mixiユーザー(id:20452152)

2023年10月14日03:30

15 view

複製画の展覧会,とても興味深いですね(⁎˃ᴗ˂⁎)

 とても興味深い展覧会ですね。絶対観に行きます(⁎˃ᴗ˂⁎)

 僕は以前から,美術作品の複製ということに強い興味を持ち「積極的に進めていくべきである」と考えておりました。僕は美術に限らず芸術作品とは「人智を超えた永遠の世界に属し,我々凡人には観ることも聴くことも出来ぬ『美』というものを,芸術家たちがその特別な才能と卓越した技術とでこの世に再現してくれたもの」であると考えておりますが,芸術作品が表象する美自体は永遠の世界に属するものであっても,実際の作品を構成しているのが現世の物質である以上は損傷や消滅を免れることは出来ません。そうした人間社会における大きな損失を防ぐため,音楽作品を楽譜に書き留め演奏を録音するのと同様に,美術作品についても再現可能な形でデータ化し必要に応じて原作と寸分違わぬ複製を制作出来るように備えることが望ましいのではないか。これが僕のもともとの問題意識です。ここまではこれをお読みの皆様にも概ね同意して頂けるお話だろうと考えています。

 但し,僕はそのような複製を単なるバックアップにするのみならず,鑑賞にも供すべきであるということも考えています。もともと幾つかの複製が可能な版画や彫刻といった例外を除き,美術作品というのは通常は世界に一つしか存在しません。それゆえ,たとえば僕がレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を鑑賞したいと思えばパリのルーヴル美術館を訪問するしか無い。しかし仮に原作と寸分違わぬ精巧な複製を制作することが叶うならば,我々は何も遠路パリまで出掛けずとも身近な場所で同作品を鑑賞することが可能になります。これはたとえば過去の作品を鑑賞することによって研鑽を行う美術家たちにとっても,また僻地に住んでいて美術作品に触れる機会をなかなか持てない人々にとっても,非常に大きな利益となることでしょう。
 このようなことを申し上げると「そもそも複製を見たからといってそれが美術鑑賞だと言えるのか」といった疑問をお感じになる方も多いであろうことは,容易に想像のつくところです。この点については僕は以前にも申し上げましたね。たとえば画集や展覧会の広告に掲示されている作品写真を観ただけでも僕たちは「これは良い作品だ」などと感じるし,美術好きの人々は複製画を購入して自室などに飾って目を喜ばせたりしている。これらは複製された作品によって心を動かされていることであり,心が動く以上は複製を鑑賞することもまた紛れも無く美術鑑賞であると。
 とはいえ「複製を観ることも美術鑑賞である」としても,原作に対するのと同じような感動を味わうにはその複製もまた原作に酷似していることが望ましいのは言うまでもないでしょう。原作と大きく異なっている複製を観て感動を覚えたとしても,それは別作品に対して覚える感動です。極端な事例を挙げれば「モナ・リザの複製だよ」と言われてヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」の複製を提示されたら,たとえそこで感動したにしてもそれは「モナ・リザ」に対する感動ではないでしょう。複製は色であれ凹凸であれ,原作と区別がつかぬほどそっくりでなければならない。もともとその特質上ある程度の複製が可能であった版画や彫刻を別にすると,写真・印刷技術の著しく発達した21世紀の現代においても,そのような複製を制作することはなかなか困難であろうことは論を俟ちません。

 そんなことを思っていたところ,東京・港区のキヤノンギャラリーSで2023(令和5)年10月11日から11月16日まで開催中の「キヤノンギャラリー50周年特別企画展 綴プロジェクト作品展 『高精細複製品で綴る日本の美』」という実に興味深い展覧会が開催中であることを知りました。こちらは最新デジタル技術と京都の伝統工芸士の技との併用で複製した8つの作品を展示するもので,その中には俵屋宗達の「風神雷神図屏風」も含まれているというのです。
 これは興味津々です。というのは,僕は自らの拙い経験の中で「近年の日本画を含め,日本の伝統的技法で描かれた絵画は最も複製困難であろう」と考えていたからです。日本の伝統的な絵画では金箔や金泥という,西洋画ではあまり用いられない素材が積極的に使用されますね。絵画について「データ化した作品を複製する」という際には当然ながら印刷技術が用いられますが,金箔や金泥を原作同様に印刷するのは極めて困難なことではないかと思われます。また日本の伝統的な絵画の着色には岩絵具が用いられますが,油絵具やアクリル絵具・水彩絵具と異なりこの岩絵具というのは写真に撮影すると肉眼で見た時と全く違う色になってしまうことが稀ではありません。これはあながちに僕の写真技術が稚拙だからというだけではないようで,以前に東京藝術大学の日本画専攻の学生さんたちからも直接に同様の悩みを伺いました。
 こちらの記事によると,まずは最新のデジタルカメラと制御システムで歪みを補正した写真を撮影した後,色の違いについても「独自開発の最新技術」で補正を行うのだとか。具体的にそれがどんなものなのかは,無論厳重な企業秘密なのでしょう。そうして作成したデータを12色の顔料インク…通常のプリンターは4色ですよね…を使う特別なプリンターで専用の和紙に出力し,そこからは伝統工芸士の手作業で金箔や金泥を用いて着色していくのだということです。なるほど,最新の機械と伝統的な手作業との併用で複製を制作するのですねφ(・_・”)

 そこまで特別な機会と熟練の職人技とで制作された複製画,具体的にはどのようなものになるのでしょうか。僕は「これならば,或いは現物と寸分違わぬ複製が完成するのではないか」と期待してしまいます。そしてそれを鑑賞した際の感動もまた原作を観た時と全く同じではないのかとも。
 とはいえ,実際に観ないことには何とも言えません。まずはキヤノンギャラリーSにお邪魔して,それが一体どのようなものなのかを自分なりに確かめ,そしてどれほど感動するかも自分なりに味わってみたい。僕はそのように思っているところです。



【入場無料】キヤノンの最新デジタル技術と京都の伝統工芸士の技で再現された文化財。「高精細複製品」で体感する日本の美
https://serai.jp/pr/1154326
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年10月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031