これは、魚豊のデビュー作である同題漫画を「音楽」の岩井澤健治監督が劇場アニメ化し、2025年に公開されるやロングランヒットとなった「ひゃくえむ。」のメイキングドキュメンタリー。
構成・編集は映画本編で、実写映像撮影を手掛けた宮崎歩。
本作は映画「ひゃくえむ。」のクランクインから、完成までの約4年間の製作過程を記録したものとなる。
その中で、映画「ひゃくえむ。」の特色である、「ロトスコープ(Rotoscoping)撮影」など、異色の製作過程が明らかにされて行く。
本作は、所謂“メイキング映像”であり、本来であれば、映像ソフトが販売される際の特典としてサービスされるようなものではあるけれど、最近では、DVDなどの映像ソフト販売よりも、配信が主となり、そうした特典映像が観られる機会が減ったからこその劇場公開だろうか?
そんな穿った見方もしてしまったが、予告編を観た所、これは非常に興味深い内容が含まれており、何とか都合をつけて劇場に足を運んだ次第。
その内容は、やはり「ロトスコープ撮影」だ。これは、実写で撮影した映像を1フレームずつトレースして手書きの絵とし、それを連ねてアニメーションとする制作手法となる。
本作では、いきなり、その実写撮影シーンから入るのだが、これがちょっと意表を突かれるもの――演者の動きをコンピューターが記録するモーションキャプチャーとは違い、人がトレースする必要から、演者は衣装や髪型を合わせる一方、別に背景美術で描く部分はおざなりで、ドアを開けるシーンなどでは、ドア自体は段ボールそのままだったりする。また、光源や色調も、絵で描く時に調整出来るから無頓着にどんどん撮影を進めて行き、日によっては、1日で150カットを撮影していたりするのだ。
ただ、背景まで全部手書きでやった、中盤のクライマックスとなる高校総体での決勝シーンは、まるで実写映画のように背景となる会場、機材や人物まで全部整えていたが、これとてどしゃぶりの雨のシーンを晴天下撮影している訳で、これで出来る、と言うのは面白い手法だ、と感心した。
結果としては、3分半をワンカットでオール手書きの高校総体での決勝シーンに一番手間と時間がかかった、と言うが、岩井澤監督自らペンを握り、背景まで動画で描いて行くのを見ると納得――CGは確かに、アニメ製作を省力化し、そのクオリティを引き上げたが、それでも「絵が動く」と言うアニメの原点に立ち戻って、1枚1枚手書きで仕上げる、製作陣には頭が下がる。
また、本作は、そうして描いたアニメを、元の実写映像と並べて比較し、その差異を明確に示すのだが、それにより見えて来る、アニメとしてのアレンジや演出には唸らされたし、描き込まれた背景を、一旦コンピュ−ターに取り込んで色調調整するなど、普段余り見かけない製作過程をも示し、そこも興味深いものがあった。
先に書いたように、本作は、よくある“特典映像”的な内容ではある。然しながら、映像ソフト販売も廃れている現状ならばこそ、こうしたメイキング映像を、他の映画でも観てみたい、と思える充実の内容。これは面白かったし、本作を踏まえて、もう1度「ひゃくえむ。」を観たくなった。
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