これは、ペントハウス誌の創設者ボブ・グッチョーネが製作し、過激な性描写で物議を醸した1980年の映画「カリギュラ」を、発掘された未公開映像を用いて再編集したもの。
紀元一世紀前半、ローマ帝国第二代皇帝ティベリウスは、晩年に至り、異常性癖を露わにし、堕落した日々を過ごしていた。
皇帝の孫に当たるカリギュラは、曾孫を皇位につけるべく画策するティベリウスによる暗殺に怯えていた。だが、彼は、生き残りを賭けて病床に臥せたティベリウスを親衛隊長マクロと共に暗殺、第三代ローマ皇帝となる。
カリギュラは、実妹で愛人のドルシラと共に帝国の建て直しを図る。やがて、世継ぎを得るためにカエソニアという淫乱女を妻に迎えるが……
この映画、主演が「時計じかけのオレンジ」のマルコム・マクダウェル、共演に「クィーン」のヘレン・ミレン、「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールと、結構な豪華キャストとなっている。更に、オーソン・ウェルズや、マリア・シュナイダー、キャサリン・ロスにもオファーがあった、と言うから驚き……よくもまぁ、こんな内容の映画に、と……
映画「カリギュラ」、自分は1980年版を鑑賞、ノベライズ版の小説も読んでいる。そして、数十年ぶりに観た「カリギュラ」だが、記憶に残るものよりも、ちゃんと歴史ドラマになっていた、と言う印象。
今回の究極版は、公開当時問題となったポルノシーンを省き、代わりに発掘した撮影素材を加えて、オリジナル脚本を手掛けたティント・ブラス版に近づけたせいでもあるのだろう。確かにポルノフィルム的な要素も強いが、本筋に関係のないポルノシーンをカットしたせいもあり、その過激さとエロティックは今となっては衝撃を受ける程のものでもない。と言えるだろう――まぁ、それでも、よくもまぁ、この無修正公開を映倫も認めたもの、とは思うが。
本作の特徴は、全体的にまるで舞台劇のようである事……舞台俳優を起用したから、と言う部分も一因ではあろうが、屋外シーンが殆どなく、ほぼセット撮影だった本作の、そのセット自体がまるで舞台のセットそのままなのだ。前半で印象的なティベリウスの別邸など、カメラが引くと正に舞台セットだと判る……勿論、そこに狙いもあるのだろうが……
映画は、何と言っても、前半部のティベリウス別邸の様子に圧倒される……酒池肉林と言うか、ヒエロニムス・ボッスの絵の実写化と言うか……実際、ここに資金の多くを注ぎ込み、撮影終盤、資金難になった、と言うのも納得出来るものだ。
しかし、かつて観た1980年版のような竜頭蛇尾な印象を受けなかったのは、本作では、後半にしっかりドラマと演技を見せているからだろうか?
また、カリギュラのようなイカレた皇帝の統治が続いたのに、
「英雄よりも、愚かでも戦争をしない皇帝の方がいい」
と言う理由があったのにも考えさせられる。
惜しいのは、カリギュラの良心、とでも言うべきドルシラの死でパラダイムシフトが起きた、と言う描写が弱い事、あと、カリギュラの妹たちをドルシラひとりに整理してしまった事……末妹・アグリッピナがいないとなると、ネロが生まれないではないか、と思ってしまった。
しかし、最近、長い映画が多いが、これも長い……1880年版も158分あったが、今回のは、それから更に20分長い178分もあるのだ……
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