mixiユーザー(id:20452152)

2023年04月09日12:27

29 view

逆転の発想に,大きな驚きを覚えました…「雪下畑の仲間たち」のお話

 こういうことが可能なのですね。大変な驚きを感じると同時に,新たな学びと啓発の切っ掛けとを得たことを嬉しく思っています。

 農業には「農繁期と農閑期とがある」という特徴があります。このためたとえば多くの稲作農家にとってゴールデンウィークは休日どころか田植えで極めて忙しい時期ですが,その一方で稲刈りが終わってしまった後にはすることが殆どありません。稲作だけでも充分な稼ぎを得られる農家は勿論ありますし,また兼業農家などであればそれほど問題はありませんが,あまり大規模ではない専業農家だと年に1度しか現金収入が入らぬこともあり,このことに不安や不満を覚える方も少なくありません。
 このような問題を解決する方策の一つが,裏作です。水田はあるのですから,稲刈りから田植えまでの間に水を落としてそこで野菜などを作れば良い,というのは誰でも思い付くことでしょう。とはいえこれが容易ではない地域も少なくありません。たとえば僕の長年住んでいた利根川沿いの水田の多くはもともと沼だったところを開拓したもので,こういう場所には「水を落とそうにも完全には落ちない」という水田も少なくありません。そこでこういう地域では,圃場整備(水田が多い場合)や畑地帯総合整備(畑が多い場合)といった土地改良事業を行い,農地の区画を拡大・整理して機械化に対応し易くすると同時に用排水施設(特に排水路)をも整備して水はけを良くすることが積極的に行われています。地域によっては利根川の水位の関係でそのままでは排水出来ない場合もあり,そうした地域では排水路の末端に巨大な排水機場を設けてポンプで水を汲み出して利根川に水を落としています。こうした事業によって元は水田にしか使えなかった農地も水捌けが良くなって稲刈り後には畑として活用することが可能になり,実際に葱や白菜・キャベツなどの野菜が大量に生産されるようになりました。なお,元々水捌けの良い土地も勿論ありますが,そういう地域にとっても土地改良事業は極めて有益です。先に申したように農地の区画を拡大・整理して用排水を安定化させることで,やはり機械化を含む効率的な営農の実施が可能になるからです。
 余談ながら僕も若い頃,そうした事業に少しだけ関わったことがあります。正直に申し上げると非常に多忙で困難な業務でしたが「自分たちが頑張れば農業生産が上がり,農家にも喜ばれる」ということを自らに言い聞かせ仕事に励んだのを覚えています。今では随分と昔のことになりましたが,僕の青春時代の懐かしい思い出です。

 しかし今回,そのようなことが可能なのは利根川沿いが関東地方だからで,それが不可能な場所もあるということに改めて気付かされました。たとえば新潟県。越後平野にも信濃川という大河が流れていて,あまり水捌けの良くない農地が多いのは利根川沿いと変わりません。そもそも「新潟」という地名を見ても湿地の多い地域であることが伺えますね。しかし,新潟で利根川沿いと同じことを行っても上手くはいかないでしょう。関東平野では滅多に雪が降りませんが,新潟というのは大変な雪国ですから冬の農業は困難です。僕ならば「これは対応出来ない」と諦めてしまうところに違いありません。
 そんな難問の解決法は,昔ながらの農家の知恵にありました。最近は農業地域に農作物の直売所が幾つも設けられるようになっています。これは新鮮な農産物を入手したい消費者と,集荷した農産物を迅速かつ「新鮮」という付加価値付きで現金化出来る農家の双方に歓迎されていますが,それが上手く行くのも季節ごとの収穫あっての話です。そもそも出荷出来るものが無ければ農家にとっても役に立たないし,品揃えが悪いのでは直売所にとっても信用問題になりかねません。
 そんな農産物直売所「旬菜交流館あるるん畑」(上越市。JAえちご上越経営)に冬の或る日,1人の生産者が「出荷できるものがないから、雪の下から掘ってきた」とキャベツを持ち込んできたのが始まりでした。雪を野菜の保存に使うというのはいかにも雪国らしい叡智ですね。特に農家は「降雪前に大根や白菜・キャベツなどを育てておいて敢えて収穫せずに雪の下に埋もれさせておき,必要な時に取り出す」ということを昔から行っていたそうです。それを出荷したというのは苦肉の策だったのでしょうが,何とこのキャベツが「甘くて美味しい」と消費者の好評を博してしまいます。野菜は雪で冷蔵しておくと自らが凍らないように澱粉を糖化させるので,これによって甘味を増し以前よりも美味しくなっていたのでした。雪で保存した野菜には「雪下野菜」(収穫せずに雪に埋もれさせておく)と「雪室野菜」(収穫して雪とともに倉庫に入れて貯蔵する)の2種類があり,同JAではこれらを「雪下畑の仲間たち」という名前でブランド化して販売を開始したところ,保存によって見た目はむしろ悪くなるにも拘らず通常の野菜よりも1〜2割高い値段で順調に売れているということです。現在ではキャベツのみならず大根・人参・白菜・長葱・ブロッコリーなどとラインナップも充実しつつあるようです。

 この記事にもありますが,これは本当に逆転の発想ですね。普通に考えれば雪は農業の邪魔ものですが,その雪を活用して野菜の品質を高め付加価値をつけて販売するというのは。成功の鍵というのは意外な場所に存在するのだということを改めて学びました。
 僕も色々なことを学び,そして常に柔軟な発想を持って日々を過ごして行きたいと改めて感じているところです。



「畑が雪で覆われて野菜が育たない…」→「野菜が地元の名産に!」雪国のJAがブランド野菜を生んだ「逆転の発想」
https://bunshun.jp/articles/-/61362
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年04月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30