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2023年11月01日22:52

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資本とイデオロギー トマ・ピケティ みすず書房 2023年08月24日

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p.476
この制度に不満なドイツの組合が今日でも繰り返し要求しているのは、執行役会における同じような対等性だ。…

 スウェーデンの場合、1974年に制定され1980、1987年に拡張された法によって、従業員25人以上の企業では取締役会の3分の1の議席が労働者に確保されている(13)。
p.489
よってGDPの観点から論じるよりも、国内純生産――減価償却と資本減耗(自然資本を含む)を差し引いた値――を使うほうがずっと望ましいが、今のところ入手可能な国民経済計算ではこれができない。
p.495
この比較対象として、イギリスが1815年から1914年まd慧毎年国民所得の2‐3%を国債保有者への利払いに費やしていたことを思い出してほしい。
p.499
しかしこの給付増大は米国の医療費上昇も反映している。
p.500
これを見ると、現金以外の現物給付を考えるときの解釈の難しさもわかろうというものだ(59)。
p.501
言い換えれば、(同水準の一次格差の下で可処分所得の格差を減らすための)「再分配」政策と同じくらい、「分配前」の制作(一次格差に影響)の考察も欠かせないということだ(61)。
p.506
 さらに最近の研究によれば、米国における高等教育へのアクセスは主に親の所得で決まる。…この社会的移動性の激減は、「能力主義」や機会均等についての空疎なお説教とはあまりに対照的で、米国の教育、社会制度の甚だしい階層化を立証している。
p.509
 また呆れたことに米国の大学の教授陣も、研究と講義に資金を出す気前のいい億万長者からの資金調達に有利という理由で、これらの慣行とそれを取り巻く秘密主義への支持を高めている。
p.531
対照的にゲルマン北欧諸国、特にドイツ、オーストリア、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマークという、株主と従業員の権限共有を導入したのと同じ国々では、1890‐1910年に年次累進資産税が、累進所得税や累進相続税と同時に導入された。
p.534
たとえば30万ユーロの住宅への資産税(もしくは不動産税)が3000ユーロだとしよう。つまり財産価値の1%だ。ここで、この住宅を持ってはいるが、27万ユーロの住宅ローンがある人がいるとする。すると純資産はたったの3万ユーロだ。この人にとっての支払い税額は純資産の10%になる(3000ユーロ/3万ユーロ)。一方、270万ユーロの株式ポートフォリオとこの住宅を持っている人物がいるとしよう(住宅ローンはなし)。この人物の純資産は300万ユーロだ。米国で現在適用される財産税やフランスの土地税制度(不動産税)の場合、この人物が支払うのは同じ3000ユーロの税金で、これは純資産の0.1%にすぎない(3000ユーロ/300万ユーロ)。このような逆進税制は正当化し難く、税制への納得感を低下させ、経済的公正を不可能に見せてしまう。
p.539
誰が課税基準値を超え、誰が超えていないかが問題になる累進税の場合、類似の地域や近隣の価格に基づいて、比較的遠い過去に記録された価格は使い物にならない。このような状況において、1997年にドイツ連邦憲法裁判所は、税における平等が損なわれるという理由で富裕税を差し止めた。
p.553
1950‐1980年という専業主婦に対する家父長制イデオロギーが資本主義諸国で頂点に達した時期に、共産主義体制は男女平等、とりわけ職場での平等推進の急先鋒だった。…この姿勢は共産主義諸国の指導層が他に負けず劣らず男性支配的だったという現実から見ると、偽善のそしりは免れない(14)。それでも、1960、70年代のソ連東欧諸国の評議会や他の議会では女性が38‐40%を占めたが、同時期の西ヨーロッパと米国の議会では女性は5%以下だった。…
