これは、「ミッドナイトスワン」の内田英治監督が、映画制作の現場を舞台に現代社会の問題や矛盾を炙り出すヒューマン・サスペンスで、内田英治監督の完全オリジナルストーリーとなる。
主演は、「終末の探偵」の北村有起哉。共演は「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」の円井わん。
貧しい家庭で育ち、父を介護の末に看取ったという元ヤングケアラー、ARISAの自伝小説の映画化の撮影1か月前。元ジャーナリストで、映画監督の夢を追って転職して来た野島は、助監督としてARISAの周囲の人々に聞き込み調査を続けていた。
調べるうちに、小説に書かれた美談とは程遠い現実が浮かび上がり、野島は疑問を抱き始める。この女は悲劇のヒロインか、それとも嘘つきか……真実を追求しようとする野島だったが、撮影開始日が迫る中、野島は家族の問題にも突き当たり、彼の日常は少しずつ崩れて行き……
これは、すごく面白い。
そもそも、映画を作る話は面白い……しかも、映画人が撮影所で映画を作る話を獲る訳だから、リアルだし、興味深いし、面白くない訳がない。映画は、そこに、現在のコンプライアンスとポリティカル・コネクトを求められる映画業界で、如何に“真実”と向き合うかを描き、最後には、「映画」の自己批判になっていくのだから、これは、もうぞくぞくする程に面白かった。
物語の中心は、野島が追う、ARISAの小説が真実であるか否かなのだが、それは大して重要ではない――重要なのは、それがどれだけ人を「感動させる」かであり、それを「誰」に届けるか、なのだ。野島は駆け出しの映画人故に、真っ直ぐに、不器用に、それを追い求めて行く。
ARISAは、「現実をそのまま書いても誰も感動しない」と言い、監督は「同じ立場にある人々に届け、勇気を与えたい」と言う……ARISAは本音を語り、監督は綺麗ごとの建前を言っている……更に、同僚の助監督、プロデューサーとそのアシスタントと、様々な立場のそれぞれの発言が、野島を翻弄し、悩ませて行く――これは正に、現在の映画作りの現場で、日々向き合い、悩まされているものなのだろう。なるほど、これは内田英治監督でなければ書けなかった話であろう、と思う。
映画は野島の辿り着いた結論を描かない。1年後の状況から推察するしかないのだ。
だが、ラストシーンからは、野島が(少なくとも家庭では)現実に向き合わなかった事も、真摯でなかった事も判る。それが映画で成功する為に必要なのだ、と言うのは、自己批判としてもあまりに刃が鋭いし、また、仕事をする人々に向けたメッセージとしても、これはかなり痛烈なものになっているように思う。
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