これは、昭和20年8月の長崎を舞台に、原爆の被爆者救護にあたった看護学生の少女たちの姿を描いた人間ドラマ。
監督・脚本は長崎県出身の被爆三世であり、「桜色の風が吹く」などを手がけてきた松本准平。
昭和20年8月、長崎。日本赤十字社の看護学校に通う田中スミ、大野アツ子、岩永ミサヲの3人は、空襲による休校により帰郷、懐かしい故郷と、家族と共に過ごす時間が一時の平穏を与えたが、戦争の脅威は間近に迫っていた。
そして、8月9日午前11時2分、長崎に原子爆弾が投下される。街は廃墟と化し、彼女たちは未熟ながらも看護学生として負傷者の救護に奔走するが……
これは、広島に比べ取り上げられる事の少ない長崎の原爆被害を描く映画で、日本赤十字社による「閃光の影で:原爆被爆者援護赤十字看護婦の手記」を原案としている。
そんな史実に基づく、そこで何が起きたのかを語り継ごうとする真摯さ、そして、予算規模は小さく大掛かりなセットや特撮も使えない本作の事情の中で、精一杯昭和20年の長崎を再現しているのには好感が持てる。
惜しいのは、主人公を3人の看護学生とした事で、そこに盛り込まれたドラマへの踏み込みが浅くなってしまっているのは否めないと思う……何だかストーリーがあってドラマがない感じがするのだ。
また、軍の横暴や、朝鮮人への差別、大人たちの身勝手さ、などのネガティブな描写もされているのも覚悟を感じさせるが、これについても、主人公の少女ならではの心の動きが描かれないのだ。こうした部分を描いて、あるいは語ってこそのドラマであろうに……
あと、気になったのは被爆者の惨状がいささか軽微に見える事――熱線で焼けただれた火傷、突き刺さる無数のガラス片、剥がれ落ち、指先からぶらさがる腕の皮膚、など――これまで記録映像や、「はだしのゲン」などの作品でも知っているだけにどうにもインパクトに欠けるように感じた。
勿論、被爆三世の松本監督がそんな事を知らない筈はないのだけど、どうやら惨状を描くと、観客が引いてしまうのでは、と危惧した、と言うのだが……その姿勢には疑問を感じた。
他にも、この映画、全体的に綺麗に描かれており、主人公ら若い看護学生の白い制服は真っ白のままで、彼女らが仮眠を取るシーンなど、まるでアイドルのイメージビデオのように真っ白でキラキラしているのには「こりゃダメだろ」と思わざるを得なかった、
最後も音楽で綺麗にまとめた感があり、上手く出来ている、とは思うものの、インポクトとしては今一つ。
原爆の悲惨さを語り継ぐのであれば、それを綺麗に見せるのではなく、ありのままに描く事も必要なのではないだろうか。
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