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2025年08月15日21:45

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「雪風/YUKIKAZE」感想

 これは、太平洋戦争中の主要な海戦の殆どに参戦しつつ生き延びた日本海軍の幸運艦・駆逐艦「雪風」の史実に基づき、戦中、戦後、そして現代に繋がる物語として描くヒューマンドラマ。
 監督は、長年助監督を務め、本作で監督デビューとなる山田敏久。
 出演は、「太平洋の奇跡」の竹野内豊、「沈黙の艦隊」の玉木宏。
 フォト
 陽炎型駆逐艦の8番艦「雪風」は、太平洋戦争開戦以来、主要な海戦の殆どに参戦しつつ生き延び、幸運艦として知られていた。
 昭和19年、その雪風艦長に寺澤一利大佐が着任。軍令部から転任して来たエリート士官の寺澤を危ぶんだベテラン下士官の早瀬先任伍長だが、寺澤艦長は冷静かつ卓越した指揮ぶりを見せ、早瀬を始め乗員らの信頼を得るようになる。
 だが、戦局は増々厳しくなり、マリアナ、そしてフィリピンと厳しい戦いが続いて……

 駆逐艦「雪風」は、幸運艦として知られ、知名度としては日本海軍の駆逐艦の中で最も高い、と言えるだろう。そのエピソードは、これまで幾つもの書籍になっている。
 そんな「雪風」の戦歴を追うだけで、見せ場の連続となるだろうし、近年、CGの発展で、日本でも迫力ある海戦シーンを描けるようになっている(「アルキメデスの大戦」や「ゴジラ−1.0」など)事から、本作には期待していたのだが――予告編でも危惧していた通りで、本作はCGが稚拙、特撮がショボい、見せ方も下手、でいい所なし……まるで、30年以上前の映画、と言う感じで、正直、NHK大河ドラマの「坂の上の雲」の方がマシなのでは、と思える出来なのにはがっかりした……まぁ、確かに、これには山崎貴と白組が関わっていないからなぁ……

 そうした映像面でがっかりしたのだが、更に問題ありなのは物語……本作は太平洋戦争を描きながら、物語としてはフィクションになっているのだ。
 勿論、戦局の推移は概ね史実通りだし、海軍上層部は実名を出しているのだが、寺澤館長以下「雪風」乗員は全て架空の人物となっている、と言うのには、疑問を感じざるを得ない。
 乗員が架空の人物なら艦内の様子もほぼ絵空事で、優しい艦長に信頼出来る幹部士官、乗員の間には和気あいあいとした空気が流れ、帝国海軍ならばお馴染みの鉄拳制裁もバッターもない、と言うのでは、ほぼファンタジーであり、これで乗員に女性キャラがいたらアニメと大差ないだろう。
 確かに、戦艦のような大型艦と異なり、艦の小さな駆逐艦では人間関係が濃密になり、私的制裁は緩やかだった、とは言われるが、本作で艦内の様子を描写するのが「雪風」に限られる以上、そこに海軍内で起きている事を盛り込まなくては、「帝国海軍」と言うものを描いた事にはならないのではないだろうか。
 海戦が一段落したら救助に徹し、敵にも敬意を払い、人道を重んじると言う美談で固めた物語に、死者が出たら情感たっぷりに見送る、と言うのも、戦争ものではあり得ないに近い描写で、これではリアリティも何もあったものではない。

 「雪風」から離れても、気になる所は多い。クライマックスとなる「大和」の沖縄特攻については、軍令部が水上特攻に固執する理由が、昭和天皇の「海軍に艦はないのか?」発言に端を発する、と言うのを描く必要があるのではないだろうか?
 また、大局的に見て、戦争に負けたのは国が舵取りを誤ったからで、軍隊は悪くない、むしろ、一種の理想社会のように描くのにはさすがに抵抗がある。映画を作る側に「戦争を知る」人間がいなくなるとこうなるのか、と言う事実に、暗澹とした思いにさせられるし、こんな映画を、正々堂々「8月15日」に公開してしまうのもどうかと思う。
 そして、一番違和感を覚えたのがラストシーン……現代の呉の海上自衛隊基地の向こうに、かつての「雪風」と乗員らが浮かび、「日本は大丈夫か?ここから見ているぞ」と呼びかける……かつていた立派な人々に恥じないような国にしよう、と言うメッセージは、まるで戦中の「英霊に申し訳が立たない」と言うのと同じではないか。
 終戦から80年、戦争は遠いものとなり、今や戦後は終わり、新たな戦前を迎えようとしているのかも知れない……そんな複雑な思いを抱かされた8月15日だった。
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