 いずれにしても1980、90年代になると、ロシアと東ヨーロッパの女性議員比率は30‐40%から、西側とほぼ同じかわずかに下回る10%ギリギリにまで激減した(15)。なお特筆に値することとして、1960、70年代、中国と南アジア、東南アジアのいくつかの国は女性議員比率に関して西側諸国よりもずっと進んでいた。…1990年代、西側諸国は、それ以前の国々と同様、フェミニズム的理想に取り組みはじめたが、実際の男女平等実現への誠実さと有効性の程度はさまざまだった(これについてはまた後述)。
p.566
プーチンは1980年代のゴルバチョフの平等主義的幻想と社会主義救済へのこだわり、とりわけ彼が「フランス社会党」好きだったこと(これは粗雑ながら重要な指摘だった。当時のフランス社会党は西側の政治状況の中で最も社会主義的だったからだ)をあざ笑った。プーチンは、あらゆる形の平等主義、社会主義をきっぱり放棄しないと偉大なロシアは復活できないと述べる。そのためには政治と経済の両面で、何よりも階層構造と垂直性が必要だと言う。
p.570
公共資産(たとえば、電気、水道といった公益事業や電気通信部門)の民営化、残る公有部門(特に教育と保健)への限定的な投資、公的債務の着実な増大によって、純公的資本の国民資本比は、すべての主要資本主義諸国で事実上ゼロ(5%未満)まで縮小した。英米ではマイナスだ。言い換えれば、英米では公債が公有資産の総価値を超えているということだ。
p.573
具体的には負の公的資産は、個人が金融資産を通じて、彼らがそれによって利益を得ているすべての公的資産や建物だけでなく、将来の税収を利用する権利も所有していることを意味する。言い換えれば、民間の個人が有形資産だけでなく、納税者(あるいは納税者の一部)も所有しているために、総私有財産が国民資本100%よりも多いということだ。純公的資産がどんどんマイナスになれば、税収のうちますます大きな割合が、負債の利払いにまわされてしまう(39)。
p.583
2018年秋に映画スターの范冰冰は逮捕された。国営テレビの人気キャスターが、范が秘密契約を交わして5000万元をもらっていたのに、公式発表された報酬はわずか1000万元だったと暴露したためだ。この事件は大きな注目を集め、政府はこれを行きすぎた格差と金銭崇拝と闘う覚悟を示す、理想的な機会と捉えた。この事件は確かに興味深いが、報道陣、市民、労働組合が権力乱用を調べる手段を禁止され、政府と密接なコネのある人々が積み上げた富に関心を持ちすぎた人を、誰でも警察が逮捕できる状況で、富と財産の系統的な登録と課税もないまま、人口13億の国の格差を、単純に公開糾弾と収監だけで抑えられるのか疑うのは当然だ。
p.589
そこまでではないが、ヨーロッパの社会民主主義国家の大半で見られる年金、健康保険制度は、社会保障基金と労働組合に大きな役割を与えた複雑な制度によって管理されている。このため、これらの制度は政権交代で引っくり返されることがなかった。
p.621
手短に言うと、統計機関、税当局、そして何より政治指導者たちは、金融ポートフォリオの国際化に対応できておらず、金融所有権の変化と分配を有効に記録するツールを持ちあわせていない。そういったツールの開発には技術的障害などない。それは純粋に政治的、イデオロギー的な選択だ。
p.622
逆説的ながら図13-8−13-9のここ30年間(1990-2020年)のデータは、全期間(1900-2020年)のデータより明らかに精度が低い。使用した情報源がかつてほど良質でなく、当局が富の国際化の監視に必要なツールを開発してこなかったことが一因だ。
p.628
簡潔に言うと、社会―経済格差、とりわけ富の格差を縮小するための超国家的なツールを手に入れないと、政治闘争は必然的に国民アイデンティティと国境の問題に集中してしまう。
