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2026年04月25日14:30

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「決断するとき」感想

 これは、クレア・キーガンによる史実に基づいた小説「ほんのささやかなこと」を、「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィー主演で映画化したもの。
 製作にはベン・アフレック、マット・デイモンに加え、原作に深く惚れ込んだキリアン・マーフィーが名を連ねる。監督はNETFLIX映画「ヴィル」のティム・ミーランツ。
 尚、共演のエミリー・ワトソンは、本作でベルリン国際映画祭助演俳優賞を受賞している。

 フォト

 1985年、アイルランド。小さな町の石炭商人のビル・ファーロングは、妻と5人の娘の家族で慎ましく暮らしている。
 クリスマスが近づくある日、ビルは石炭を届けに訪れた地元の修道院で、寒空の下で部屋着のまま石炭庫に閉じ込められた少女を見つけて保護する。その少女から「ここから出してほしい」と懇願された彼は、若い女性たちが理不尽に閉じ込められた修道院の“洗濯所”で苦しんでいると言う現実と向き合うことになり、ビルは、良心の呵責に苦しむ事になる。そして、彼がひとり下す決断とは……

 この映画が描く、「マグダレン洗濯所」とは、妊娠した少女や、身寄りのない女性など、教会の価値観から“好ましくない”とされた女性を「保護する」名目で、修道院の付属施設に閉じ込め、軍服の洗濯や修繕などの労働に強制的に従事にさせていた、と言うもの。
 これまで私はその存在を知らず、粗筋を知った時にも「19世紀末くらいの話か?」と思ったのだが、洗濯所はアイルランドに1992年まで存在していた、と知って、意外に思った。

 映画は、その“洗濯所”を生み出した教会の価値観が、如何にして弱い人間を踏みにじるのかを描いて行く……この映画での支配者は“教会”だが、それを“国”や“組織”に置き換えれば、これが普遍的な物語だ、と言うのが判るだろう。その強権的な支配を生むものが、悪意でも恐怖でもなく、ある価値観が生み出した“正義”である時、人間は如何なる残酷な事も出来るようになるのだ。
 これは、そうした社会に存在する支配の構造を知り、その歪みに気づいてしまった人間が悩む苦悩を描くものとなる。
 勿論、それまで通りにしていれば、恐らく自分には影響がない事であろうとも、気づいてしまったら、それはもう苦しみを生むものでしかなくなってしまうのだ。

 この映画は、そうした気づきと苦悩を描く。だが、その描写は余りに寡黙……その中で、判り易いのが「手を洗う」描写だ。ビルは仕事で汚れた手を洗ってから家族に接し、食事をとる。だが、社会の歪みと汚れに気づいてしまったら?――それは、決して洗い流せず、家と、大切な家族を汚すものになってしまうのだ……

 映画は、最後に、ビルの決断に至る。それはビルの魂の救済にはなる……しかし、その選択は彼とその家族にとって決して望ましいものではないだろう。なにしろ、アイルランドで最後の洗濯所が閉鎖されるのは、まだ先の1992年の事になるのだから……
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