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2024年05月01日13:04

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もう一つのメインコンテンツ → 《復刻》 中世史私論 その139 「東国社会の変動 京都鎌倉御中違(おんなかたがい)」

鎌倉公方

 あいつぐ徳政一揆によって幕府が、そのあしもとからゆさぶられていたころ、関東では鎌倉公方足利持氏の反幕府行動が、もうあとにはひけぬところまできてしまっていました。
 この問題を正しくとらえるためには、さかのぼって南北朝期以来の鎌倉公方=鎌倉府と関東の政治情勢をかえりみておく必要があります。

 今までに触れてきたように、足利尊氏及び執事(将軍の政務を補佐した要職)の高師直(こうのもろなお)と、足利尊氏の弟で幕政を主導していた足利直義(あしかがただよし)はそれぞれが派閥を形成し、次第に対立を深めた観応の擾乱(かんのうのじょうらん)がおこると、貞和五年(1349)、足利尊氏は義詮(よしあきら)を京都によびもどし、これに代えて次子基氏(もとうじ)を鎌倉に下して幕府の全国支配体制のもっとも重要な東のおさえとし、以後、この基氏の子孫が公方の地位を歴代継承するようになりました。

 義堂周信(ぎどうしゅうしん)の日記『空華日用工夫略集(くうげにちようくふうりゃくしゅう)』に「関東幕府」と記されているように、その権力機構は、その頃から、京都の幕府と共通するほどに整備されました。公方の職権もしだいに拡大され、関東分国内の軍事指揮権のほか、所領宛行(あてがい)・所務沙汰(所領紛争裁判)なども掌握しました。公方の手になかったのは、関東管領および守護の任命権くらいのものでした。

 二代目の公方氏満(うじみつ)は、上野(こうずけ)の新田氏の余党や、河越・高坂・エド・豊島ら武蔵の国人(こくじん)が組織する平一揆(へいいっき)、また下野(しもつけ)の宇都宮氏などを討ち、関東の統合をすすめようとしました。しかし中央で義満を補佐する細川頼之(よりゆき)と斯波義将(よしまさ)らの対立がはげしくなるなかで、氏満は義満への反逆を企て、それをおさえようとした関東管領上杉憲春(のりはる)が、自殺してこれを諫(いさ)めるという事件をひきおこしました。

 三代目の公方足利満兼(みつかね)は、奥羽二国の支配を固めるために、弟の満直(みつただ)を篠川(ささがわ)、同満貞(みつさだ)を稲村に下しました。篠川は福島県安積(あさか)郡、稲村は同岩瀬郡にあります。奥羽二国が公方の分国とされても、この地方には田村・伊達・大崎のような地つきの大勢力が割拠していたため、ほとんど支配の実をあげえませんでした。そこでまず奥羽の入口ともいうべきこの二つの地に公方の分身を送りこんで支配の拠点を設定しようとしたのでした。両者は、篠川御所・稲村御所とよばれました。ところが、この満兼もまた大内義弘の反乱(応永の乱)に呼応して、反幕府の行動を起こし、武蔵府中の高安寺に出陣しました。東西呼応したこの計画は、義弘のあっけない敗北と上杉憲定の諫めによって挫折しましたが、将軍と公方との不和は、これによってまた深刻さを増しました。

 四代持氏(もちうじ)は、幼名を幸王丸といい、父満兼が応永16(1409)年に死去したあとをついで、12歳で鎌倉公方となり、将軍義持の一字をもらって持氏と名乗りました。まえにふれた上杉禅秀(ぜんしゅう.氏憲)の乱は、その数年あとに起こりました。原因は、上杉氏一族の分裂だけでなく、若年の持氏が管領の地位にあった禅秀を罷免したことにもありました。さらにこの反乱が、関東全体をひろくまきこむ動乱となった社会的背景には、有力豪族たちのそれぞれの家における惣領制的秩序が解体期に入っていて、惣領と庶子との間の分裂がいたるところでひきおこされていたことがあります。また群小の国人たちの一揆が、鎌倉公方の支配体制からの自立をめざして、多く禅秀側についたということもありました。

 禅秀の反乱により、公方持氏は駿河に逃れ、幕府の関東支配の体制は危機に瀕(ひん)しました。幕府は、かねて反幕府行動の多い鎌倉公方ではあっても、前述のようにこれを幕府の危機としてうけとめ、駿河守護今川らを動員して禅宗を倒し、乱を鎮圧しました。これによって持氏はからくも危機を脱しましたが、そのあとまた反幕に動き、応永29(1422)年には、幕府が支持する常陸の佐竹一族山名与義(ともよし)や小栗満重(みつしげ)を攻めてこれらを滅ぼしました。

※ 2023年4月5日・7日の投稿文をup to date.


参考文献

 『観応の擾乱 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』
                 亀田俊和(著) 中央公論新社〈中公新書 2443〉
 『関東公方足利氏四代 基氏・氏満・満兼・持氏』 田辺久子(著) 吉川弘文館
 『関東管領上杉氏』「犬懸上杉氏の政治的地位」
   山田邦明(著) 黒田基樹(編)
   戒光祥出版〈シリーズ・中世関東武士の研究 第一一巻〉

 『日本中世内乱史人名事典』
   佐藤和彦、錦昭江、松井吉昭、櫻井彦、鈴木彰、樋口州男共(編) 新人物往来社
 『世界大百科事典』 加藤周一(編) 平凡社
 『国史大辞典』 瀬野精一郎(担当編集)  吉川弘文館
 『日本中世の世界1 中世社会の成り立ち』 木村茂光(著) 吉川弘文館
 『日本の時代史』 全30巻 吉川弘文館
 『日本史大事典』 全7巻 平凡社
 『室町時代』 脇田 晴子(著) 中公新書


 次回は「幕府の対策」
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