アメリカの現代作曲家ジョン・アダムズの作品を都響で聴くのはこれで3回目
今回はいよいよ作曲者自身による自作自演のコンサートとなります（事件か？）
2019年作の日本初演が含まれますから、紛れもなく21世紀の「現代音楽」ですが、
過去2回の演奏会でも知っての通りそれほどラディカルな前衛音楽ではありません
（もはや現代音楽＝前衛ではないということですね）
その日本初演となる I still dance は指揮者のマイケル・ティルソン・トーマス夫夫
（同性婚なので夫婦ではない）に捧げられているという、タイトルの ”I” はティルソ
ン・トーマス氏の「夫」である俳優・プロデューサーのジョシュア・ロビンソン氏の
ことだといいます
ことさら同性愛をテーマとしたものでもないらしく、そもそも同性愛・同性婚が特に
強調すべきものではない、普通に我々の身の回りにあることで事件ではありません
では何をテーマとしたのか、公演パンフに作曲者自身が解説を書いておりますが、こ
れがよくわからない、描写音楽ではないのだから、音楽が何を表しているのかを詮索
するのは意味のないこと
でも何らかのフィロソフィーというか意図・思惑がありそうなものですが、正直の
ところ言葉による表現が理解不能でありますので、いわんや音楽に於いてをや
音楽自体はミニマル・ミュージックの延長にあって、和声も旋律もわかり易いので
すがね
続いてのステージは弦楽四重奏とオーケストラの協奏的作品
ゾリがオケに埋没せぬよう、マイクを通して増幅しているようです
オケの編成も一段縮小して、それでも14型、どうもミニマル・ミュージックとは言え
ハリウッドスタイルであります（これは過去の演奏会でも同じ感想）
カルテットの方にはベートーヴェンの引用があるようですが、悲しいかなワタシは
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は敬して遠ざけているところがあり、よくわからない
オーケストラでは第9の第2楽章や第7の第3楽章なんかが出てきて安心します
でも何に安心するのだろう、パスティーシュのようにも感じられてしまいます
確かにベートーヴェンは音型を何度も繰り返す方式の音楽を書いています（運命のモ
ティーフや田園の第1楽章なんか）、それを再構成しようというのが狙いでしょうか
タイトルにある「jest」は戯れや冗談を意味するのではないと解説には書いてある
でも、そう取られても仕方がないかな（シカゴのジャーナリストに酷評されたとか）
アンコールがあって、ベートーヴェンだということはわかりますが、恥ずかしながら
何番かわからない、サントリーホールのWSで調べて第13番の第2楽章だそうです
休憩後は編成がまた16型のフルに戻って、巨大化されたミニマルミュージック（矛盾
ですね）の様相を呈します
これも各楽章になまじタイトルが付いているものだから、その心はと考えてしまう
でもそんなことは眼中にない純真な聴衆は第1楽章が終わったところで拍手してしまい
ます（演奏予定時間が示されているのだからわかりそうなものですが）
意に介せず演奏は続き（当たり前だ）、第2楽章はアムフォルタスの傷と題されていて
これはチェロのパートソロによる美しい緩徐楽章です（都響のチェロにはうっとり）
終楽章は再びハリウッドスタイルに戻り、予定時間を3分ほどオーヴァーして（作曲
者も気合いが入ったのでしょうか）振り収めるとBravoがかかり、スタンディングも
出る壮大なオヴェイションとなりました
アダムズ氏も満足されたのではないでしょうか
なお、本日はコンサートマスターを東響の水谷晃さんが客演で務めていました
以前にも神奈川フィルの��谷さんが客演されたことがありましたが、あれは矢部さん
の代演でしたから、珍しいことですね
客席には池辺晋一郎さんの姿もありましたが、これは珍しくはないか
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