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2024年12月20日13:17

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「不思議の国のシドニ」感想

 これは、フランスの名優イザベル・ユペール主演、喪失を抱えるフランス人女性が日本各地を旅するうちに生じた変化を描くもの。
 監督は、「ベルヴィル・トーキョー」「静かなふたり」のエリーズ・ジラール。共演は、伊原剛志と、「名もなき生涯」のアウグスト・ディール。
 
 フランスの女性作家シドニは、夫の死以降、本を書けずにいたが、デビュー小説の「影」が日本で再販されることになり、出版社に招かれて訪日することになる。
 日本に到着したシドニは、編集者の溝口健三に出迎えられ、溝口と共に、各地で取材対応やサイン会を行う事になる。彼女はインタビューに、家族を亡くし天涯孤独だった自分を、喪失の闇から救い出してくれた夫の存在により「影」を執筆できたと語る。
 そして、そんなシドニの前に、亡き夫アントワーヌの幽霊が姿を現して……

 これは、親しい人を亡くした喪失感を抱えて生きる“残された人”を描く物語――まるで、自分の一部を亡くしたかのように、心ここに非ず、と言う様を体現して見せるイザベル・ユペールはさすがだし、居場所をなくして彷徨う、まるで幽霊のようになった主人公に相応しい舞台として、異国を選択した、と言う着眼点も悪くない、とは思う。
 西欧から見た日本を代表するイメージである「東京」を選ばず、関西を中心としたのは、溝口健二への傾倒がさせたものだろうか?そしてスクリーンに映し出される、京都・奈良の古刹や庭園も美しく切り取られている。

 しかしながら、既に人気の観光地として多くの外国人観光客に知られるようになった日本を、未だ“不思議の国”(まぁ、そう言う邦題をつけたのは日本人だが)然として描くのはさすがにセンスが古いのでは、と思うし、空港の入国審査を始め随所にリアリティを欠く描写が見られたのも残念だ。それこそ、溝口健二に傾倒するならば、リアリティにはこだわって欲しかったと思う。

 シドニの抱える喪失感を癒すのは、幽霊として現れた夫ではなく、同様に喪失感を抱えて生きる人との共感と言うのが、本作の描く所であるのだろうけれど、それが正に「触れ合い」だと言うのは、フランス人らしいと言うか、余りに即物的ではないか、と思ってしまったり……
 それ故に、シドニと溝口のベッドシーンまで見せるのも同感で、むしろそこに至るまでのタクシー車内でのふたりの手の絡め合い……これがもう情交を思わせる官能的なもので、個人的にはこれで十分ではないか、と思ってしまった。
 これには、その後に見せられるベッドシーンが静止画で、妙に荒れた画質としている事で、イザベル・ユペールの老いてしみの目立つ肌を強調するものととなっている、その見せ方にも疑問を覚えてしまったので尚更だ。

 映画を通しての静謐で穏やかな空気感や、美しく切り取られた風景に、イザベル・ユペールの存在感もあって、雰囲気のある映画にはなっているが、物語の展開、そして決着に納得しかねる部分があって、ちょっともやもや。
 その辺りが、本作の評がぱっとしない理由だろうか? 
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