峙して行くか、を描くものとなる――レーベルからの圧力、マネージャーの曖昧で日和見な対応、休憩中に押し込まれるSNSのコメント収録、“ベタなスターの型”を強要される等、商業化が、如何にアーティストの才能を削って行くかをまざまざと描くのだ。
それでも、成功したアーティストは、マイクを握り、ステージに立たねばならない、と言う現実を描いて、「成功」のその後を描く内容には見応えがあったし、「Amazon」を始め、実名をバンバン出してしまう(さすがにレーベルはボヤかされているが)挑戦的な作風であり、音楽業界で“ビジネス”をする人間が如何に愚かで滑稽か、と言う事を露悪的に描く本作は、本国では爆笑を呼んだ、と言う。
気になったのは、描かれるアーティストのストレスとなるエピソードが概ね想定内に収まる事と、それに対峙するチャーリーxcxの気持ちが掴みづらい事――モキュメンタリー作風の本作では、出演者のモノローグを入れるなどせず、作風としてもナレーションなど解説もない……しかも、現代の若者向けに展開が非常に速いので、気持ちを汲む余裕がないのだ。
ビートを強調する音楽、強烈な光の点滅など、クラブカルチャーに馴染のない高齢者には厳しい内容ではあるが、アーティスト本人が製作に関わる異色の音楽映画として、これはなかなか面白い取り組みだと思う。
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