p.631
この文書群は、特に2000‐2012年についてのものが中心で、ルクセンブルク政府が企業ごとに秘密合意(いわゆる「税の書き換え」)を交わすシステムを大規模に運用して、大企業が公式な税率(もともとルクセンブルクではかなり低い)よりも低い税率を享受できるようにしていたことが明らかになった。…
…いくつかのヨーロッパの新聞によるインタビューで、彼はルクセンブルクが1980年代に産業の空洞化によって大きな打撃を受け(ヨーロッパではどこでもそうだったが)、新たな発展戦略が必要だったのだと弁解した。
p.638
女性が同じような生き方をできるようにしてジェンダー格差の問題を解決するのは、必ずしも最良の選択ではない。研究によれば男女平等が最も進んでいる職業はスケジュールの個人裁量が高い職業だ(67)。
p.640
貧困国はそれまで関税で得ていた収入を、新しい税(所得税や財産税など)でまかなうために必要な時間も支援もなかった(74)。
p.641
関税は聴衆が最も容易な税で、発展の初期段階ではこれらに頼るのは自然なことだ。だが欧米諸国は関税を非常にゆっくりと自分たちのペースで下げ、同時に関税収入に代わる他の税を発展させて総税収を増やせた。
p.647
すべての経済主体がますます互いに借金しあい、金融部門全体の規模(資産と負債の合計)が実体経済よりも早く成長するような状況は永久に続かない。それは経済と社会の両方を非常に脆弱にしてしまう(81)。
p.652
なぜなら後年ハイエクは、アウグスト・ピノチェト将軍の1970、80年代の急進的な自由主義的軍事独裁の、積極的な支持者になったからだ(同時にイギリスのマーガレット・サッチャー政権も支持し、顧問も務めた)。
p.653
つまり税制は逆進的(トップ所得の税率のほうが、その他の全人口に対する税率よりも低い)でもいいが、絶対に累進的であってはならないと言っているのに等しかった(88)。
p.657
これこそがブルデューとパスロンが、フランスのシステムと対比させる対象として、人類学者マーガレット・ミードが研究したオマハ族における魔術師階級の再生産システムを選んだ理由だ。オマハ族ではどんな出自の青年にも、原則的には運を試す自由があるとされる。そして彼らは「孤独に引きこもって断食を行い、そこから戻ると自分たちの見た幻視を年配者に語るが、彼らの家族がエリートでない場合、その幻視は本物ではないと告げられるのだ(95)」。
p.683
逆に言えば、低い投票率は、社会的上層階級ではいつも高投票率、大衆階級ではいつも低投票率というような形での不平等と対比している(図14‐8)。…どんな基準を使っても大衆のほうが棄権率が高い。
p.686
 階級型の選挙対立は少なくとも一つの良い特徴を持っていた。それはあらゆる社会分類を同じ割合で多数動員したことだ(28)。…再分配をめぐる論争はほとんど放棄され、大衆階級は政治参加を大幅に減らした。
p.692
職業的平等という目標は家父長制と専業主婦イデオロギー(1950年代と1960年代には多くの女性が内面化していた)にとって代わったが、このフェミニストの要求は主に左派政党が支持していた(35)。
p.693
 これに対し、高学歴者の中で左派に投票を続けている(あるいは左派への投票傾向をもっと強めている)集団は、教師、公共部門の中間管理職、医療保健専門職、文化的職業従事者などだ。…職業教育水準と中東高等教育へのアクセスが高まり、サービス部門での雇用が空前の規模に拡大する、急激に変化する社会の中で生じたことだ。
p.730
 それ以上に、二項対立的な区分(進歩派/自国主義またはグローバル派/愛国者)が危険なのは、それが自国主義イデオロギーとその暴力的な進展が唯一の可能性であるかのように見せてしまうからだ。こうしたレトリック戦略の狙いはもちろん「進歩派」をいつまでも権力の座につけておくことだ。だが現実には、それは「ナショナリスト」の成功を後押ししかねない。特に彼らが社会自国主義イデオロギーを構築できるなら、その危険はなおさら高まる。
