これは、社会に居場所を失った少女の姿を繊細かつ強烈に描いて、ベルリン国際映画祭2冠を含む37冠を獲得したドラマ。
9歳の少女ベニーは幼少期に父親から受けたトラウマのせいで、とんでもない問題児となっていた。母親は育児放棄し、里親、グループホーム、特別支援学校など、どこに行っても問題を起こして追い出されるか逃げ出してしまう。
ベニーの願いは、ただ、ママのもとに帰りたいと言う事。しかし、母親はベニーにどう接していいのかわからず、施設に彼女を押し付け続ける。
そんなある日、通学支援担当のミヒャが、森深くの山小屋で3週間の隔離療法を受けさせることを提案する。当初抵抗していたベニーだが、徐々にミヒャへ心を開いて行くが……
この映画、実際に児童養護施設を転々としている問題児を取材して製作した、と言う事で、養護施設に収容される児童が、“DVやネグレクトで居場所をなくした可哀そうな子”と、一括りに出来ない事を描いている。
予備知識があまりない状態で観たので、“野生の獣のような問題児”と言う情報と、チュッパチャプスをくわえて不敵な表情を見せる写真から、ベニーを5歳くらい、と思っていたので、彼女が9歳、と言うのが意外だった。
9歳なので、既に会話もちゃんと出来るし、落ち着いてる時には(ベニーの許容範囲内で)言う事にも従う――だからこそ、スイッチの入った時の暴れっぷりは正に「手が付けられない」、と言う印象を受けた。
そんなベニーを演じるへレナ・ツェンゲルは、あれを演じてみせる訳だから凄い、としか言いようがない。ドイツ映画賞で、史上最年少の主演女優賞を獲った、と言うのも当然と思える。
ベニーの感情の爆発は、全てを破壊する勢いだ――何しろ、何よりも大切な筈のママだって、ベニーを警察に通報したと判るや花瓶で殴りつけるのがベニーなのだ――それは、ベニー自身と、その未来さえも破壊してしまう……でも、自身の為に用意されたもの、作り上げられたものを破壊し、逃げ出して走り出したベニーは笑っているように見える。世界を蹴飛ばして逃げる、その一瞬の開放感、その為にベニーは走る……その行き先に希望などなくても。
9歳と言う無限の可能性がある筈の少女に、そんな破滅への道を歩ませたのは何か、と言う事を考えさせられてしまう映画だ。
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