これは、俳優の東出昌大に1年間密着したドキュメンタリー。
監督は、BiSH、クリープハイプ、藤井風など、数々のアーティストのドキュメンタリーやMVを手掛けてきたエリザベス宮地。
俳優・東出昌大は、不倫スキャンダル後、ひとり、山村で暮らすようになる。電気も水道もなく、自ら仕留めた鹿やイノシシを食べ、地元の人々と触れ合う日々――なぜ俳優である東出昌大が狩猟をしているのか。彼が狩猟をして生命を頂き、生きながらえる生命とは何なのか。その姿を通し、混沌、矛盾、葛藤を抱える東出昌大という一人の人間が映し出される……
これは、よかった。見応えあり。
実際、キネ旬のKINENOTEでも、先週公開の映画ではトップクラスの評価を受けているし、劇場のシネクイント(日曜午後の渋谷とは言え)でも7割の入りだった。
この映画は、ラッパーのMOROHAの武道館コンサートのプロモーションビデオとして、コンサートの様子と、東出が鹿を仕留めるまでを平行して描くものとして企画されたようだが、結果として、監督の興味はコンサートから東出の生き様に移り、その暮らしを1年間に渡って追うものとなってしまった。MOROHAは、本作の音楽を担当し、その力ある言葉が映画を印象的に彩っている。
東出の狩猟生活と言うのは決して半端なものではなく、映画でも描かれるように、群馬の猟友会では、歓迎されて迎え入れられている。これは東出が、有名俳優だからでははなく、若いからでもなく、群馬県では、年間200~250頭のシカが獲られるのだけど、東出は、2022年、ひとりで25頭を撃っており、群馬で獲られたシカの1割に相当する、と言う実力を認められての事だと言う。
しかも、東出は、一番効率の悪い、単独しのび猟――犬も仲間もなく、山中ただ一人でシカを追跡し、狙撃する――でやってると言うのだから……
ただ、この映画、狩猟と言うものを生々しく描くので、地上波放送は100%あり得ない内容で、観客も選ぶと思う。実際、撃たれて痙攣する鹿の頸動脈に東出がナイフを突き立てるのもノーカットで写し、劇場では、ここで早くも席を立つ人がいた――その後の解体の様子も余すところなく見せて行くのだから。
印象的だったのは、地域教育でその様子を小学生に見せている場面。
「かわいそう」とか「キモい」とか言って逃げ出す子供も多い中、8歳くらいの女の子がじーっと無言で東出が鹿の首を落とし、皮を剥ぎ、肉を切り分けて行くのを見ていて、その子が焼かれた鹿肉を躊躇なく口にし、漸く一言「おいしい」と。劇中でも語られているが、これが命と向き合う、と言う事なのだ。
映画としては、人生に躓いた男の再生、と言うよりは、現代社会に疑問を持った男があるべき生き方を見出すまでの道程、と言う所になるだろうか……だが、「WILL(意思)」と言うタイトルに対し、秘められたサブタイトルは「遺書」だ。
東出が語る、もう会えない息子に対し、「あいつにお前のオヤジはどんな男だったのかが判るといい」って……これは、決して格好よくもなく、美しくもなく、ただ「生きる」と言う事に不器用に悩む男の1年を切り取った。よく出来たドキュメンタリーだと思う。
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