p.768
最も有名な例はジョン・メイナード・ケインズで、1925年の論説でなぜ労働党には絶対投票しないか、なぜ何が起ころうと自由党に投票し続けるかを述べている。まとめると、彼は労働党に大衆を指導するまともな知識人(おそらくは特に経済学者)がいないのを懸念していた。
p.774
この新しい仕組みは極度に脆弱で不安定だからだ。「バラモン左翼」は再分配支持派と市場支持派に分裂しているし、「商人右翼」もやはりナショナリズムや自国主義寄りの派閥と、主にビジネス重視、市場重視の方向性を維持したい派閥との間で分裂している。
p.782
この三つの次元のそれぞれで、恵まれない投票者は圧倒的に「離脱」に投票したが、恵まれた3割だけが強く「残留」を支持した(図15-18)。高学歴者は高資産高所得者よりEUに愛着を示した。
p.768
東欧はむしろ、二つの要素を極限まで組み合わせた実験室と見るべきだ。…それはまず、共産主義崩壊後の失望と反普遍主義という二つの強い感情が、暴力的なアイデンティティの引きこもりをもたらす状況、そして第二に、世界的(とりわけヨーロッパの)経済組織によって、協調的で非暴力的な効果的政策の実行が阻まれ、社会的再分配と格差低減が進まない状況だ。
p.821
もしある国の公債がGDPの100%で、金利が4%なら、利払いはGDPの4%になる。二次的赤字を0・5%以下にしようとすれば、プライマリーバランスの黒字はGDPの3・5%でなければならない。言い換えると、納税者は政府支出で受け取るより多くの税金を納めなければならないし、そのギャップはGDPの3・5%で、これが何十年も続きかねない。
p.822
それだけの金額があれば、イタリアは高等教育支出(現在はGDPの0・5%)を2倍、3倍に増やせる。…
…つまり債務国は自国の支出を自国の税収でまかなうよう求められるが、税収は支出をわずかに上回ればよく、過去の債務をすぐに返済することは要求されない。
p.823
つまり年に2000億ユーロ以上が利払いに使われている。これに対してエラスムス学生交換プログラムへの投資はたった20億ユーロだ。…もしそれだけの金額が教育と研究に向けられたら、ヨーロッパは米国を追い越してイノベーションの世界的先進地になれる。
p.824
 実務的には、私有財産への例外的な累進課税といった具体的な手法を通して、債務償却を加速するようEAが決めることもできる。こうした手法は第二次世界大戦末に有益な役割を果たし、1950年代に公的債務を急減させ、とりわけドイツと日本で、再建と成長のための公的投資の余地を作り出した(第10章参照)。
p.825
こうした経験に照らすと、低インフレ維持というECBの使命は維持して、とりわけ累進課税など、債務削減の他の確立した手法に専念するのがよさそうだ。
p.835
だがカタルーニャの場合と同じく、解決策は単純だ。EUレベルでの累進相続税だ。…
…多くの保守政党指導者にとって、ブレグジットの狙いはまさにイギリスをタックスヘイブンにして、規制の少ない金融センターにしようというものだ(1980年代以降に進んだポスト工業転換プロセス)。
p.866
「ポピュリズム」という概念は、公的議論でうんざりするほど使われているが、すべてをごちゃまぜにして、消化不能のごった煮にしてしまうのだ。
 この概念はあまりにしばしば、政治アクターが自分の気に食わないあらゆることを指し示し、それと一線を画するために使われる。反移民政党や、外国人をスティグマ化しようとする政党は、「ポピュリスト」と見なされるべきだと考えられている。だが、金持ちに高い税金を払うよう求める主張も「ポピュリスト」と呼ばれる。そして、公債を全額償還しない可能性に言及する政党は、まちがいなく「ポピュリスト」と呼ばれる。実際、この用語は、社会的に明らかに恵まれた階級のための最終兵器になっており、彼らの政治的選択や政策を批判するあらゆる資格を、前もって否定するために使われている。
p.867
反対派に「ポピュリスト」のレッテルを貼れば、議論も思索も終わらせられる。…

