これは、TikTokの紹介動画が200万回再生を超えたと言う大注目の斜線堂有紀の同題小説を「室町無頼」の長尾謙杜、「ゴールデンカムイ」の山田杏奈のW主演で映画化したもの。
監督は、「月の満ち欠け」の廣木隆一。
海に近い町に引っ越して来た内気な高校生の宮嶺と、誰からも好かれる学校中の人気者の景が出会ったのは、引っ越し当日。宮嶺の新居の向かいの家が景の家だった。
景が、学校と町に不慣れな宮嶺の世話を焼くうちに、ふたりの距離は縮まって行く。
しかし、そんなふたりの周囲では、自殺未遂に始まり、生徒の不審死が続発し、宮嶺はある疑惑を抱く……。
この映画、予告編からは、サイコサスペンス的な展開を期待したのだが、これが、意外にも毒気のない青春ラブストーリーでしかないのに肩透かしを食った気分……
物語としては、転校して来た、人付き合いの苦手な主人公(この設定もありがちだが……)の宮嶺が、クラスの中心的存在の女子・景と出会って……と言うものなのだが、徐々に見えて来るのは、このクラス、表面的にも、そして裏でも景に支配されている事が判って来る。しかも、そこに、参加者をマンンドコントロールし、最終的には自殺に導くゲームサイト“ブルー・モルフォ”の存在があり、宮嶺が飼っている蝶の幼虫にイメージが重ねられ、幼虫が蛹となって、その中で変態するように、明るく快活な少女が得体のしれないものに変容していくと示す、導入の展開はよかったのだが――この映画、そうした設定や、散りばめられた謎を、活かせもせず、謎解きもせず、ただ、涙の悲恋の物語として決着させてしまうのは唖然とした。
説明不足を非難し、オープンエンドを嫌がって、明瞭簡潔な物語を好む最近の若い観客は、これで納得するのだろうか……少なくとも。原作小説は話題となっているようだが……
もっとも、廣木組の映画だけあって、なかなか見せる場面もある――特に圧巻はクライマックスの屋上シーンで、かなり複雑な動きが含まれる、これを長回しで一気撮りしてるのはさすがだと思う。その一方で、廣木監督が好む引き気味のカットは、映画らしい効果を生んではいるものの時に不自然で、本作のように身の回りの“半径5m”を描く映画には、特に不要に思えたのは残念だった。
演者としては、やはり景役の山田杏奈に尽きるだろう……実年齢も役年齢よりかなり上で、他の若手とは存在感も演技の質も違い、本作のサイコサスペンス要素の多くを彼女が見せているのは間違いない所。それに対し、宮嶺役の長尾謙杜は、受けに回ったせいでもあるが、もどかしく見えるばかりでいい印象がなかった。
この映画、ジャンルとしては悲恋の青春ラブストーリーなのだろうが、ラブストーリーにしては人間関係に工夫がなく、サスペンスとしては、最後に謎と仕掛けを放り出してしまうなど中途半端な幕切れで終わり、正直、評価も出来ず、納得も出来ずのままで終わってしまった印象だ。
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