これは、「機動戦士ガンダム」の富野由悠季による小説「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」を三部作のアニメ映画で描くシリーズの第2作。
声の出演は「好きでも嫌いなあまのじゃく」の小野賢章、「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」の上田麗奈、それに諏訪部順一。監督は前作に続いて村瀬修功が務める。
宇宙世紀0105年。地球連邦政府に対し、反体制運動を続ける反地球連邦政府運動「マフティー」。そのリーダーは、アムロ・レイと共に一年戦争を戦ったブライト・ノアの息子、ハサウェイ・ノアだった。
ハサウェイは、不思議な力を持つ少女ギギ・アンダルシアに“シャアの反乱”時におけるトラウマを刺激され、その存在に翻弄されながらも、マフティーとしての目的であるアデレード会議襲撃の準備を進めていた。
一方、連邦軍のケネス・スレッグ大佐は、自ら立案したアデレード会議の支援作戦においてマフティーを誘引、その殲滅を目論むが……
本シリーズが目指しているのは、大人の鑑賞に応える、可能な限りリアルな「ガンダム」と言う事になるだろうか。
恩田尚之による劇画タッチのキャラクターに、カトキハジメらによる現実の兵器を参考にしたメカ設定、それにより兵器としてのリアリティを高めたモビルスーツ……物語の方も、原作小説の“トミノ節”の台詞を活かしながら、奥行きと現実味のある台詞回しにより、まるで実写映画のようなリアリティを持つに至っている。
そんな世界観故に、ファースト「ガンダム」の四半世紀後、と言う時代設定ながら、現実の延長のような設定を見せられると、何だか時代が逆行しているのでは、とも思ってしまうのだが……
また、映画後半に繰り広げられるモビルスーツ戦は、リアルさとエンターテイメントをギリギリで成立させた描写だろう……1年戦争後のモビルスーツで常識化した全方位ディスプレイによるコックピットの様子や、そのモニター表示などもこれは間違いなく現在のロボットアニメとして最高水準にある。ミノフスキー粒子による電波攪乱が常識化している世界故、モビルスーツのような大型兵器を使った戦闘は、夜間や薄暮状態となる……前作では暗くてよく判らなかったシーンもあったが、本作でも、リアルさを優先して暗いものは暗く、決して判り易く描くつもりはないらしい。
また、戦闘の様子を発砲炎と曳光弾、そして爆発の遠景だけで描くなど、そのリアルさ追求には舌を巻いた、
その一方、リアルに“戦争”を描いたら避けられない、暴力と死の描写からも逃げていない。ロボットアニメ故にレイティング指定を受ける訳には行かないが、それでも、死体が転がり、敵の拠点制圧後に味方の捕虜がどうなったかを説明する事で戦争の暴力性を示す描写は、「ガンダム」シリーズの中でも、これまでになかったものだろう。
物語は、「ガンダム」ならではの“ニュータイプ”から距離を取り、地球連邦政府と反体制組織の抗争を描いた前作の延長線上にある。
然しながら、「政府の腐敗による強権化と市民弾圧」、「権力者の横暴による環境悪化」、「格差社会と、被差別民の強制移住による”浄化”」「政府有力者の暗殺による状況変化を狙うテロ」……と、まるでその後の世界に起きた予言にも思える社会情勢を描いて見せた前作に比べると、そうした社会全体を描く事が後退した一方で、ギギのニュータイプとしての“覚醒”と、ハサウェイのトラウマとの対峙を見せるなどして、漸く「ガンダム」らしくなって来た、と言う感はある――それにしても、本作のニュータイプの”覚醒”だか、拡大した知覚が個人の残留思念に縛られる……と言うのは、最早、”呪い”でしかないのでは、と思ってしまった。いや、それどころか、正に”ニュータイプ”自体が、「ガンダム」シリーズにかけられた呪いなのかも知れないのだが……
シリーズ完結となる次回には期待しかないが、前作からここまで5年以上かかった事を考えると、次は何時になることやら……
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