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2024年09月09日23:12

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「きみの色」感想

 これは、「けいおん!」で監督デビューし、「映画 聲の形」「リズと青い鳥」などを手がけてきた山田尚子監督初のオリジナル長編アニメ。
 川村元気プロデュース作品で、東宝系で拡大公開される、この夏の期待作となっている。
 声の出演は、「こころのふた」の鈴川紗由、「ベイビーわるきゅーれ」の高石あかり。
 フォト

 カトリック女子高に通う日暮トツ子は、人の姿や心情がさまざまな「色」に見える。彼女が学校でも一番きれいだと感じる色は、作永きみの鮮やかなブルーだ。だが、きみは突然、学校を中退――トツ子はわずかな手がかりから、きみを探して街の中の書店巡りを始める。やがて小さな古本屋できみを探し当てたトツ子は、たまたま店に来た男子高校生の影平ルイと3人でバンドを組むことになって……

 この映画だが、なんとも不思議な印象を与えるものとなっている。どうにもつかみどころがなく、ふわふわとした印象……盛り込まれた設定も、背景にあるドラマを決して出しゃばる事がない――人が「色」で見えると言うトツ子の個性も、きみが学校を辞めた理由も、きみとルイのロマンスも、物語の推進力にもならず、説明もされず、大きく発展する事もない。ふわっとした、トツ子の個性そのままのように、季節は進み、修学旅行、学園祭、そして卒業までが描かれる。
 見せ場となるのは、やはり学園祭のトツ子、きみ、ルイの3人によるステージで、ここは彼らオリジナルの3曲をフルコーラスで見せるのだから、確かに映画中心であるのは間違いないのだが、それさえも彼女ら3人の学生生活集大成となるステージとは言え、ドラマを生むには至らないのだ。
 
 こうした感動や恋愛、怒りと言う、強い感情を描かないのは、どうやら山田尚子監督の狙いではあるらしい。それは、これまでの山田尚子監督作品の延長線上にはあり、確かに彼女らしい作品ではあるのだが、これにはピンと来ない人も多いのではないだろうか。
 川村元気プロデューサーは、かつて「君の名は。」ですれ違いの作家である新海誠に再会を描かせると言う奇跡を生み出して、大ヒットに繋げたが、それは同時に新海誠の作家性を犠牲にしたとも言える。
 本作でも、川村元気は、それを再び狙ったのだろう(「きみの色」と言うタイトルからしてそうだ)が、山田尚子監督は己の作家性を曲げずに、自身の世界を本作でも貫いた――恐らく、本作は「君の名は。」のような大ヒットになるような事はないだろう。だが、山田尚子監督が己を貫いた本作は、その作品価値において決して劣るものではないと思う。
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