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2026年05月01日13:30

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「ハムネット」感想

 これは、「ノマドランド」のクロエ・ジャオが、シェイクスピアの名作「ハムレット」誕生の裏に秘められたドラマを描くもの。
 出演は、ジェシー・バックリー、ポール・メスカル。尚、ジェシー・バックリーは、本作で2025年度のアカデミー賞・主演女優賞を受賞している。

 16世紀末、イングランドの小さな村、ストラトフォード村で、皮手袋屋の息子として生まれたウィルは、家業の他に、村の子供たちに語学を教えていた。
 ある日、教室の窓辺から見かけた鷹を操る女性アグネスに心惹かれ、やがて恋に落ちた2人は、両家の反対を押し切って結婚する。
 やがて、ウィルは劇作家として成功を掴むため、単身ロンドンへ出稼ぎに行くようになる。2人の間には、長女スザンナ、そして、双子の長男ハムネットと次女ジュディスが生まれる。それは、つつましくも幸せな日々だった。だが、ロンドンがペスト禍に見舞われ、村でも感染者が出るようになる。そして、一家には大きな不幸が降りかかって……

 この映画は、劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの伝記映画と言う事になるが、内容としては“劇作家”としてのシェイクスピアではなく、今で言う“コミュ障”の青年、ウィルと家族、特に妻・アグネスに重きを置いた物語、としている所に特色がある。
 シェイクスピアの妻――本作ではアグネス、実際は、アン・ハサウェイ――は、評価の分かれる女性で、悪妻であった、あるいは、古の習わしや伝承などを伝えた賢妻だった、とも言われており、本作の原作小説であるマギー・オファーレルの同題小説も、その説を採っている。
 ウィルより8つ年上、村人に馴染まず、森に入っては鷹を手懐け、薬草を採取するアグネスは、当時の欧州では“魔女”と言われても仕方ない人物――ペスト禍の際、よくもまぁ魔女裁判にかけられなかったものだ――であり、「マクベス」の魔女像や、魔術描写にリアリティを与えたのだろう、と……

 映画は前半、アグネスとウィル、そして3人の子供たちからなる家族の成り立ちを丁寧に描いて、そこから急転直下の悲劇に至る――突然の悲劇……だが、そこに夫・ウィルは居なかった、それがアグネスの怒りを一気に噴出させる……双子の誕生の際にも、三人の子供を抱えた子育ての苦労の日々にも、ウィルは居なかったから。
 それは、突然の悲劇に対する、アグネスの感情の行き先だったのだろう……そして、映画は、そのアグネスの怒りに寄り添いながら、圧巻のクライマックスを迎えるのだ。

 それは、悲劇「ハムレット」の初演。
 冒頭に語られるように、当時、“ハムレット”と�爛魯爛優奪函匹脇碓佞任△襦△箸気譴討い拭宗祝瓦�した息子の名前を語る悲劇の中で、ウィルの悲しみと苦しみが語られ、そして舞台の上で形を成して、人々の心に共感を広げて行く……
 アグネスは理解する――死別も、悲しみも、自分だけのものではなかったのだ、と――このドラマチックなパラダイムシフトを殆ど台詞無し、表情だけで見せたジェシー・バックリーの凄まじいまでの演技は正に圧巻……上手い、むしろ上手過ぎる。アカデミー賞受賞にも納得だろう。

 これは、家族が直面した生と死、そして、喪失を受け入れる為の“葬送”の物語であり、同時に、“物語”の力を見せる物語でもある――ハムネットの死と悲しみは、「ハムレット」によって永遠に“生きる”事になったのだ。
 圧巻の舞台は、“物語”と“演技”の力と可能性を見せつけるものになった、そう思えてならない。
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