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2024年03月17日23:42

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常設展に目を向けた,とても良いご本が出版されたようです(^^♪

 美術館の常設展に目を向けた,とても良いご本が出版されたようです(^^♪

 以前にも申しましたが,東京に住んでいて何よりも嬉しいのは美術館の充実ぶりです。最近ではネット等によって何処でも優れた美術品についてその概要を知ることが可能になりましたが,それでも実際に作品に触れた際の感動には及びません。美術館も画廊も悉く閉鎖されてしまったあの恐ろしいコロナ禍で,そのことを改めて実感したのは決して僕だけではないでしょう。

 そして「せっかく時間を割いて美術鑑賞に行く以上は通常観ることの出来ない作品に接したい」と考えがちなのも,僕に限った話ではないようですね。主に外国の,或いは奈良や京都や沖縄などの優れた美術品が展示される企画展というのは,いつも押すな押すなの混雑ぶりです。以前はそうした企画展の中には,あまりの人気ぶりに「人の頭しか見えないではないか」などと皮肉られる展覧会も珍しくありませんでした。これまたコロナ禍への対応で一時期は時間指定制が敷かれたこともあり「海外では以前からこの仕組みが採用されている」などとも耳に致しましたが,これは日本人にはあまり好まれなかったようで,コロナ禍が明けてからは時間指定制度は殆ど見られなくなってしまいました。かく言う僕もやはり時間指定制は好みに合わず「何とも面倒な話だ(・ω・`)」と感じるばかりでした。この点,僕のもう一つの趣味であるクラシック音楽鑑賞では生演奏を聴く際にはコンサートホールに時間厳守で訪ねているのに,何とも不思議な話だと思わないでもありません(。・ω・。)
 一方で,企画展が喧噪に包まれていても殆どの場合に人の気配すらあまり感じされないのが常設展示室です。僕は西洋美術鑑賞では国立西洋美術館・日本を含む東洋美術鑑賞では東京国立博物館にしばしばお邪魔しており,両館とも実に充実した常設展示室を有しておりますが,そちらの常設展が混雑していた経験をしたのは東京国立博物館常設展が無料開放になった際の1回だけです。このためでしょうか,かなり大規模であってもそもそも常設展が行われることの無い美術館も稀ではありません。それは広いスペースを取るのが難しいであろう私立美術館だけではなく,国公立美術館でも同じです。たとえば六本木の国立新美術館や上野の東京都美術館には常設展示室自体が存在しません。それを皮肉って「これでは国公立貸画廊ではないか」などと批判する口の悪い向きも無いではないようですね。

 そもそも国立西洋美術館や東京国立博物館などで開催されるような企画展に足を向ける人々というのは,その程度は色々にしても「美術に触れたい」「優れた作品を観たい」と望んでいる方たちであることは間違いありません。では何故,常設展には足を向けないのでしょうか。僕の経験から申し上げると「常設展ならいつでも観られる」と思ってしまうのと,もう一つは「企画展の鑑賞で疲れてしまう」ということが主な理由です。なお,以前はその他に「企画展が時間指定制なので,常設展鑑賞のための時間を確保出来ない」ということもありましたが,先述のとおりコロナ禍明け以降は日本では時間指定制は廃れてしまっているので,これは現在では考える必要が無い事柄でしょう。:
 しかしこれは非常に勿体無いことです。常設展であれ企画展に劣らぬ優れた美術体験は可能なのですから。特に国立西洋美術館や東京国立博物館における展示の充実ぶりは,ときには大規模な企画展をも大きく上回るレベルと言えるでしょう。そして「常設展ならいつでも観られる」というのも必ずしも正しいとは言えません。上述の2館などはあまりにも多くの優れた作品を所蔵しているので,常設展であってもときに展示作品を入れ替えています。現に僕自身が体験したお話を致しますと,かつて僕は東京国立博物館の常設展で中国・清時代の高級官僚たちがプライベートを楽しむために別荘で過ごしていた際の魅力的な集合肖像画に出会ったことがあります。写真の無かった当時は迅速に記念の絵を描く専門の画家が居たそうで,きっと友人たちとの楽しい時間をそうした画家に描かせたのでしょう。絵画であるにも拘らず描かれた人物たちが見事にカメラ目線になっていて「おやおや,昔の中国の偉い方たちも現代の我々と何も変わらない普通の人間だったのだな(◍•ᴗ•◍)」などと微笑ましい気分にさせられたものでした。しかしその後,常設展に行ってもこの作品に再会することは未だに叶っていません。たまたまスタッフの方が展示室にいらしたときに訪ねたら「あぁ,あの作品ですか。展示の入れ替えで今は倉庫のほうにしまってあります」ということで「常設展の作品だからいつでも観られる」などと油断していると鑑賞し損ねてしまうのだと大いに反省させられました。また企画展と常設展とを両方観ると疲れてしまうというのであれば「今日は企画展,来週は常設展」と改めて足を運ぶか,或いは幸いにして大きな美術館であればレストランやカフェがありますから「早い時間に行って,途中で食事を兼ねた休憩を取る」などの方法で常設展をもしっかりと鑑賞したいと痛感しています。

 今回,奥野武範氏の著書「常設展へ行こう!」(左右社)を紹介するこちらの記事(レビュアーは詩人の渡邊十絲子氏)を読み,僕のそうした考えは妥当だったと改めて感じさせられています。「常設展のほうは、それほど混んでいない。いや、ほとんど人がいないことさえある」「『常設展ならいつでも見られる』という気分もあるし、時間をかけて大規模な特別展を見たあとに回ろうと思っても、集中力が続かないこともある」という渡邊氏のご指摘,僕が申し上げたことと全く同じですね。但しこちらの記事では,僕の見落としていた重要な事柄についても触れられています。「常設展は、その館のコレクションの披露である」というのは当然として「館のなりたちや考え方による個性は、むしろ常設展のほうにあらわれると言ってもいい」とのご指摘には思わずハッとさせられました。考えてみればたとえば国立西洋美術館というのは元来,実業家であった松方幸次郎による「松方コレクション」を展示することを一つの大きな目的として設置された美術館ですが,企画展だけをいくら観ていてもそうした経緯を知ることは不可能であり,常設展の鑑賞は不可欠です。その点,こちらのご本はこちらのは国内12の美術館・博物館の常設展を鑑賞しながらその館の学芸員や研究員にインタビューを行ったものであり,その雰囲気はまるで「ウチの子のじまん話」のようだということです。それぞれの施設がどういう理由で設立され,どんな狙いで選ばれた作品を所蔵しているのか。それらを知ることで美術館の歴史や狙いが判ってゆき,ひいてはそれが所蔵作品への理解を深めてくれる。そんなことを期待出来そうですね(ღˇ◡ˇ*)♡ そのことを渡邊氏は「こうした話を聞けば、展示を見る目が新しくなる」と実に端的かつ的確に一言でまとめて下さっています。

 僕も是非近いうちに,奥野武範氏の著書「常設展へ行こう!」を拝読したいと思いました。そして実際にあちこちの美術館の常設展を回って,奥野氏のご著書で学んだことを「実にその通りだ」と心の底から感じてみたいと願っているところです♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪



美術館・博物館は「常設展」こそ宝の山!東京国立博物館など12館の学芸員・研究員が魅力を紹介(レビュー)
https://www.bookbang.jp/review/article/772936
https://news.yahoo.co.jp/articles/1d0426b3fa2a9b0d627756dd8a64b18e9f54469e
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