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2024年04月30日10:47

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科学的予言者? カール・マルクス

 火木土は哲学や思想をメインコンテンツとしているので、今日は大物です。

 カール・ハインリヒ・マルクスはプロイセン王国出身の哲学者、思想家、経済学者、革命家です。

 包括的な世界観および革命思想として科学的社会主義(マルクス主義)を打ちたて、資本主義の高度な発展により共産主義社会が到来する必然性を説きましたが、やがてこれは外れ、誤りであったことが後に分かります。

 マルクス主義はドイツ哲学、イギリス経済学、フランス社会主義を批判対象としつつ、これらを継承することで成立しました。 その根本思想は、世界をあれこれと解釈するのではなく、変革していかなければならないとする実践的唯物論であり、その変革の主体としてプロレタリア階級を初めて歴史的に位置づけました。資本家と労働者がくっきりと分かれていた当時の社会情勢からすると、こういう思想が出てきても不思議ではありません。
 だからマルクスは資本主義社会が高度に発達していたイギリスやドイツから労働者による革命が起こるはずだと想定していました。しかし実際に革命が起きたのは、西洋社会でもっとも遅れていたロシアからこの動きが起きたのは皮肉なことです。

 資本主義社会では、資本家が労働者を雇用し、商品を生産します。 労働者は自分の労働力しか保有していません。 一方、資本家は生産手段である工場や商品の素材(資本)を所有しています。 労働者は自分の労働力で作った商品は、資本家の所有物となってしまうのです。
 マルクスは積極的に資本家打倒の実行を強く求め、労働者階級が資本主義を打倒し、社会経済的解放をもたらすために組織的な革命的行動をとるべきだと主張しました。

 今から100年以上前にロシア革命が起きた後、世界中は大騒ぎとなりました。このまま世界中がマルクス主義、共産主義の社会になるのではないか、と多くの人が心配していました。特に資本家や現体制を維持している人々は動揺します。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなど各国にそうした動揺は波及していきました。
 イギリスとアメリカはアングロサクソンの人々です。どういうわけか、アングロサクソンの人々は、マルクス主義の影響をあまり受けませんでした。対して、フランスやドイツではマルクス主義の影響は大きかったのです。イギリスやアメリカも、自国以外の国々が共産主義化することを憂慮しました。

 日本や中国でも、それなりに共産主義の力が強くなり、動揺が起こりました。日本では知識人には大きな衝撃を与えましたが、現実的な運動としてはそれほど盛り上がりませんでした。中国では、知識人に大きく影響を与えただけではなく、現実の政治・社会運動として大きな力を持ち、国民党に打ち勝って中華人民共和国を建設しました。このように中国では共産主義が世界史の流れを大きく変えて、共産主義への懸念は現実のものとなりました。それ以外の国々でも、共産主義は大きな力を持ちました。

 マルクス・レーニン主義においての共産主義は、「能力に応じて働き、労働に応じて受けとる第一段階」である社会主義より段階の高い「能力に応じて働き、必要に応じて受けとる段階」を目指し、職業革命家からなる労働者階級の前衛政党による暴力革命とプロレタリア独裁を肯定し、国有化や経済の中央集権的計画化を行うものとされました。
 つまり高度な資本主義社会→労働者による暴力革命と政権奪取後のプロレタリアート独裁による(マルクス主義の言う)社会主義体制→私有財産を否定した国家所有による共産主義社会の到来、ということです。
 しかし残念ながら、共産主義体制の実現はなりませんでした。

 マルクスの史的唯物論はヘーゲルの哲学から出発し、フォイエルバッハに立ち寄りながら、これらを批判することによって独自の思想へと到達したのでした。
 かれの説には強烈なまでの訴求力があり、人間の持つ贖罪意識と既存の体制への憎悪・復讐心をかき立てるところがあるので、多くの若者が惹かれていったのです。私も10代の終わりから20代の初めにかけて、この思想にふらふらと引き寄せられそうになりました。
 哲学者廣松渉(わたる)のように聡明な人でも一時は日本共産党に入党したくらいです。彼は逆に除名処分を受けましたが。

 マルクスの盟友のフリードリヒ・エンゲルスとともにライフワークとしていた資本主義社会の研究は『資本論』に結実し、その理論に依拠した経済学体系はマルクス経済学と呼ばれ、かつてのソ連や東欧諸国など20世紀以降の国際政治や思想に多大な影響を与えました。
 この『資本論』は最初にマルクスのアイデアから出発し、それをエンゲルスが草稿にまとめ、さらにマルクスが補正加筆したものだそうです。

 マルクスの描いた未来予想図は当時の人々に衝撃を与えましたが、その後、彼の予言通りにはなっていません。その現象的な理由としては、マルクスが言及しなかった「中産階級の出現」が挙げられます。こうした問題が生じたのは、マルクスの議論がスケールメリットや副産物の存在を無視した非常に単純化した理論だったためであります。

 とはいえ、彼の説いた説の中には「疎外」と「搾取」という重いテーマがあり、この二つについては21世紀の現代においても傾聴すべきものであろうと、反対論者の私でも素直に思うところです。私は単なる反共主義者ではありません。

 社会主義体制から出発したはずのソ連→ロシアはプロレタリアート独裁ではなく、プーチン個人の独裁、また北朝鮮の金一家による独裁に変質したというのは歴史的必然性でしょう。中華人民共和国の場合はやや複雑ですが、やはり時の権力者たちによるものであることは変わりありません。

※ 2023年4月29日の投稿文に加筆
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