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2023年05月09日11:17

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母とワラビのこと

 季節柄、スーパーなんかでも“わらび”をよく見る。僕は、亡くなった母親を思い出す。彼女はワラビが好きで、特に味噌汁をよく作ってくれた。
 たぶん50年以上は前だろう。呼子に家があったころ、その頃は一階にタイル張りの小さな風呂があった。小学校の低学年ごろ僕は母親と一緒に風呂を焚いた。うちは船具店を経営してて、いろんな商品を梱包する板材がでて、それを窯にくべてた。
 ワラビとの関係をいえば、燃やした板切れからは“灰”がでる。ワラビはアク抜きが面倒な野菜で、母がワラビのアク抜きに、風呂焚きのかまどから出た灰を使ってたのを朧気に思い出す。
 また、ワラビの味噌汁と書いたけど正確にはかす汁だった。母は酒造業である実家から酒粕をもらってきてワラビの汁をよく作ってくれた。昔の人はこんな簡単なみそ汁にえらい手間をかけてた。また、季節のものとして大事に味わっていた。
 酒造りをやってる実家はいわゆる旧家の大きなうちで、蔵で働く人が大勢いた。僕は何人もいる孫の一人に過ぎなかったが、よく遊びに行ってた。
 ワラビの季節。実家には多くのおねーさんのような人が働いていた。町の山のほうの神社の脇あたりがワラビが出る山だった。おねーさんたちと母親兄弟と連れ立って大勢でワラビ取りをしたことを覚えてる。
 太くてやわらかいワラビが味もよい。僕も夢中になって茂みを探した。カナヘビを見たのを覚えている。
 でも今や浮世離れした光景だったな、と思う。50年以上も前。書いてきて分かった。母が実家に帰りワラビ取りをして、それをお土産に持ち帰ったんだな。酒粕につけた奈良漬ももらって帰ったと思う。のんびりしてた。

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