これは、1997年に連続TVドラマとして放送され、1998年からは6本の劇場映画が製作された「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフ作品で、室井慎次を主人公とする劇場版2部作の前編。
出演は、TV版より室井慎次を演じる柳葉敏郎、共演は「ディア・ファミリー」の福本莉子、「カラオケ行こ!」の齋藤潤の他、TVシリーズに出演していた懐かしい顔ぶれが揃った。
監督は、本シリーズでTV版演出と劇場版監督を務めて来た本広克行。
室井慎次は、27年前、青島刑事との約束を果たす為、警察上層部に上り詰め、組織改革に務めるが、それを成し遂げる事が出来ず、悔いを抱えて警察を辞め、故郷の秋田に帰る。
村を離れた山中の家で、里子の少年たちと共に暮らしていたが、室井の家の近くで他殺死体が発見されたのを機に、室井の周りに再び事件の影が迫る。
更に、室井を指名して里子に出された少女・杏。彼女は、室井の関わった中で最悪の犯人と言われた猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だった……
今回の映画だが、前後編2部作の前編と言う事を理解して観ても、これは厳しい評価をせざるを得ない。
物語としては、起承転結の起を描いた所で物語は殆ど動き出さずに終わる感じだ――確かに、物語は、この後で大きく動き出す予感を感じさせ、その為の布石をしっかり打ってはいるし、期待を繋げるだけのムードも盛り上げてはいるが、そこまでだ。
せっかく、2部作に分けたのであれば、前編は、室井が作った“家族”の物語にする、と言う方策もあったのに、その“家族”の物語さえ、後編に続く、とされてはさすがに食い足りない感じだ。
あと、この映画で気になるのは全体的な出来の悪さ……コメディリリーフ役の若い警官がただ煩いだけで全然笑えない所に始まり、その後の物語も、設定も、作りは粗いし、設定は雑だし、室井を始め、行動に納得も共感も出来る所が少ない。
脚本は、本シリーズを通して手掛ける君塚良一だが、この映画に関しては、君塚脚本も持ち味である“判り易さ”が裏目に出た感じで、善悪が明確にされている分、その中で右往左往する登場人物が、逆に愚かに見えてしまう感じだし、そんなドラマを大仰な音楽で盛り上げようとする演出にも辟易とする。
物語の殆どは後編で語られる事になるのだろうし、後編の冒頭には本作のダイジェストがつくのだろうから、この出来の悪い前編を観る必要はないのではないか、と思ってしまうような映画で、これはかなり残念な映画だった。
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