 「ポピュリズム」という用語は厳しく避けるべきだと私は思う。世界の複雑さの理解にまったく役立たず、とりわけ、政治闘争の多元的性質を無視しており、境界と財産の問題における立ち位置は大きく異なりうるという事実を考慮していないからだ。むしろ、政治対立のさまざまな次元を慎重に区別し、提示されている政治的、制度的な対応について、慎重かつ厳密に分析すべきだ。…公的債務をめぐる議論は、とりわけユーロ圏において、この概念が使われたことで、まちがいなく最悪なものとなった。政治家、デモ参加者、市民など誰でも、国の債務が全額即時償還されない可能性に言及しようものなら、すぐさま見識ある評論家のやり玉にあがった。…
…GDP200%超の公的債務は1945‐1950年にはほとんどの西側諸国、とりわけドイツ、日本、フランスやヨーロッパ諸国で見られたが、それは民間資本への例外的課税、完全な債務免除、長期の債務延期、インフレの組み合わせによって、ほんの数年で消えた。
p.868
ヨーロッパが1950年代に再建されたのは過去の債務を帳消しにしたからだ。おかげで若い世代に注力して未来に投資できるようになった。…たしかに、イタリアの同盟と五つ星運動や、債務免除についての国民投票を求めた「黄色いベスト運動」の指導者は、問題の複雑さも、単純なイエスかノーかで決着できる問題ではないことも十分に理解していない。
p.872
これほど複雑な問題に、完全に満足のいく説得的な答えや、機械的に適用するだけですむ解決策があるかのように装うのは、ばかげている。…格差レジームの歴史すべてから見て、歴史的な変化を可能にするのは何よりも社会的、政治的動員と具体的な実験だ。歴史は危機の産物であり、書物に予想として書き込まれたものではない。
p.873
公正な社会は、その全メンバーにできるかぎり多種多様な基本財へのアクセスを可能にする。基本財とは教育、保健、投票権、もっと一般的には、さまざまな社会的、文化的、経済的、市民的、政治的生活へのできるかぎり完全な参加だ。公正な社会は社会―経済関係、財産関係、所得と資産の分配を調整し、その目的は、最も恵まれないメンバーが、できるかぎり高い生存条件を享受することだ。公正な社会は完全な均一性や平等性を前提にしない。所得と資産の格差があっても、それが願望や生活選択のちがいの結果であり、恵まれない人々の生活条件を改善し、機会を拡大するのであれば、公正と見なされる。しかし、これは単なる想定ではダメで、実証されなければならないし、またこの議論はしばしば行われているように、どれほどの水準でもおかまいなしに正当化するようではいけない。
p.877
まず、企業内部でもっと徹底した権限共有を行うことで、資本の真の社会所有を確立する。第二に巨額財産に対して累進性の高い課税を行うことで、資本の一次所有という原則を確立し、累進税を財源としてユニバーサル資本支給を行い、さらに財産の永続的な循環を促進する。
p.878
まず、累進課税、資本支給、財産循環(これらは後で説明する)によって所有の分散が進めば、労働者は自社株を買って、すでに持っている半分の議決権を補うことで、多数派を形成できる。次に、投資資本と議決権を結びつけるルール事態も再考されるべきだ。
p.884
ここで示した通り、年次資産税と相続税をあわせて国民所得の5%ほどが得られる(このうちの4%は年次資産税から、1%は相続税から)。そのすべては資本支給の財源に使われる。累進所得税には社会保障税と累進炭素税も含むが、国民所得の45%ほどの税収となり、それでベーシックインカムと、何よりも福祉国家を含む他の公共支出すべて(保健、教育、年金など)がまかなわれる(15)。…
…ここに挙げた数字はすべて、あくまで例示だ。
p.886
もっと最近ではアンソニー・アトキンソンが累進相続税の税収を使い、すべての若い成人に資本支給を行う提案をしている(21)。



