これは、「人生タクシー」のジャファル・パナヒ監督がプロデューサーを務め、長男のパナー・パナヒが長編デビューを果たしたロードムービー。
イランの大地を車で旅している4人家族と1匹の犬。幼い次男は旅に大はしゃぎし、足にギプスをつけた父は悪態をつきながらもその相手をしている。助手席の母はカーステレオから流れる昔の歌謡曲に体を揺らし、成人したての長男は無言で前を見据えてハンドルを握っている。
この一家の旅には、ある目的があった……。
これは、監督の家族や友人に起きた出来事から触発された物語だと言う。
ただ、一家の旅の目的である、長男が密かに国外脱出する、その「理由」を言うに言えない理由があって、それが物語を判り難くしていると思う――勿論、イラン国内での事を考えたら判りやすくては困ってしまうのだが。
これ、長男は同性愛者なのだろう。だからああするしかない、と思った。
イランでは、同性愛者は違法、最悪は死刑……と言うより、前大統領は「イラン国内には同性愛は存在しない」と言っていたので、見つけ次第死刑、と言う事となるのだろうか。
ちなみに、日本政府はイラン政府の公式見解である「イランには同性愛者差別はない(見つけ次第殺すので)」を言葉通りに受け止めているので、イランからの「同性愛者迫害」を理由とした難民は全て強制送還していると言う。送還された難民の運命については言わずもながではあるが。
「君は行く先を知らない」と言うタイトルに込められた意味は、同性愛者の人権も、女性の社会進出も、”多様性の許容”の下に認められる、そんな”知らない”世界が国境線の向こうにはあるのだ、と言うだろうか。
そうした、想いを言うに言えない状況から生まれた映画だからこそ、こうなった、と言うのは判るのだが……結果として、訴えかけるテーマが曖昧で、内容としても散漫な、残念な映画となってしまったように思う。
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