mixiユーザー(id:124952)

2025年04月01日17:14

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「悪い夏」感想

 これは、「正体」の染井為人による同題小説を「ビリーバーズ」の城定秀夫監督が映画化したもの。
 主演は「東京リベンジャーズ」シリーズの北村匠海。共演に、河合優実、竹原ピストル、伊藤万理華、窪田正孝。
 フォト
 市役所の生活福祉課に務める佐々木は、先輩の宮田から「同僚が担当する生活保護受給者に肉体関係を迫っている」と知らされ、内密に調査を始める。
 その母娘の家を訪ねた佐々木は、そこで若いシングルマザーの林野と知り合う。だが、それをきっかけに、佐々木はとんでもない事態に巻き込まれて行くのだった……

 この映画、生活保護受給者と貧困ビジネスが題材で「クズとワルしか出て来ない!」と言う映画コピーから、どうにも気乗りがしなかったのだが、結論としては、これが案外悪くない。
 原作は未読だが、どうやら原作を大分脚色し、映画の中で誰も死ぬ事のない、甘めの仕立てとしているようだ。
 社会弱者が食い物に、或いは足蹴にされる現実を引き写して描いているだけに、社会性のある映画にも出来る内容だが、それもまた、エンターテイメント寄りに仕上げ、クライマックスとなる雨の夜、一室に登場人物が勢揃いしてしまう展開などは思わず笑ってしまった――勿論、笑って済まされるものではないテーマを抱える本作だけに、それは如何なものか、と言う批判も出る部分だろうが……

 主人公の佐々木が、気弱さと優柔不断さ故に、まとわりつく熱気のような悪事に絡めとられるのもリアルだし、その状況を強いる悪党の金本の凶暴性の発揮も素晴らしい。昨今流行りの“マッドマン・ストラテジー”とはこうした振舞いの事だろうし、その言動には妙な説得力があり、空虚な正論(それにも理由があるのが最後に判る)を語る宮本よりも、否定し難いものを感じてしまうのだ。
 また、木南晴夏演じる母子が追い詰められ、最後、佐々木に不当に打ちのめされるのは、本作の隠れたクライマックスであり、ここで佐々木が「加害者」に転じるのが映画の転換点にもなっている――だからこそ、この先を改変した事には疑問を憶えてしまうのだが……

 その一方でウケを狙った、と言うか世に迎合しているように思えたのが、河合優実演じる林野の描写……荒んだ生活で常に不貞腐れている様子の彼女が人の情を知って徐々に汚れを落として母性を得て行く、と言うのは、まるで「あんのこと」の二番煎じ。だからこそ、本作は甘口に仕立てて、最後に佐々木を林野母娘の元に「ただいま」と帰宅させるのだ。
 そんな展開に、物足りなさを覚える人もいるだろう。だが、社会派ではなく、エンタメ作品として仕立てられた本作としては仕方のない脚色であろう、と思う。
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