投資の神様・バフェットも目をつけた「21世紀の商社」のパワーとは?
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=141&from=diary&id=7420000

あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「21世紀の商社」について。

*  *  *

「マンガかよ」。就職活動を控えた大学生のころ、いわゆる青田買いの一環で、商社勤務のOBらとの食事会があった。私もまわりも慣れないスーツで大阪・梅田の堂島に向かった。

先輩は「社内の女性と遊んでも、そのうち海外勤務になるので自然と縁が切れて都合がいい」と教えてくれ、帰り際には道路に飛び込み、体を張ってタクシーを停(と)めていた。「さあ二次会に行こう」。その姿はまるでマンガか冗談のように感じた。このモーレツな仕事で高給なのは当然でも、私には無理だと思った。

しかし印象的だったのは、誰かが「商社冬の時代といわれるが」と先輩に訊(き)いたところ、「そんなの数十年前からいわれてるよ」と呆(あき)れて答えた場面だ。そう、日本特有といわれる総合商社は、時代遅れといわれ続けながらも、ずっと輝いている。社員も高給のままだ。

先日、大手商社の2023年3月期決算が相次いで発表された。それぞれ最終的な当期利益は、三菱商事1兆1807億円、三井物産1兆1306億円、伊藤忠商事8005億円、住友商事5652億円、丸紅5430億円。三菱商事、三井物産は初めて1兆円を超え過去最高になった。

また有名ヘッジファンドを運営するウォーレン・バフェット氏が2020年ごろから日本の五大商社の株式を取得していることから、氏の先見の明を称賛する報道ともセットになった。

利益トップだった三菱商事は、その理由にエネルギー関連事業の貢献を挙げ、オーストラリアの原料炭事業や欧州のエネルギー事業の好調さを喧伝(けんでん)している。さらに重要な投資案件として炭鉱開発、銅資源、シェールガス開発を紹介している。

三井物産もやはりエネルギーセグメントを好調の理由としている。もちろん各社の違いはあるが、私たちが古臭いイメージとして持っている「国内顧客へ御用聞きをして海外から商品を輸入する」ような商社像は、もはや現実とはそぐわない。

現在の商社は、エネルギー事業などに多額の投資をしたり、海外企業の経営に参画したりしてインカムゲイン(配当による利益)やキャピタルゲイン(資産価値の上昇による売却利益)を狙うモデルだ。

名前は「商社」(=海外貿易や国内取引媒介業)となっているが、実際には商売自体の利益よりも投資先からの配当金が利益の多くを占めており、「売買など商売もやっている投資銀行」に近い。

そして、投資先が着実な利益を上げるように徹底した管理をしている。満足できなければすぐに投資分を売却か清算する。

経済学者のトマ・ピケティは資本収益率が高い世界の実像を証明し、労働よりも資産運用による富の増殖を指摘した。

商社はまさに、商社マン・ウーマンに世界を徘徊(はいかい)させつつも、そこで人的労働をするのではなく、見つけた投資先への出資で利益を上げるモデルとなっている。『21世紀の資本』ならぬ「21世紀の商社」。

ところで現在、防衛予算の倍増が話題になっている。日本にそんな金ねえよ、と。

ただ、トヨタ級の企業が何社かあれば法人税で賄えると発想したらどうか。海外に投資してそのリターンで儲ける、日本の商社はその未来像では? 高給で女遊びが激しくても防衛費を賄ってくれるならいい。でもタクシーに轢(ひ)かれぬよう気をつけろよ。

●坂口孝則(Takanori SAKAGUCHI) 
調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。『営業と詐欺のあいだ』など著書多数。最新刊『調達・購買の教科書 第2版』(日刊工業新聞社)が発売中!

写真/時事通信社


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