これは、TVドラマ「ブラッシュアップライフ」で注目を集めた水野格が、完全オリジナル脚本で挑んだミステリー。
出演は、「ブルーピリオド」の高橋文哉、「春画先生」の北香那、「女子高生に殺されたい」の田中圭。
コロナ禍で飲食店をクビになり、宅配ドライバーとなった丸子は、“次々と人が消える”と噂されるいわくつきのマンションを担当する事になった。荷物の配達と集荷で、毎日のようにそこに出入りするうち、住人たちの顔ぶれや事情も徐々に知るようになる。
そんなある日、丸子のお気に入りのネット小説の作者が入居している事を偶然知ってしまう。しかも凄い美人だ。「宅配の仕事をしていてよかった」と浮かれる丸子だが、マンションに出入りするうち、彼女の周囲に不穏な出来事が起き、やがて彼女が消えてしまう。丸子は、会社の先輩で小説家志望の荒川に相談し、アドバイスを受けながら彼女の行方を追うが、やがて二人は思いも寄らぬ大事件に巻き込まれ……
これは異色のミステリー。
映画の構成としては、三部作となっており、第一部は、いわくつきマンションで、女性作家が消え、彼女のファンでもある主人公の配達員が探す、と言うもの。第二部では、女性作家が、自身の失踪に至る経緯を語る、と言うものになり、第三部で、主人公が“真実”に辿り着く、と言う構成――実は、第四部もあるのですが、これはまぁ、映画の後味をよくするデザートのようなものでしょうか?
これはちょっと捻った「羅生門」スタイルで、3つの物語のうち、ひとつに“創作”が入っているのがポイント――その創作された物語にはフックがあり、ファンならばそこに気づいて真実に辿り着くであろう、と言う作家の仕掛けたサスペンスを生んでいる。
確かに、面白い構成の物語だが……惜しいのは、この物語の語り口――第二部は、女性作家の“創作”なので、ここは物語強度や話術で見せるべき所だろう。映画は、ここで演出をコメディタッチにする事で差異をつけようとしているが、これが有効とは思えなかった……むしろ、この物語は、小説で書いてこそ、その面白さを生むのではないか、と思ったほどだ。
また、プロローグの一幕や、姿を見せない部屋から、別の住民の声で応答があるなど、女性作家の物語の他に、観客にヒントを与えてしまっているのも惜しい――これがなければ、第一部の展開を、主人公・丸子の妄想では、と観客に疑念を抱かせる事も出来た筈なのに……
凝った構成のプロットと、演技巧者を揃えて見せる芝居の幅で、なかなか見せるし、面白いのだが、それだけに至らぬ所が惜しい、そんな映画だった。
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