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2026年03月09日06:14

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「レンタル・ファミリー」感想

 これは、デビュー作「37セカンズ」で注目されたHIKARI監督の新作で、全編を日本で撮影しているがアメリカ映画となる。
 主演は、「ザ・ホエール」でアカデミー主演男優賞のブレンダン・フレイザー。共演は、平岳大、柄本明、ゴーマンシャノン眞陽。
フォト


 アメリカ人俳優のフィリップは、日本でのCM出演で人気となったのをきっかけに日本に移住したが、その後は鳴かず飛ばず、今や。オーディション会場を渡り歩く日々が続いていた。
 そんなある日、フィリップは飛び込みで葬儀参列者のエキストラを引き受けたのをきっかけに、「レンタル・ファミリー」社の多田から仕事を依頼される。その「レンタル・ファミリー」は、依頼人の“家族”や“友人”など、親しい人物を演じることで報酬を得るサービスを生業としていた。
 戸惑うフィリップだが、シングルマザー家庭の少女・美亜の“父親”となるうち、フィリップの心の中に変化が生まれて……

 この映画、“レンタル・ファミリー”と言う“サービス業”(知らなかったけど実在するのだとか)に飛び込んだ男を巡るあれこれを描く、日本型の喜劇によく見られる“巻き込まれ型”コメディ。それを、アメリカ映画でやっている、と言うのが目新しい所だろうか。 
 ブレンダン・フレイザーは、「ホエール」でも見せた、優し気で、そして寂しげな目の表情がいい。日本に長く暮らしている、と言う設定も相まって、フィリップを、こうした映画によくある異文化への案内人としていないのも面白い立ち位置だ。まぁ、これには、HIKARI監督、映画の作りとしてはアメリカ映画でありながら、日本人らしく日本文化をエキゾチックなものには描かず、特別感を出していない、と言う事もあるように思うが……

 キャストとしては、そんなブレンダン・フレイザーがさすがの存在感を見せるが、柄本明の名演、そして、気のいいデリヘル嬢を演じた安藤玉恵も印象に残った。

 物語としては、基本、人情喜劇であり、何かの欠落を埋める為に“レンタル・ファミリー”を利用する人々に対し、フィリップがどのような欠片になるかを描いて行くものとなる。これは面白いアプローチで、売れない役者のフィリップの悪戦苦闘を通して、演じるとは何か、そして生きるとは何かを問うのは哲学的とさえ言えるもの……ラストシーン、神社の本殿に祀られたご神体を目にしたフィリップを通し、その答えがさらり、と出されているのは小気味のいい締め括りと言っていいだろう。
 その一方で、タイトルにもなっている“ファミリー(家族)”のあり様について、本作はエピソードを盛り込み過ぎた感もあり、細部の詰めが甘く、内容も掘り下げられずに表面をなぞるだけになってしまうのが勿体ない。これならエピソード思い切って刈り込んで、より深く描いて欲しかったように思う。
 そして、それ以上に気になったのが、この“レンタル・ファミリー”と言う生業そのものが、法的・倫理的に問題があり過ぎで、かなり厳しく運営しないと本当によろしくない事になりそうなのに、映画内では緩く描いてしまっているのはさすがにダメだろう――一例を挙げると、問題を起こしてしまった後、訴追逃れの為に、(業務を超えての事とは言え)弁護士や警察官になりすまして客を訪問するなど、これはもう詐欺そのものなのだ。(まぁ、実はこれには笑ってしまったのだけど)

 本作は“心温まる人情喜劇”の体を取り、主人公フィリップの人生を見つめ直す、見応えのあるドラマでもある。然しながら、その内容は危うさを孕んだものであり、しかも、その事について製作陣があまりにも無自覚である事が鑑賞後に気になってしまった。
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