『毒になる親』リア王、秀吉。リア王は子を差別してもいた、子らの兄弟仲が悪いのも「毒親」。兄弟を比較して、ひとりだけ叱ることで、「親の要求に十分応えていないことを思い知らせようとする」（スーザン・フォワード、玉置悟訳『毒になる親』）。「こういう親の行動は、意識的であれ無意識的であれ、本来なら健康的で正常な兄弟間の競争心を醜い争いへと変えてしまい、兄弟間に嫌悪感や嫉妬心を生じさせてしまう」『毒になる親』
毒親は、子らを分断することで、自分のコントロール下に置こうとする。そうまでして味方がほしい。毒親、さびしい。
『リア王』は、リア王という毒親に育てられた三姉妹の悲劇。王と三女だけでなく、気まぐれで激しい性格の父に差別され、三女と戦争する羽目になった長女や次女も被害者。だから、財産だけもらって、さようなら。
成り上がりの代名詞ともなった太閤・豊臣秀吉の兄弟殺し。
秀吉と同時代に生きた竹中半兵衛の子・竹中重門の『豊鑑』（1631年）によれば、秀吉は父母の名も定かに分からぬ貧民の生まれ。
秀吉の母の結婚歴も「三度以上」（服部英雄『河原ノ者・非人・秀吉』）あったため、秀吉には異父兄弟がおり、ポルトガル人宣教師のフロイスによれば、秀吉の出世後、彼の「実の兄弟と自称」する若者が「二、三十名の身分の高い武士を従えて大坂の政庁に現われるという出来事があった」（『フロイス 日本史』）。
都に呼び寄せ、斬首。フロイスは「彼は己れの血統が賤しいことを打ち消そうとし」（同）たと分析。渡邊大門によれば、
「秀吉が認める兄弟姉妹とは秀長ら三人だけ」（渡邊大門『秀吉の出自と出世伝説』）
つまり、秀吉の右腕となった秀長、秀吉の養子となって関白となった秀次の母・日秀、徳川家康に嫁がされた朝日姫の3人。
現在、秀吉の父として知られているのは弥右衛門と筑阿弥という人物。このうち弥右衛門が秀吉の実父とされ、筑阿弥のほうは母の再婚相手とされますが、彼は病に冒されており、小和田哲男は、「生活がぎりぎりという状況では、なにか些細なことでも衝突の原因となり、秀吉はしょっちゅう継父筑阿弥に折檻される状態だったことが予想される」（『豊臣秀吉』）
一般的には秀吉は母思いと言われており、母の訃報を聞くと、「気絶してしまった」（“たえ入給ひてけり”）（『太閤記』）。
が、母への愛と憎しみは必ずしも矛盾するものではありません。タネ違いの若者を、母にわざわざ子であるか問うた上、即座に処刑してしまうというようなことは、秀吉の母への思いが愛憎相半ばするものであればこそ。秀吉が兄弟姉妹と認める3人にしても、妹の朝日姫は44歳で夫と離縁させられ、家康に輿入れさせられているし、姉・日秀は、子の秀次を、その妻子に至るまで処刑。
甥・秀次は切腹、妻子はことごとく処刑
秀次は、実の叔父である秀吉に家督を譲られ、関白になりますが、秀吉の側室となった浅井茶々（淀殿）が秀頼を生むと、謀叛の疑いによって切腹させられました。しかも秀次の首と妻子は「手厚く葬られることなく、そのまま三条河原に埋められ」、その埋葬場所は「畜生塚」（渡邊氏前掲書）と呼ばれた。フロイスによれば「万人から愛される性格の持主」（『フロイス日本史』）、「弱年ながら深く道理と分別をわきまえた人で、謙虚であり、短慮性急でなく、物事に慎重で思慮深かった」（同前）ともいい、いずれにしても、妻子に至るまでまともに埋葬もされぬとは尋常ではありません。
我が子や孫たちを殺されたあげく、夫も連座して流罪になった秀吉の姉・日秀は、翌年、出家しています。
極端な没落や成り上がりといった階級移動が、時に家族殺人に至る。
【浅井茶々、淀殿だけが子を産む】ポルトガル人宣教師フロイスによれば、秀吉は「重立った貴人たちの大勢の娘たちを養女として召し上げ、彼女らが十二歳になると己れの情婦」（フロイス『日本史』）。つまりは12歳の養女たちを大勢犯していた。大�爐劼�り『毒親の日本史』（新潮新書）
秀吉の、「色事の取持ち役を務めたのは徳運（施薬院全宗）と称する、すでに七十歳に近い老人で、当初は比叡山の仏僧であり、（現今）我らの大敵であります」とフロイス。
秀吉は6本指だったという指摘（フロイス『日本史』）など、かつては荒唐無稽とされていたものが、別の資料により事実と分かるなど（渡邊大門）、実際に秀吉に接した外国人の証言として重視されている。
フロイス『日本史』には、秀吉がキリスト教会関係者に、海外に奴隷として連行された日本人を日本に連れ戻すよう計らってくれと訴え、そのための対価も支払うと言ったことも記されており、必ずしも悪いエピソードばかりを伝えていたわけではありません。
フロイスの記事はかなり正確で、養女を情婦としたという指摘も、現実を反映していた可能性があります。
https://president.jp/articles/-/49979
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