これは、ベネズエラ出身のアレハンドロ・ロハス&フアン・セバスチャン・バスケスによる長編監督デビュー作で、監督らが実際に体験した実話に基づく密室サスペンスとなる。
米国移住のため、バルセロナからニューヨークへと降り立ったディエゴとエレナのふたり。グリーンカードの抽選で移民ビザに当選したエレナは、事実婚のパートナーであるディエゴと共に、新天地での幸せな暮らしを夢見ていた。
ところが、空港の入国審査で、ディエゴとエレナは、パスポートを確認した職員に別室へと連れて行かれ、密室の中、問答無用の尋問を次々と受ける事になり……
これは、「国家」と言う組織の持つ暴力性を描くもの、と見ていいと思う……入国審査に当たる空港の職員らを、悪役として描かず、淡々と、そして現実の印象のままに描いているのだが、それがむしろ彼らが代弁し、時に行使する「国家」の権力や暴力性を示しているように思う。
はら自身も、これまで幾度も入国審査を受けて来たが、やはり、母国語が通じない場で、判断基準もよく判らない審査を受ける不安は常にあっただけに、この映画の描く、不安と焦燥が、やがて恐怖へと変化して行くのには共感せざるを得ない……これは、海外渡航経験のある人の多くが、同様なのではないだろうか?
映画は、その入国審査で引っかかった後を描く――尋問により、乱暴に明るみに晒されるプライバシー……それは、やがてパートナー同士でさえ開示していない事をも引き出してしまう。それが可能なのが、「国家」の力であり、職員にはその権限が与えられている――だが、何の為に?その「?」の部分こそが、本作が訴えたかった事であるように思う。
映画は唐突な幕切れを迎える――これまでの尋問は何だったのだ、と言う怒り、そして、審査を受ける前にはもう戻れない、と言う後悔……これが、「国家」が、その本性を現す「国境」で日々起きている事なのだ。
PS
本作の公開は2022年。それが3年後の今年になって拡大公開されたのは、米国・トランプ政権による、不条理な外国人流入規制のせいだろう。
そして、その動きは米国だけでなく、他の国々へも広がっているのだ。これは、まるで他人事ではないのだと思う。
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