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2024年03月29日22:29

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娯楽性と社会性をバランスよく配置したミリタリーアクション 『コヴェナント/約束の救出』

米軍がアフガンから撤退するとき、離陸するC-17長距離輸送機にしがみつく現地の人々の映像を記憶している人は多いはずだ。*1

本作はそんな光景が誕生した背景もふくめ、米軍駐留兵士ジョン・キンリーと現地人通訳者アーメッドの魂の絆を描く。*2

物語前半はアーメッドが負傷したキンリーを困難のはてに基地へ送り届ける苦難の旅路。後半はキンリーがアーメッドの救出へ向う展開だ。

本作は実在する兵器と現代のリアルな地上戦を取り入れた現実路線ですすむ。AC-130ガンシップの登場など、娯楽要素にふった部分はあるが、荒唐無稽ではない現実の延長線上にあるミリタリーアクションだ。

肝入りの部分はやはり立場と身分をこえた2人の兵士の絆だ。

タリバンの追跡をかわし、荒涼の中東の大地を、手押し車へキンリーを乗せ運ぶアーメッド。その旅路の様子はすさまじい。*3 ゆえ帰国したキンリーが命を懸け友の救出に向う選択に説得力がある。

たっぷりと戦場の緊迫感と緊張感をつめこんだ映像は、従来のガイ・リッチー監督から想像できない新味へとあふれる。

米軍が現地人通訳者をアメリカ国籍と引き換えに協力させたのは事実だし、実際、命を救い合う状況もあっただろう。だが、本作は史実ではない。注意しないとならない。*4

ただ、軍事作戦に協力した現地人へタリバンが報奨金を賭け現在も行方を追跡している真実は本当だ。本作は娯楽性とともに、そんな社会性も我々へ提供する。

骨太な1本だ。


※1 そうして直後にタリバンは首都カブールを制圧し、現在、我々が把握しているように軍事政権を復活させることになった。ただ、現在のタリバンは、過去のタリバンとはことなり、外交対話を完全に無視しているわけではない。この部分にはタリバン指導者層の頻繁な入れ替りと、原理派と穏健派のそれぞれをかかげる複数の分派の誕生と対立、構成メンバーの若返りで、当時の過激な全体闘争を体験してはいない世代がふえたことも関係しているのだろう。法務省が国民向けに公表する「英国内務省 国別政策及び情報ノート アフガニスタン(https://www.moj.go.jp/isa/content/001380823.pdf)」はタリバンの現状を把握するのに大変よい資料だ。

※2 多くの人が誤解をしているが、戦争に向い、同時に必要な人員は兵士だけではないのだ。戦地の文化・風俗、人々を理解するため、人類学者や言語学者、心理学者が戦争に向う場合もあるし、歴史遺産の保存のために考古学者や博物館関係者が戦場へ出向する場合も多い。公僕・民間関係なしにだ。二次大戦以降、最も多く対外戦争を実行してきたアメリカは、長年に渡り戦争のシステムを構築してきた。現地通訳や現地案内の協力者たちの獲得は、もっとも重要な要素で、現在でもアメリカは、そのための巨大な対外資金を予算へ組み込む。

※3 表現は安直だが、キンリーとの友情のためだけに荒野を行くアーメッドの姿は宗教的殉教者のようだ。見返りが信念以外ないのだから。

※4 配給の木下グループの番宣もやたらと実話的ベースをおしていたが「全部が真実ではない」。マーケティングの気持ちはわかるけどね。
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